SF短編集

ショー・ケン

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謙虚なる人々

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「素敵……」
 Aは、宇宙旅行中に、遭難していまったが、偶然その惑星の宇宙人に救助された。
(あれからどれだけたったのだろう)
 宇宙遊覧船の乗組員として、職場恋愛の末に結婚。幸せな家族生活があったはずだった。けれど夫は、2年とたたないうちに離婚した。それも、自分が言おうとした言葉を一音一句たがわず彼がいったのだ。

 どうして、気が合いすぎるからだろうか。だから彼はあんなに豹変したのだろうか。仕事でかなり苦労して、それでも待遇や地位があがらない。彼はそのうちにきっと豹変したのだろう。そう思うようにした。

 その惑星バルタでの生活はとてもよいものだった。明らかに異質な存在である自分を受けいれ、気のすむまでここにいていいという。動植物とともに生き、不必要な殺生もしない。得にAの心にしみたのは、彼らがとても謙虚な心と文化をもっていたからだ。まさに日本人的な……。

 彼もそうだった。だが日に日に彼は変わっていった。何が不満なのかわからないが、いつもイライラしていたし、だから彼女はコールドスリープで宇宙を遊覧していた。今が宇宙歴何年であるかなんて、気にしたくはなかった。このおおらかな心優しい人々の世界で生きていこう。そう思った。

 だがあるとき、彼女は結婚の申し出をされた。村人たちが見ている中で堂々と、それは、彼女をたすけてくれた宇宙飛行士だった。だが、彼女は初めてこの惑星の人々に嫌悪感を抱いた。なぜなら、断りづらい状況で、大勢の前で告白だなんて。彼女は、なくなく受け入れるしかなかった。彼女はずっとここにいたかったから。 

 結婚をした後、彼はとてもいい人だった。だが、何か違和感があった。あの日の告白の強引さ故か?いいや、そうじゃない、日常の不満はあれからあと、日々の暮らしに潜んでいた。それは蛇のように鎌首をもたげ、今か今かと自分を食らおうとしている。なんだか、元夫の気持ちがわかる気がした。

 あるとき、その不満にきづいた。
「一緒にねよう」
「ああ、君が望むなら」
 そうだ、この人は、一度も自分から何かをしたいといったことはない。少なくとも結婚生活は順調で、この人に引かれ始めているというのに、相手は常に無表情で、何を考えているかわからないのだ。
「どうして、あなたは自分がないの!?」
 つい、どなってしまった。それまでにも夜遊びや、夫の友人と不倫のふりをしたり、家にかえらなかったりした、それは、以前の夫がやっていたことだ、まるで他人に同じ復讐をしている、自分の中に邪悪なものをみた。謝ろうとすると、夫はいった。
「すまない……これは暗黙の了解なんだ、この惑星では自分より他人を優先することを美学としていて、皆それを尊敬している、君が、もしそれが気に食わないのなら、君とは一緒にいられない、いや、僕はいい、そうじゃなくて君のため、君が思うように……」
「そうか……」
 ようやくAは理解した。謙虚すぎるということは自分がないということ、そうすると、他人はどうすればいいかわからなくなるのだ。彼が豹変した理由は、自分の気持ちをもってほしかったのだということ、不倫も、家に帰らないのも、すべて演技だったのだということを。
「ごめんなさい、ごめんなさい……」
 彼女は泣き崩れた、そんな彼女によりそって、夫はいった。
「すまない、あの時強引に告白したことを引きづっているのだろう?僕もああすべきではなかったと思っている、僕の耳はとがっていて、体色は青色だ、そして、あるまじきものだと思っている、謙虚な人々が自分の主張を強く思うなんて、だが君は、あの時期とても悲しそうだった、夫の写真をみてないていた、だから僕はおもったんだ“結婚したいんじゃないかって”」
 Aは余計になきだした。だが夫をだきしめて、いった。
「いいえ、あなたは鏡よ、私に間違いを教えてくれた、がんばるから、あなたたちの文化を尊重するから、私を捨てないで」
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