ホラー短編集

ショー・ケン

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若返る少女

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 警察はある家を見張っていた。家には女性だけ、少女、母、祖母の3人。複雑怪奇な事件を調査しつづけた地元警察は、ようやく少女の犯行を発見したのだ。初め警察は、おかしいとは思わなかった。十代の少女に出せる力ではないと、だが少女は、隣人の老いた爺さんを絞め殺し、その証拠を粉々にして土にうめた。材木を利用してつくった装置で腕力を補ったのだ。

 警察は少女を逮捕した。それ以前に母にめぼしをつけていたが、あるベテラン警官がいったのだ。
「魔女は、人が望まないものを欲しがるのだ、わざわざ、母親に化けることがあろうか?少女が、何か魔術を利用したのだろう」

 地元警察はずっと“魔女”の事を捜査していた。この地域に古くから語り継がれる“魔女”の伝説は、魔女は人を殺し、生き血をすすり長生きするというものだった。むろん、そんなことを疑えば、冤罪が生まれてしまう。だから、不可解な人間や事件を見張っていたのだ。人々もまたそうだった。魔女は確かにいると信じていた。ばかばかしいと思いながら。

 この少女の家庭の不可解さはひとつだった。以前少女を虐待していたその母は、少女と引き離され、次に新しい養子をとった。その養子をとってからというもの、虐待の様子は一切みられなかった。
 それどころか母は少女に何でも買い与え、様々な習い事にもいかせ、少女は近所で評判の子供となった。

 だがおかしいのは少女の姿だ。2年3年もすれば変わるだろう少女の姿は、ここ5年ほど全くかわらなかった。少女も警察もそれを疑っていた。そこへきてこの事件だった。
 
 世間の人はうわさした。
「養子にとった人が魔女だったなんて、かわいそうねえ」
「でも、暴力的な人だったんだもの、むしろ魔女に操られて更生してよかったんじゃない?」


 パトカーが自宅に集まり、少女が警察につれていかれるころ、その家の老婆はほくそ笑んでいった。いつもは短い鼻を鷲鼻にして、秘密の杖をてにしながら。
「フフフ、まさか、こんな簡単にひっかかるとはねえ、証拠を残さずに人を操るというのは簡単だ、物理的に隣人を殺したのは母だというのに、ただ、指紋のある証拠を少女に回収させただけさ」
 安楽椅子にもたれかかり、ギィギィとゆらす。
「養子なんて、よくあることだというのに、それに、世間の偏見はひどいものだ、魔女というのは、人の命をいただいて楽をして、楽しく若さをたもつものだと、だからずるいと、殺人なんて気にしちゃいない、自分の命じゃなきゃ、けど違うねえ、私は若さを犠牲にして、命をとったのだ、今回だってそうさ、誰もが魔女は自分より若く、楽しい日々を続けていると思うから嫉妬している、その嫉妬心を利用すれば、ずっと長く生きられるのさ、私は、美貌を放りだしても、長くいきたいのさ、どんな優れたものでも、何かを我慢しなきゃ、それをずっと続けるのは難しいのさ」
 そして魔女は、傍に倒れている母親の生き血をグラスにうつし、すすった。

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