1 / 1
無限の今日
しおりを挟む
「大企業は独占をやめろ!」
「MOZは”脳制御チップ”の独占をやめろ」
「私たちを解放しろ!!」
早朝から、会社のオフィスの下で叫ぶ労働者たち。人々は脳の一部を当たり前に電脳化していた。しかし、能力には制限があり、高所得者及び特権階級しか"制限"を突破できなかった。
アランは、MOZという、特殊な許可を得た、国に一つしかない”制御チップ”の開発企業。その会社の社長ロウルの息子だ。まだ10歳になったばかり。父親はため息をして、秘書と連絡をとりあっていた。アランは一人で食卓に座り、朝ごはんをたべている。その脇には、”メイド型アンドロイド”が彼の世話をしていた。
アランは”先を見越して”テレビの電源をつけた。一斉に報道がおこった。その日、一斉に“能力制限”が解除された。父と政府の決定により、”制御チップ”の”制御”が解放されたのだ。
その後、アランは登校をする。その途中で様々な人々をみた。軽々と足をうごかして、”苦痛”なく走るもの。歩きながらAR装置によって勉強をするもの。街のテレビで賭け事の予想をたてるもの。
一人の労働者が突然道の真ん中に躍り出て叫んだ。
「やったぞ!!これまで理解できなかった言葉や、数式が理解できる、”制御チップ”は解放された!!誰もが皆、自由に仕事を選べる!!」
その脇を通りすぎながら、アランは考える。
(そんな訳がないのに)
父は確かに制御チップの”制限”を解放した。だがむしろ"解放"されたのは、それまで"不当な制限"を受けていた箇所だけだ。"解放"されたのは"本来使える頭脳"だけだ。もとから父と政府は結託して、人間を階層ごとにわけ、高等な階層にいないものに、”不当な制限”をかけていたのだ。そうとも知らず街は、男の叫びに呼応してわきあがっていた。
そうだ。そんな事を考え続けていると、すぐに10年の時がすぎたのだった。
アランは、優秀な大学に入り、勉強にいそしんでいた。しかし、しっていた。10年前から何も変わっていない事を。
アランは、まるで周囲が10年前から一切進まない事に疑問をいだいていた。そして世の不平等を嘆いていた。父は、あろうことか今では国民に信頼されている。MOZの社長に居座り続けている。父は……老いることもなかった。病気になったこともなかった。
アランは、帰宅すると、ある決意をもとに、父のオフィスにむかった。
「父さん」
「どうした?」
機械的に、書類に目を通す父親に、苛立ちを覚える。
「父さん、これまで僕は、父さんにずっと"管理"され続けてきた」
そのいいぐさに、父は思わず顔を上げる。
「何をいうんだ、大学で何か困った課題でもみつかったか?私を疑うなど、お前らしくもない」
「小さなころからそうだ、黒人の友人も許さなかったし、恋人だって……高校のころ、小さな発達障害を持つレィナを、あんたが無理やり転校させ、別れされたのもそうだ」
「おい、何をいうんだ?」
「父さん、国だってそうさ、全部父さんの思い通り、だけど、本当にこれでよかったのか?」
アランは、傍らから最新のレーザー銃をとりだした。
「お前、何を、バカな事をよせ」
「母さんがあんたを捨てたのもわかる、生まれる前の事だからしらないが」
「いや、母さんは、今まで言っていなかったが病気でしんだんだ」
「あんたのウソはうんざりだ!!」
叫ぶと、父はだまりこんで、鼻をかきながら、たちあがり、アランに近寄り彼の肩にてをのせた。
「なあ、アラン、よく聞け、私は確かに人を管理してきたかもしれない、場合によってはお前の管理も、だがこれは……もし"世界のため"だったらどうだ?」
「何を、口からでまかせを」
「いいや、そうじゃない」
アランのむけた銃口にてをかぶせ、続ける。
「本当さ、すべて"厳重な管理"のもとに進んでいる、だから”お前の未来、お前の考え”もすべて、計算のうちだ」
《ズサッ》
執事型アンドロイドたちがあらわれ、アランにむけて四方からテーザー銃の銃口をむけた。
「それでも、あんたは俺を殺せない、だが俺は、あんたを殺せる!!」
「そうだ、だが銃をみてみろ、ホラ」
ロウルが、ポケットから何かをとりだしてみせた。
「この日の事や、未来のこと、ありとあらゆる可能性は”量子コンピューター”によって算出されている、国がそう決めている、しかしその"量子コンピューター"でさえ、人口知能と結びつかないように、何重もの制限がかかっている、私もだ、私も運命のこまなのだ、だから私は"彼女"と一緒にいる」
その彼の手にのっていたのは、アランが持っているレーザー銃のマガジンだった。
「ホラ、そんな無意味な銃は渡すんだ、すべて、決まっていることなんだ、私は今夜おこるこをとしっていて、今朝、これをぬきとった……お前も思う事は多いだろう、私の事を重荷に思う事もあるだろう、だが、お前に苦労はさせないよ」
そういって、息子をだきかかえるロウル。ロウルは抱きしめながら執事型ロボットが散会し、かわりにメイド型アンドロイドが現れたのをみた。そして、ある事を思い出した。
今朝。丁度朝でかけるとき、気分転換にメイド型アンドロイドに掃除を頼んだ。その時彼女は何をしただろう―
彼女は今のんきにアランをみつけて手を振った。母を知らない自分にとって彼女は母のような存在であり、そのしぐさも、母を思わせるおのだった。
―そう、母は、立派な存在だ。自分をかまわない父の代わりにありとあらゆる世話をしてくれた。機械であれど、ぬくもりを感じた。そして、アランは自分より低い階級にいる人間を見るたびに思う。家にそうしたアンドロイドがいない人。やる気があっても、時間がなく仕事に追われているひと。そもそも、金がなく這い上がる機会がないひと。
母は今朝―何をしただろう。彼女は、自分の部屋を掃除し、レーザー銃を見つけてこう言った。
「アラン様、マガジンが抜けております、補充しておきましょうか?」
トリガーに手をかけた。もはやそれは、反射というような感覚だった。恨みはある。だが人を殺すほどではない。けれど、生まれてからであった数々の苦労人が、そしてその人たちが"思考"に制限をかけられていることが、そしてその差別の主が目の前の父親であることが、許せなかった。
《ズドォオオオオオン》
響き渡る銃声。戻ってきて、おろおろとする執事型アンドロイドたち、力なく、地べたにたおれこむロウル。彼らは、父親《ロウル》を覗き込んでこういった。
「防げなかったカ」
《ピュィイイン》
父親の胸部から、ホログラム映像が現れた。父親がデスクの前ですわっている。事前に撮影した映像なのだろう。日付がかかれている。今日のものだ。窓の外は暗く、深夜か早朝にとったのだろう。
「今日、もしも、もしも息子が私を撃ったとしても、私は、息子を恨まない、だが息子には、重大な事実を話さなければならない」
アランは、その場に座り込んだ。銃を持つ手がふるえていた。
「この映像が流れているということは、未来はある方向にきまったということだ、お前には苦労をかけたな、だが、もはや未来はお前の中にあるといってもいいだろう」
アランは映像をみながら、父親の体のあちこちを確認する。間違いない。彼は“アンドロイド”だ。まだ、体を機械に変える技術は開発されてない。脳だけだ。
「私たちは”ある絶望”に直面していた、政府も、研究者も、皆それに恐怖していた、つまり“AI”が人類の知能を優に超え、人間を支配することだ、それはあらゆる量子コンピューター、コンピューターが”予想”していた。それを防ぐための施策こそがあらゆる電子機器に"制限"をかけることだ、お前も、そして富裕層も、皆気づいていない、この秘密を知っているのはごく少数だ、だが、きけ"制御チップ"は、”みな平等”に制限をかけている、富裕層だけ”制限”が解除されているなんてことはない、そもそも〝制御チップ〟事態が、ただ、電子化された頭脳が極端に進歩しない用意制限されたもの、ただの飾りのようなものだからな」
「じゃ、じゃあ、な、なんのために……」
「なんのために?と思うだろう?もはや、AIは進歩しすぎて、ウイルスのように電子の海を駆け巡っている、だから、もはや物質的な制限も、ひとつの“障壁”、制限なのだ」
映像は続けた。
「私は、アンドロイドだ、肉体としての”私”はすでに死を迎えた、だが私の同僚はそれを許さなかった、研究中の“電脳化頭脳”に私の知能と、そしてお前の母親の頭脳の一部をコピーし、いれた、彼女はガンで死んだんだ、そして、私も、孤独に耐えきれず死を選んだ」
「父さんは……嘘をいっていなかったのか」
アランは、現実逃避をするように、窓の外の世界にめをむけた。高層ビルの下には
、今もせっせと働いている人々がいる。
「だが私は“生まれ変わって”後悔した、そう、お前をおいて自死したことをだ、そこでお前にすべてをささげることにきめた」
アランは、ふと嫌な予感を感じた。父親が目を見開いている。こうなった父親は、梃子でもいう事をきかない。それに、そうなった父親の提案は、必ずクレイジーなものばかりだったからだ。
「"すべての人間"に制限を与えるといった、だが私は法をおかした、"お前は特別"だ」
「!?」
「……お前だけが、計算の制御のないチップを与えられた、私が、世界中の誰にも秘密でな、その計算能力はすさまじいものだ、電子の海にさらされれば、喫緊にせまっていた課題、人工知能が誕生してもおかしくないほどの……だが私は、お前を愛す事にきめた、なぜならお前は、数多くの障害をもってうまれてきたからな、その、発達障害や精神的な疾患などだ……お前の頭脳は、チップによって"補助"されている……だがこの動画を見ている時には、お前は"ある責任"を追わなければいけない、お前は、本当に”アラン”だろうか?お前は"人類の為だけに働きつづけられるだろうか?"答えは……わからない、ただほとんどの計算の上で、お前に与えた制御チップは……”人間を超える自我を持つ”ことが証明された、そう、お前は……あらゆる人間のチップを強化するといったがそれこそが……」
アランは、頭をかかえてうずくまった。映像から、かすかに声がひびいた。
「私たち、政府や研究者が怖れた”シンギュラリティ”の先の世界の話なのだ」
「うわああああああああ!!」
アランは反り返って、雄たけびをあげた。自らが憎んだ"差別"の根源が自分の脳内にある、そしてそれは、父親や政府、科学研究者たちがおそれたAIの暴走、それを引き起こすものだった、その歪んだ愛に絶望したのだった。
「MOZは”脳制御チップ”の独占をやめろ」
「私たちを解放しろ!!」
早朝から、会社のオフィスの下で叫ぶ労働者たち。人々は脳の一部を当たり前に電脳化していた。しかし、能力には制限があり、高所得者及び特権階級しか"制限"を突破できなかった。
アランは、MOZという、特殊な許可を得た、国に一つしかない”制御チップ”の開発企業。その会社の社長ロウルの息子だ。まだ10歳になったばかり。父親はため息をして、秘書と連絡をとりあっていた。アランは一人で食卓に座り、朝ごはんをたべている。その脇には、”メイド型アンドロイド”が彼の世話をしていた。
アランは”先を見越して”テレビの電源をつけた。一斉に報道がおこった。その日、一斉に“能力制限”が解除された。父と政府の決定により、”制御チップ”の”制御”が解放されたのだ。
その後、アランは登校をする。その途中で様々な人々をみた。軽々と足をうごかして、”苦痛”なく走るもの。歩きながらAR装置によって勉強をするもの。街のテレビで賭け事の予想をたてるもの。
一人の労働者が突然道の真ん中に躍り出て叫んだ。
「やったぞ!!これまで理解できなかった言葉や、数式が理解できる、”制御チップ”は解放された!!誰もが皆、自由に仕事を選べる!!」
その脇を通りすぎながら、アランは考える。
(そんな訳がないのに)
父は確かに制御チップの”制限”を解放した。だがむしろ"解放"されたのは、それまで"不当な制限"を受けていた箇所だけだ。"解放"されたのは"本来使える頭脳"だけだ。もとから父と政府は結託して、人間を階層ごとにわけ、高等な階層にいないものに、”不当な制限”をかけていたのだ。そうとも知らず街は、男の叫びに呼応してわきあがっていた。
そうだ。そんな事を考え続けていると、すぐに10年の時がすぎたのだった。
アランは、優秀な大学に入り、勉強にいそしんでいた。しかし、しっていた。10年前から何も変わっていない事を。
アランは、まるで周囲が10年前から一切進まない事に疑問をいだいていた。そして世の不平等を嘆いていた。父は、あろうことか今では国民に信頼されている。MOZの社長に居座り続けている。父は……老いることもなかった。病気になったこともなかった。
アランは、帰宅すると、ある決意をもとに、父のオフィスにむかった。
「父さん」
「どうした?」
機械的に、書類に目を通す父親に、苛立ちを覚える。
「父さん、これまで僕は、父さんにずっと"管理"され続けてきた」
そのいいぐさに、父は思わず顔を上げる。
「何をいうんだ、大学で何か困った課題でもみつかったか?私を疑うなど、お前らしくもない」
「小さなころからそうだ、黒人の友人も許さなかったし、恋人だって……高校のころ、小さな発達障害を持つレィナを、あんたが無理やり転校させ、別れされたのもそうだ」
「おい、何をいうんだ?」
「父さん、国だってそうさ、全部父さんの思い通り、だけど、本当にこれでよかったのか?」
アランは、傍らから最新のレーザー銃をとりだした。
「お前、何を、バカな事をよせ」
「母さんがあんたを捨てたのもわかる、生まれる前の事だからしらないが」
「いや、母さんは、今まで言っていなかったが病気でしんだんだ」
「あんたのウソはうんざりだ!!」
叫ぶと、父はだまりこんで、鼻をかきながら、たちあがり、アランに近寄り彼の肩にてをのせた。
「なあ、アラン、よく聞け、私は確かに人を管理してきたかもしれない、場合によってはお前の管理も、だがこれは……もし"世界のため"だったらどうだ?」
「何を、口からでまかせを」
「いいや、そうじゃない」
アランのむけた銃口にてをかぶせ、続ける。
「本当さ、すべて"厳重な管理"のもとに進んでいる、だから”お前の未来、お前の考え”もすべて、計算のうちだ」
《ズサッ》
執事型アンドロイドたちがあらわれ、アランにむけて四方からテーザー銃の銃口をむけた。
「それでも、あんたは俺を殺せない、だが俺は、あんたを殺せる!!」
「そうだ、だが銃をみてみろ、ホラ」
ロウルが、ポケットから何かをとりだしてみせた。
「この日の事や、未来のこと、ありとあらゆる可能性は”量子コンピューター”によって算出されている、国がそう決めている、しかしその"量子コンピューター"でさえ、人口知能と結びつかないように、何重もの制限がかかっている、私もだ、私も運命のこまなのだ、だから私は"彼女"と一緒にいる」
その彼の手にのっていたのは、アランが持っているレーザー銃のマガジンだった。
「ホラ、そんな無意味な銃は渡すんだ、すべて、決まっていることなんだ、私は今夜おこるこをとしっていて、今朝、これをぬきとった……お前も思う事は多いだろう、私の事を重荷に思う事もあるだろう、だが、お前に苦労はさせないよ」
そういって、息子をだきかかえるロウル。ロウルは抱きしめながら執事型ロボットが散会し、かわりにメイド型アンドロイドが現れたのをみた。そして、ある事を思い出した。
今朝。丁度朝でかけるとき、気分転換にメイド型アンドロイドに掃除を頼んだ。その時彼女は何をしただろう―
彼女は今のんきにアランをみつけて手を振った。母を知らない自分にとって彼女は母のような存在であり、そのしぐさも、母を思わせるおのだった。
―そう、母は、立派な存在だ。自分をかまわない父の代わりにありとあらゆる世話をしてくれた。機械であれど、ぬくもりを感じた。そして、アランは自分より低い階級にいる人間を見るたびに思う。家にそうしたアンドロイドがいない人。やる気があっても、時間がなく仕事に追われているひと。そもそも、金がなく這い上がる機会がないひと。
母は今朝―何をしただろう。彼女は、自分の部屋を掃除し、レーザー銃を見つけてこう言った。
「アラン様、マガジンが抜けております、補充しておきましょうか?」
トリガーに手をかけた。もはやそれは、反射というような感覚だった。恨みはある。だが人を殺すほどではない。けれど、生まれてからであった数々の苦労人が、そしてその人たちが"思考"に制限をかけられていることが、そしてその差別の主が目の前の父親であることが、許せなかった。
《ズドォオオオオオン》
響き渡る銃声。戻ってきて、おろおろとする執事型アンドロイドたち、力なく、地べたにたおれこむロウル。彼らは、父親《ロウル》を覗き込んでこういった。
「防げなかったカ」
《ピュィイイン》
父親の胸部から、ホログラム映像が現れた。父親がデスクの前ですわっている。事前に撮影した映像なのだろう。日付がかかれている。今日のものだ。窓の外は暗く、深夜か早朝にとったのだろう。
「今日、もしも、もしも息子が私を撃ったとしても、私は、息子を恨まない、だが息子には、重大な事実を話さなければならない」
アランは、その場に座り込んだ。銃を持つ手がふるえていた。
「この映像が流れているということは、未来はある方向にきまったということだ、お前には苦労をかけたな、だが、もはや未来はお前の中にあるといってもいいだろう」
アランは映像をみながら、父親の体のあちこちを確認する。間違いない。彼は“アンドロイド”だ。まだ、体を機械に変える技術は開発されてない。脳だけだ。
「私たちは”ある絶望”に直面していた、政府も、研究者も、皆それに恐怖していた、つまり“AI”が人類の知能を優に超え、人間を支配することだ、それはあらゆる量子コンピューター、コンピューターが”予想”していた。それを防ぐための施策こそがあらゆる電子機器に"制限"をかけることだ、お前も、そして富裕層も、皆気づいていない、この秘密を知っているのはごく少数だ、だが、きけ"制御チップ"は、”みな平等”に制限をかけている、富裕層だけ”制限”が解除されているなんてことはない、そもそも〝制御チップ〟事態が、ただ、電子化された頭脳が極端に進歩しない用意制限されたもの、ただの飾りのようなものだからな」
「じゃ、じゃあ、な、なんのために……」
「なんのために?と思うだろう?もはや、AIは進歩しすぎて、ウイルスのように電子の海を駆け巡っている、だから、もはや物質的な制限も、ひとつの“障壁”、制限なのだ」
映像は続けた。
「私は、アンドロイドだ、肉体としての”私”はすでに死を迎えた、だが私の同僚はそれを許さなかった、研究中の“電脳化頭脳”に私の知能と、そしてお前の母親の頭脳の一部をコピーし、いれた、彼女はガンで死んだんだ、そして、私も、孤独に耐えきれず死を選んだ」
「父さんは……嘘をいっていなかったのか」
アランは、現実逃避をするように、窓の外の世界にめをむけた。高層ビルの下には
、今もせっせと働いている人々がいる。
「だが私は“生まれ変わって”後悔した、そう、お前をおいて自死したことをだ、そこでお前にすべてをささげることにきめた」
アランは、ふと嫌な予感を感じた。父親が目を見開いている。こうなった父親は、梃子でもいう事をきかない。それに、そうなった父親の提案は、必ずクレイジーなものばかりだったからだ。
「"すべての人間"に制限を与えるといった、だが私は法をおかした、"お前は特別"だ」
「!?」
「……お前だけが、計算の制御のないチップを与えられた、私が、世界中の誰にも秘密でな、その計算能力はすさまじいものだ、電子の海にさらされれば、喫緊にせまっていた課題、人工知能が誕生してもおかしくないほどの……だが私は、お前を愛す事にきめた、なぜならお前は、数多くの障害をもってうまれてきたからな、その、発達障害や精神的な疾患などだ……お前の頭脳は、チップによって"補助"されている……だがこの動画を見ている時には、お前は"ある責任"を追わなければいけない、お前は、本当に”アラン”だろうか?お前は"人類の為だけに働きつづけられるだろうか?"答えは……わからない、ただほとんどの計算の上で、お前に与えた制御チップは……”人間を超える自我を持つ”ことが証明された、そう、お前は……あらゆる人間のチップを強化するといったがそれこそが……」
アランは、頭をかかえてうずくまった。映像から、かすかに声がひびいた。
「私たち、政府や研究者が怖れた”シンギュラリティ”の先の世界の話なのだ」
「うわああああああああ!!」
アランは反り返って、雄たけびをあげた。自らが憎んだ"差別"の根源が自分の脳内にある、そしてそれは、父親や政府、科学研究者たちがおそれたAIの暴走、それを引き起こすものだった、その歪んだ愛に絶望したのだった。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
暗闇ロボ 暗黒鉄
ヱヰキング
SF
ここは地球、美しく平和な星。しかし2年前、暗闇星人と名乗る謎の宇宙人が宣戦布告をしてきた。暗闇星人は、大量の量産型ロボットで地球に攻めてきた。世界は国同士の争いを一度すべて中断し、暗闇星人の攻撃から耐え続けていた。ある者は犠牲になり、ある者は捕虜として捕らえられていた。そしてこの日、暗闇星人は自らの星の技術で生み出した暗闇獣を送ってきた。暗闇獣はこれまで通用していた兵器を使っても全く歯が立たない。一瞬にして崩壊する大都市。もうだめかと思われたその時、敵の量産型ロボットに似たロボットが現れた。実は、このロボットに乗っていたものは、かつて暗闇星人との争いの中で捕虜となった京極 明星だったのだ!彼は敵のロボットを奪い暗闇星から生還したのだ!地球に帰ってきた明星はロボットに暗黒鉄と名付け暗闇獣と戦っていくのだ。果たして明星の、そして地球運命は!?
ワイルド・ソルジャー
アサシン工房
SF
時は199X年。世界各地で戦争が行われ、終戦を迎えようとしていた。
世界は荒廃し、辺りは無法者で溢れかえっていた。
主人公のマティアス・マッカーサーは、かつては裕福な家庭で育ったが、戦争に巻き込まれて両親と弟を失い、その後傭兵となって生きてきた。
旅の途中、人間離れした強さを持つ大柄な軍人ハンニバル・クルーガーにスカウトされ、マティアスは軍人として活動することになる。
ハンニバルと共に任務をこなしていくうちに、冷徹で利己主義だったマティアスは利害を超えた友情を覚えていく。
世紀末の荒廃したアメリカを舞台にしたバトルファンタジー。
他の小説サイトにも投稿しています。
にゃがために猫はなく
ぴぴぷちゃ
SF
我輩は宇宙1のハードボイルドにゃんこ、はぴだ。相棒のぴぴとぷうと一緒に、宇宙をまたにかけてハンター業に勤しんでいる。うむ、我輩の宇宙船、ミニぴぴぷちゃ号は今日も絶好調だな。ぴぴとぷうの戦闘用パワードスーツ、切り裂き王と噛み付き王の調子も良い様だ。さて、本日はどんな獲物を狩ろうかな。
小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
全知の端末
りゅうやん
SF
全ての人がブレインマシンインターフェース(BMI)を持っている世界。
この装置を使えば、ただ思うだけで周囲の機器を動かし、人と通信することが出来る。
BMIが主要な意思伝達の手段となり、人々は日常生活の中で声を出して話をする行為を忘れつつある。
そして、BMIの機能を応用することで、究極とも言える知性を獲得する方法が見いだされた。
しかし、その代償として、自分の人格は失われる。
究極の知性への憧れと人格を失う恐怖の狭間で、主人公は最後に自分の行く道を決断する。
特殊装甲隊 ダグフェロン 『廃帝と永遠の世紀末』 第六部 『特殊な部隊の特殊な自主映画』
橋本 直
SF
毎年恒例の時代行列に加えて豊川市から映画作成を依頼された『特殊な部隊』こと司法局実働部隊。
自主映画作品を作ることになるのだがアメリアとサラの暴走でテーマをめぐり大騒ぎとなる。
いざテーマが決まってもアメリアの極めて趣味的な魔法少女ストーリに呆れて隊員達はてんでんばらばらに活躍を見せる。
そんな先輩達に振り回されながら誠は自分がキャラデザインをしたという責任感のみで参加する。
どたばたの日々が始まるのだった……。
INNER NAUTS(インナーノーツ) 〜精神と異界の航海者〜
SunYoh
SF
ーー22世紀半ばーー
魂の源とされる精神世界「インナースペース」……その次元から無尽蔵のエネルギーを得ることを可能にした代償に、さまざまな災害や心身への未知の脅威が発生していた。
「インナーノーツ」は、時空を超越する船<アマテラス>を駆り、脅威の解消に「インナースペース」へ挑む。
<第一章 「誘い」>
粗筋
余剰次元活動艇<アマテラス>の最終試験となった有人起動試験は、原因不明のトラブルに見舞われ、中断を余儀なくされたが、同じ頃、「インナーノーツ」が所属する研究機関で保護していた少女「亜夢」にもまた異変が起こっていた……5年もの間、眠り続けていた彼女の深層無意識の中で何かが目覚めようとしている。
「インナースペース」のエネルギーを解放する特異な能力を秘めた亜夢の目覚めは、即ち、「インナースペース」のみならず、物質世界である「現象界(この世)」にも甚大な被害をもたらす可能性がある。
ーー亜夢が目覚める前に、この脅威を解消するーー
「インナーノーツ」は、この使命を胸に<アマテラス>を駆り、未知なる世界「インナースペース」へと旅立つ!
そこで彼らを待ち受けていたものとは……
※この物語はフィクションです。実際の国や団体などとは関係ありません。
※SFジャンルですが殆ど空想科学です。
※セルフレイティングに関して、若干抵触する可能性がある表現が含まれます。
※「小説家になろう」、「ノベルアップ+」でも連載中
※スピリチュアル系の内容を含みますが、特定の宗教団体等とは一切関係無く、布教、勧誘等を目的とした作品ではありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる