ギフトマン

ショー・ケン

文字の大きさ
上 下
23 / 30

夢の終わり

しおりを挟む
 パルシュは、自分の行いを思い出していた。燃える家の前で立ちすくむアレポに。しかし戸惑いもあった。"秘密"を抱えたまま、彼女に何をいおうか。だが、もはや罪は積み重ねていた。なぜなら、彼女のためといいながら、自分の中では冒険者になり、いずれ英雄になりたいという想いが渦巻いていたのだから。

 そんなふうに逡巡していると、彼女の頭部がゆっくりとふりむいてきた。そして彼女は、笑いながらないていた。

「パルシュ……全部……燃えちゃった」

 彼はすぐに近づいた。そして彼女を抱きかかえた。彼女は泣くのをやめなかった。「ひいっ!!」

 後ろから叫び声がきいてふりかえる。トマスは、片方のパルシュがつれてきたとますの額に手を伸ばす。するとそうされた方は、体の足のほうから腐ってくちていく、それは植物の腐敗そのものだった。草や梢、土や根となり崩れ去る。

「パルシュ……」

「ん?」

「私……怖いわ、何か、とてつもない事がおきようとしているみたい……トマスは”罪の償い”だといっていたけれど……トマスが、私は彼が、何か巨大な悪夢をつれてきたように見えて仕方がないの」

「……いや……悪夢は……これまでも見てきたじゃないか」

 

 そして夜がせまっていった。悪夢が加速する、夜が。

「キャアアア!!」

 パルシュの家に泊めてもらったアレポは、叫び声に目をさました。パルシュの部屋に行くと彼は寝ぼけていた。

「どうしたんだ?大声をだして」

「違う、私じゃないわ」

 声は村の中央から響いていた。そして、急いで二人が着替えて外にでる。人だかりができていて、その中央に何か巨大な看板のようなものが立っている。

 パルシュは急いで人込みをかき分けそれを見て、絶句した。またアレポも口元を隠した。

「!!!!」

「ヒィ」

 そこには、ルアンスとイベラの遺体が磔にされているのだった。



 そして依然、暗雲は村をおおっており、その雲の一部が村に降り立った。それは角の生えた、まさに魔王といったいでたちの影となった。人々は、たじろいだ。影はいう。

「これは“罪”だ、”罪人”がおかした殺し、しかし、村人たちよ、”村長”"孫"をさしださなければお前たちもいずれこうなるだろう」

 人々の中でざわめきがおこる。そして、人々の目は自然と殺気だって、段々とそれは態度と声にあらわれた。

「村長は?」

「知っているものもいるだろう」

「隠されている」

「早くさしだそう」

 すると、村の奥から、大声が響いた。

「わしはここだ!!」

 ずけずけと人だかりの間をかきわけ、長老は人々の中央にたって、”影”と対面する。

「私は“罰”を受けよう、だが条件がある……ある人間も”罪”を隠しておる、彼と決闘をすること、それが条件だ」

 影は答える。

「面白い、それはだれだ」

「パルシュだ」

「……」

 人々はいっせいにパルシュをみる。パルシュは、沈黙する。影は首をひねった。だがいった。

「彼も罪がないとはいえない、彼一人の命ならば、たやすくさしだそう」

「では……正午までに、わしはあの”処刑の台地”に向かう」

「いいだろう」

 そういいつつも、魔王は右手を剣の形にかえた、人々は、悲鳴をあげぱーっと散り散りになる。

"ザシュッ"

 村長の首がはねられた。群衆の叫びが響く。が、それが地面に落ちると、人々はまた静かになった。

「泥人形の魔法だ」

 先程のパルシュの使った魔法と同じだ。それは土界になり、人々を安堵させたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

処理中です...