ギフトマン

ショー・ケン

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葛藤

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 アレポは連行されながら、頭の中でこんな事を考えていた。

(私が、嘘つきだったからいけないのかもしれない……私は、パルシュを応援しながら、彼に冒険者になってほしくなかった、それでも自分は冒険者になりたくて……パルシュは危険な目にあってほしくない、我儘で、それでも応援しているふりをしてきたから、だからなの?)



 ふと、牢のある暗がりの室内から暗くなりかけた夕日にてらされて外に出ると、一瞬目がまぶしくてやられてしまった、だがすぐ元に戻り、アレポは連行される、ふと村に隣接する林の中から、何者かがのぞいているような雰囲気を感じた。それはあの―トマス―となのった異形の青年の影のような気がした。

「助け……」

 と言いかけたとき、その言葉は、口まで出かけてとまった。

(これでよかったのかもしれない、あの時もそうだった、パルシュの両親が死んだときも)

 遠くをみると、空には災害の予兆、巨大な青い魔力を纏う黒い雲が迫っている。



「まずい……くる」

 そうか、と納得する。自分は生贄なのだ、パルシュの両親のように、そして目の前にたつ人間たち。



 死からよみがえったノース、イベラ、ルアンスがいた。ノースが口を開く。

「ごめんな、生きて戻って、俺たちの信頼するパーティメンバーが、俺の危機をすくってくれたんだ、お前たちと違って、俺には頼れる仲間がいるからなあ」

 そして村人たちは皆体をしばられて動けない状態で車座に座らされている。その中央に椅子があり、そこにアレポは座らされたのだった。



 ノースが続ける。

「さて、イベラ」

 イベラがふと前にでて、椅子に手をかける。

「わかったわ、ノース」

 ふとイベラは美しい顔をゆがめ手を伸ばしアレポのアゴにてをかける、そしてつばをはきかけた。

「よくも、私のかわいいリーダーをひどい目にあわせようとしたわね、私たちが隠れて魔法をかけてなかったら、リーダーは死んでいたわ、このアバズレ」

「その言葉、そっくりそのまま返すわ」

「!!」

 思い切り足をひいて、蹴り下ろすイベラ。その膝が、アレポの腹部にあたる。村人たちがざわつく。

「いいわ、なんであなたが選ばれたのかおしえてあげる」

 そういって、イベラはアレポの髪をつかんでもちあげ、その顔をじっくりとみつめた。

「あんたは特殊な能力を持っている、村人たちも、そしてパルシュも、そのことを隠している……あんたはねえ、生きた……」

「そこまでだ!!」

 と、思いもかけずノースが叫んだ。イベラは悪態をつきながら、今度はナイフを取り出した。

「災いをよんでもらうわよ……ルメラグメルラルメラグメルラ……」

 幾度か同じ呪文を詠唱すると、次はナイフを思いきり天高く掲げ、勢いよくふりおろしたのだった。

「災厄を封じるために!!死ねええ!!!」
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