令嬢の願い~少女は牢獄で祈る~

Mona

文字の大きさ
上 下
17 / 19
少女は再び目覚める

17 in牢獄は現在進行形②

しおりを挟む
 俺は、夜になると行動を開始した。

牢番の奴等は酒を飲んでいやがる。
真面目に仕事しろよなんて事を思いながら、牢番が1人になるのを待った。

牢番の1人がトイレに行くのを確認する。
酒なんか飲んでるからだ。



「オーイ、俺にも酒をくれよ!」

「煩い!黙れ!」

「オーイ、酒をくれたら花街のメアリーを紹介してやる」

「本当かよ!」
バカな酔っ払いが、ノコノコやって来る。

「早く酒をよこせ」
酔っ払いは、牢の柵の間から酒の瓶を入れてくる。
この国、大丈夫なのか。

牢番の腕を掴み上げながら、俺は柵の間から腕を伸ばして、牢番の首を締め上げた。


そこからは俺の独壇場だ。

窒息させた牢番から、牢の鍵を取りあげた俺は牢から出ると戻ってきた牢番を殴り、昏倒させたのさ。


保管されていた剣を取り戻した俺は、牢番の奴らを切り倒しながら地下に向かった。

お世話になった奴等がいるかと、ウキウキしながら次々と餌食にしていく。

この建物の地下には、重罪犯や死刑囚が投獄され日々拷問されている筈だ。

ディスティニーを拷問した奴等が居るかもしれない。

早く奴等を殺ってやる。

そんな事を思いながら、地下に続く螺旋階段を走りながら降りていく。







 静寂と悲鳴が同居し、死の香りが支配する世界が、地下には広がっていた。

拷問官達は、上層階の騒ぎに気付いていない様だ。

囚人達の呻き声、断末魔が薄暗い空間を引き裂いている。

記憶に残るディスティニーの、か細い後ろ姿に俺の思考が支配される。

「敵討ちだー!!」
俺は、拷問がされている場に突入した。



当時の面影が残る者も、知らない奴にも、剣を振るって息の根を止めていく。

そして最後の1人の首元に剣を添える。
当時のこいつは、この地下牢の責任者で拷問快楽者だ。
ディスティニーの身体に、一番多くの傷を刻んだ奴だ。

《カチッカチッカチッカチッ》

小刻みに震えながら、歯を鳴らしていやがる。

「怖いのか」
奴は、コクコクと首を振る。

「拷問するのは好きな癖に、とんだ臆病者だな」
奴に唾を吐き掛け、足蹴にしてやる。

「さあ、各牢を案内するんだ」
拷問官に各牢を案内させ、明らかに冤罪の者を解放していく。

 「邪神メーテルの導きにより救いに来た」
勿論、布教活動も忘れない。

「これから、大変な時代がやってくる。周囲の意見にながされる事なく自分で、判断するんだ」
訓示も、忘れない。

救った奴等とハグをしてから、シャバに送りだしていく事にした。





 「さて、残ったのはお前等だけだな」

 拷問官と数人の囚人。囚人の中には女が1人いる。
公爵家にディスティニーを迎えに行ったときに、警羅に捕らえられていた女だ。


さて、どうしてやろうか。

取り敢えず、拷問官と女の手足の腱を剣で切る事にした。
これで2人は、動く事も儘ならないだろう。


俺はディスティニーと出会った、地下牢に全員を入れる事にした。

「ここで、どう過ごそうかお前らの自由だ」

動く事ができない拷問官と女が、極悪な囚人と同じ牢でどうなるかなんて。

あ~、嫌だ嫌だ。

死んだ方がましだ。


俺はこの場を後にした。
長い1日だったが、良い事をした後は気分が爽やかだ。









 拷問官は、自分に起きた事が信じられなかった。

だが、実際に手足が動かない状態で、自分が拷問した囚人と同じ牢にいるのだ。


コツコツ・・・コツコツ・・・・。


湿った石畳の廊下から、謎の襲撃者が去って行く音が聞こえるのは、紛れもない現状なのだ。





「来ないで!来るな、獣共」

キャラバン公爵家の元侍女長は、近寄って来る囚人達から必死に逃れようとしている。

彼女は、新興派閥中枢の侯爵家から使命を受けていた。

侯爵家から輿入れした、夫人の手足となり働く事だ。

上手くいっていたのに、何故。

あの男、先妻の子の家庭教師がやって来てから、何故か上手くいかなくなった。

夫人は、元々、何故か積極的ではなかった。

だから、自分がやるしかないと思ったのだ。

公爵家の後継者に、夫人の子であるエリスを添える為に。

憎らしい、先妻の子を排除する為に多岐に渡る嫌がらせをしたのに。

「来るなー!」

囚人達が近寄ってくる。

だが、もう手足が動く事は無いのだ。

それが、彼女の現状である。







 元鍛冶屋の親父は、3日ほど宿屋に泊まり潜伏したが数日後再びキャラバン公爵邸に向かう。


「お前、又来たのか!」門番が男を遮る。

「おい、馬車に乗っているのはディスティニーだろう」


それは、ディスティニー達がノアール子爵領に向かう朝の出来事。


「ディスティニー!迎えに来たぞー!」

「オーイ、誰か!変態ロリコンがやって来たぞ!警羅を呼べ!」
門番が応援を呼ぶ。


ディスティニーとの再会は、何時の事か。

物語はまだまだ続く。




しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

政略転じまして出会いました婚

ひづき
恋愛
花嫁である異母姉が逃げ出した。 代わりにウェディングドレスを着せられたミリアはその場凌ぎの花嫁…のはずだった。 女難の相があるらしい旦那様はミリアが気に入ったようです。

【完結】待ち望んでいた婚約破棄のおかげで、ついに報復することができます。

みかみかん
恋愛
メリッサの婚約者だったルーザ王子はどうしようもないクズであり、彼が婚約破棄を宣言したことにより、メリッサの復讐計画が始まった。

【完結・7話】召喚命令があったので、ちょっと出て失踪しました。妹に命令される人生は終わり。

BBやっこ
恋愛
タブロッセ伯爵家でユイスティーナは、奥様とお嬢様の言いなり。その通り。姉でありながら母は使用人の仕事をしていたために、「言うことを聞くように」と幼い私に約束させました。 しかしそれは、伯爵家が傾く前のこと。格式も高く矜持もあった家が、機能しなくなっていく様をみていた古参組の使用人は嘆いています。そんな使用人達に教育された私は、別の屋敷で過ごし働いていましたが15歳になりました。そろそろ伯爵家を出ますね。 その矢先に、残念な妹が伯爵様の指示で訪れました。どうしたのでしょうねえ。

毒、毒、毒⁉︎ 毒で死んでループする令嬢は見知らぬうちに、魔法使いに溺愛されていた。

にのまえ
恋愛
 婚約者の裏切り、毒キノコなど……  毎回、毒で死んで7歳まで巻き戻る、公爵家の令嬢ルルーナ・ダルダニオン。 「これで、10回目の巻き戻り……」  巻き戻りにも、飽きてきたルルーナ。  今度こそ生きてみせる。と決めた、彼女の運命がいま動き出す。    エルブリスタにて掲載中です。  新しくプロローグを追加いたしました。

【完結】そう。異母姉妹ですか。 元凶はアレです、やっつけましょう。

BBやっこ
恋愛
教会に連れられ、遊んでいなさいとお母さんに言われた。 大事なお話があるって。 同じように待っている女の子。ちょっと似ている。 そうしていっしょに、お母さんを泣かせた髭の男を退治したのです。 そんな頃がありましたとお茶をしている異母姉妹。

婚約破棄で命拾いした令嬢のお話 ~本当に助かりましたわ~

華音 楓
恋愛
シャルロット・フォン・ヴァーチュレストは婚約披露宴当日、謂れのない咎により結婚破棄を通達された。 突如襲い来る隣国からの8万の侵略軍。 襲撃を受ける元婚約者の領地。 ヴァーチュレスト家もまた存亡の危機に!! そんな数奇な運命をたどる女性の物語。 いざ開幕!!

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

【完結】婚約破棄されたユニコーンの乙女は、神殿に向かいます。

秋月一花
恋愛
「イザベラ。君との婚約破棄を、ここに宣言する!」 「かしこまりました。わたくしは神殿へ向かいます」 「……え?」  あっさりと婚約破棄を認めたわたくしに、ディラン殿下は目を瞬かせた。 「ほ、本当に良いのか? 王妃になりたくないのか?」 「……何か誤解なさっているようですが……。ディラン殿下が王太子なのは、わたくしがユニコーンの乙女だからですわ」  そう言い残して、その場から去った。呆然とした表情を浮かべていたディラン殿下を見て、本当に気付いてなかったのかと呆れたけれど――……。おめでとうございます、ディラン殿下。あなたは明日から王太子ではありません。

処理中です...