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poison

20 poison(完)・テアルスティア劇場

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 これは架空の物語。

 「明日、私は愛していない方の元に嫁がなくてはならない」

黒髪の主演女優は、舞台の中央で泣き崩れる。

「嫁いでしまったら、愛しいあの人に会うことはできない」




 「お母様、お姫様が可哀想」貴族席から見ている少女が母親に訴える。
「しっ!静かに」少女の兄弟の少年が、少女に静かにする様にもとめる。

少女よりも、少年のほうが夢中になっているのだ。




 舞台では、黒髪の女優が切実に悲しみを訴えている。

「私が嫁がないと、家は潰れてしまうわ」


「何故、貴女は泣いているの」
銀の妖精が登場する。

「貴女は誰なの?」

「私、私はね」銀の妖精役の役者は、クルクル回る。
「私は、愛と誠実の妖精よ!」
銀の妖精は、決めポーズをとる。
見ている者は、痛い物を感じる。




「お母様、どうしたの」
貴族席にいる少女は、様子のおかしな母親に問う。
「・・・・・・・・」
「静かにしてよ!」
少年は、母親と娘に注意する。





 舞台では、銀の妖精がヒロインに妖しげな小瓶を渡している。

「これは何ですの?」

「これはね、一時的に覚めない眠りに就く薬なんだよ」
銀の妖精は、得意気に説明する。

舞台の中央は、様々な色の照明が交差し、雷鳴の音が鳴る中でヒロインは妖しげな薬を嚥下する。

ヒロインが舞台の中央で倒れると、観客達が様々に叫ぶ。

「死ぬなー!」「大丈夫~?」「キャー!」

大盛り上がりだ!


舞台上では、ヒロインが妖しい薬を飲んで数年経過した事になっているのだ。

深い森の中の、寂れた塔に眠るヒロイン。

そこに現れたのは、傷だらけの騎士。


「貴女の元に来るのが、遅くなってしまった」
騎士は、涙ながらにヒロインを抱きしめる。

そして、キスをするのだ。

眩い証明が交差するなか、ヒロインは眠りから覚め。

「貴方が迎えに来てくれるのを、待っていました」

ヒロインと騎士は、向かい合い再びキスをする。

舞台の幕が閉まる。


《グズグズ・・・・》
《グズグズ・・・・》

「もしかして二人とも泣いているの」
少年は、母親と妹を呆れた目で見る。

再び幕が上がる。

 ヒロインは純白の花嫁姿でカーテンコールに応えるのだ。

その姿は、まるでこの物語のモデルを思い出させる。




 劇場で翌月の公演のお知らせが、発表される。

「良い子のみなさーん!ニャン子の冒険シリーズだニャン」

少女が舞台上で決めポーズをとる。

「新章は、愚者の行進。宜しくお願いするニャン」




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