ギフトマン

ショー・ケン

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1 アレポ

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「私はアレポ、私には悩みがみっつある」

 村で、水汲みをしている下がり目の金髪に、しっぽのようなくせ毛を二つもつ少女。彼女の傍には、角が生えたイタチによくにた生物がはしりまわっている、やがて彼女の頭の上に上った。

「ひとつは、弱い幼馴染パルシュ」

 水をくみ上げ、オンボロの家に移動する。

「もうひとつは、かつて悪ガキで今は勇者のフリなんかしている、これも幼馴染のノース」

 屋内に入り、やがてその水を机の上にバン、とおいた。

「そしてもう一つは……私自身のポンコツで役立たずなスキル」

 彼女は、手のひらを広げると彼女の手の中に明るい光がさした。

「プォオオン」

 やがて、それは机の直ぐ傍にあったスプーンを拾い上げた。というより、光に吸い寄せられたような感じだった。

「こんな力、何につかえばいいっていうの、はあ」

 やがて、世話している鶏小屋へいき、朝日を眺めると、不安に心を痛めた。

(パルシュのやつ大丈夫かな、ノースのパーティは、強いと噂だけど、私はあいつを信用していないわ、あいつも、弱いスキルしかもってないのに“ギフトマン”だなんて、私がかつてあの子に話した与太話をしんじているんだから……)

 ずっと朝日を見ていると、その下の地平線から、人影があらわれた。

「1、2、3」

 アレポは青ざめた。明らかにノースのパーティだ。彼らは、村に着くと歓迎された。

「なんとか、ゴブリンはやっつけたぜ、これで冒険者がひどい目にあうのをふせげた」

「うおおお、さすがノースだ!!」

 盛り上がる村人たち、そのそばで、つかつかとにじみよるかげ、突然それはノースに殴りかかった。

「おっとあぶねえ、ん?これは」

「!!!!」

 それは、怒りに燃え上がった瞳をノースに向ける、アレポだった。

「おい、アレポ、聞いてないのか?俺たちはあいつを必死でかばって……」

「私にとっては!!弟みたいな存在だったのよ!!皆は役立たずだっていうけど、あんたが、無事に返すといったから私は!!」

 瞳に涙をたっぷりとためて、怒りをぶつける場所もなく、アレポは彼の襟につかみかかった。誰もかける言葉がみつからず、村人たちも悲しい目をしていた。



 その頃、ダンジョンでは……

「う……」

 ゴブリンの足らしきものが近づいてくるのをみて、パルシュは、自分ももう終わりだとおもった。だがそれはのっそりのっそりと自分に近づいてきて……やがて、たちどまると、何かをふりおろすような動作をしたようにみえた。その瞬間、彼はその人間の足をつかんだ。

「えっ……」

 その人間は、人だった。人というにはあまりに小柄な、とがった鼻とごつごつしたでこをもつ、奇妙な人だった。
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