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poison

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 豪華な調度品が並ぶ後宮の一室には、長椅子に肘を掛ける美女が不機嫌を顕にする。

「そなたらは何をしているのか!」

第一側妃は、息子の婚約者であるオーロラと女官長を膝まずかせ問いただす。

落ち着いた、成熟した美女の印象を持つ彼女だが、二人を目前にし怒りが爆発したらしい。

「そなたらは、解っていないようだな」

側妃は、自分の後ろに控える女官に命じる。

「この者達に解るように、教えてやれ」

「はい」
女官は、事の顛末を淡々と話しだす。


「私は、側妃様に命に従い侯爵様の後を追いました。追い付くと女官長は侯爵様の進路を塞ぎ、許可もなく発言し、支離滅裂な事を発言し侯爵様を困らせて下りました」

「そなたはどう対処したのだ」

「はい、私は女官長の発言に不快を示された侯爵様に詫び、後宮の外迄お供いたしました」




 そう、この女官はアルバニアが、女官長を問い詰める瞬間に割って入った人物なのだ。

「テアルスティア侯爵様に申し上げます」

彼女は、必死に人垣を掻き分けアルバニア目前に跪き、その場を納めたのだ。

なにせ、百戦錬磨の強者なのだから。



 側妃は鷹揚に頷く。

「ご苦労であった」

「当たり前の事でございます」



 側妃は、跪く二人を見る。

「オーロラ、そなたには、この会話の意味すら解らないのだろうな」

側妃は女官長を睨む

「そなたは、妾の顔に泥を塗ったのだ。よって女官長の任を解く。オーロラの世話でもしていろ。二人共下がれ」

側妃付きの女官が、無言で部屋の扉を開ける。







~テアルスティア侯爵家~


 女官長とオーロラが、叱られちゃってる頃の出来事。

「アルバニア、キャサリンから聞いたよ。小蠅が出たらしいね」

「クスクス・・・・。そうですね、少しうざかったです」

アルバニアは紅茶を一口飲む。

「キャサリンに対する態度は許せません。彼女は優秀な私の秘書なんですから」



 キャサリンが、女官として働いていた時に受けた仕打ちに対して、仕返しをする予定ではいたの。

でも、側妃様に謝られてしまったのよ。

出鼻を折られた様に感じたわ。

側妃様はそれを、狙っていたんでしょうね。

そんな側妃様の気遣いも、彼女達は解っていない。

女官長は大義名分を与えてくれたもの。

良いのよね。


 第二王子の側室になった、過去のループでも女官長からの嫌がらせはあったのよ。

私、何もしていないわよ。

当時も、今も、さっぱりだわ。

ただ、どのループでも、彼女はオーロラを崇拝していたわ。

彼女を合わせ、周囲の人間がオーロラを甘やかす事で彼女は増長していったのよ。






 



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