碧眼のマリオネット

ショー・ケン

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1章

ヴァルシュヴァル卿の狂気

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 一方こちらも、調子がわるそうに夜道を探索をするクラン。

「ふう、ふう」

 とため息をはく。

《ズン……》

 と上空から飛び降りてくるものの音。振り返るとコートをきたヴァルシュヴァル卿。 

「いたか」

「いえ……」

「ふん……これだから実験体は」

「……あなただって……“まじり者”のくせに」

「何かいったか……」

「いいえ」



 ふと、ヴァルシュヴァル卿と離れた先で、クランは小さな人影をみた、しかし奇妙な人影でオートマタの様に動いている。

「プラ……グ?」

 いざなわれるままにいくと、そこは古びた、廃墟の教会にたどり着いた。



「ここは?」

 

 月明りに照らられて神秘的な様子さえあるその教会。その屋上に、青の夜鳥が霧に包まれ、佇んでいた。神々しくさえ感じられるその景色に言葉を失う。



「あなたは……どうして、ヴァルシュヴァル卿に見逃されたのだ、きっとあなたは、ヴァルシュヴァル卿に気に入られる何かをもっていたはずなのだ、なのにどうして、人殺しなど……」



「あなたには、わからない、きっと、クローンであるプラグも私たちと同じ苦しい人生を送るのでしょう、私たちは子供を産むはずだった、けれど、産み落とされたのは、クローンだった、あいつは、ヴァルシュヴァル卿は、アルシュヴェルド人を恨んでいる、けれど彼自身が、その狂気にとりつかれている」

「彼の憎悪は取り除けません、彼が死ぬまでは……」

「……」

 物言わず見下ろす青の夜鳥、ふと、とびおりると、何かを思い出したように、クランはいった。

「そうだ、でもたったひとつだけ彼の気を惑わす言葉をしっています、それで、あなたのうちどちらか一人は生き延びる事ができるかもしれない」

「……?あなたは何かしっているの」

「ええ、ヴァルシュヴァル卿の秘密を、彼は“混じり物”なのです」

「どういうこと」

 クランは、地面に腰を下ろした。敵前で、もはや何かを悟り諦めたかの様な行動だった。

「ヴァルシュヴァル卿は……以前は、確かに狂気につつまれていたものの、ここまでサディスティックではなかった、彼が実験にはまっていたのは確かですが……、その狂気も、彼の経験からうなずけるものでもあった、つまりほとんどが、ヴァルシュヴァル人に向けられていたから、それがある日、彼のひそかに愛する人にむいた」

「誰?」

「ヌーヴァル帝のお気に入りの、シスターマルグリッド、その人です、そしてそのおぞましい実験が行われた、ヴァルシュヴァル卿の心の弱い部分、脳の一部と、シスターマルグリッドの、ヌーヴァル帝にすら歯向かったという強い精神、つまりこちらの脳の一部を、入れ替えたのです」

「!!」
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