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poison
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彼女が療養している、小さな屋敷は草原の中にある可愛らしい屋敷だったわ。
馬車から降りる私は少し、緊張していたかもしれない。
でも、迎えてくれる使用人達と屋敷の雰囲気は暖かいものだった。
年配の女性が、彼女の居る部屋まで案内してくれたわ。
トントン・・・・。
「お嬢様、テアルスティア侯爵様とお連れの方でございます」
「どうぞ、入ってちょうだい」
とても明るい声が聞こえたの。
「ご機嫌よう」
彼女は、爽やかな風を浴びながら窓際に座っていたわ。
明るい日差が差し込む窓辺で、美しい黒髪が風になびいてる姿の彼女の傍らには、彼が付き添っているの。
柔らかい笑顔で迎えてくれた。
感情を表す事ができない。
彼女の笑顔を見たら、涙が溢れてしまった。
嬉しく、嬉しくて、彼女の恋が叶った事で胸がいっぱいになるのよ。
「さあ、入ってちょうだい」
私達は、応接室の椅子に座らせて貰った。
「婆や、お友達を歓迎したいのよ。チェリーパイを用意してくれたんでしょ。早く持ってきて頂戴い」
婆やさんは、彼女に優しく微笑むと部屋から出ていったの。
「ご免なさいね。使用人の人数が少ないのよ」
カテリーナは、テレるようにアルバニアに詫びる。
「べつに構いません。ただ・・・・」
そう、彼女は車イスに乗っていたのよ。
「そんな顔をしないで。貴女は、丁寧にリスクを教えてくれたわ。選んだのは、私達なのよ」
彼女の足には、軽い後遺症が残ってしまった。
「あのね、リハビリを頑張れば又歩けるようになるの。それに、赤ちゃんも産めるらしいわ」
カテリーナの恋人は、彼女を車イスから抱き上げて応接椅子に座らせる。
「それにね、余り症状が軽かったら嫁に出されたと思うのよ。このぐらいが丁度良かったのよ」
カテリーナは、正面に座るアルバニアの両手に自分の手を重ねる。
「御礼を言うのが、遅くなってしまったわ。ありがとう。心から貴女に感謝します」
彼女の瞳にも、涙が溢れていた。
「良かった。幸せに・・幸せになって下さい」
私達は、二人で泣いていたの。
二人で泣いていたら、何だか可笑しくなって最後は二人で笑っていたわ。
私達が笑い始めたら、婆やさんとメイドがチェリーパイと、お茶を持ってきてくれたの。
「お茶会のやり直しよ」
カテリーナは、ご満悦にお茶を口に運ぶ。
私達も、お茶とチェリーパイを美味しく頂いたわ。
庭で取れたチェリーで作った、サクサクで甘酸っぱいパイは、婆やさんが焼いてくれたらしいの。
彼女が大切にされている事が解る。
洗練された焼き菓子、豪華な茶器も素敵よ。
でも、やはり美味しいお茶を頂くには、心を許せる相手が必要なのね。
アルバニアは、笑い会いながらパイを食べている二人を見詰める。
カテリーナ・フォン・カローラ公爵令嬢。
『恋に生き、恋の為に死ぬ令嬢』
彼女は側室として入宮して、どのループでも死んでいたわ。
彼を、彼を忘れる事ができなくて、自ら毒を飲み自殺してしまうの。
本来ならば貴族令嬢は、家の為に政略の駒として嫁ぐのが義務とされている。
家と家を結び付け、生家の利に繋げる。
それは、領地に居る領民の生活の安定に繋がる。
だけど、私達は三回も死んだ。
だから、4回目は幸せになりたい。
それに、カテリーナ嬢の恋人のキーナンさんの実家は、今は小さな商家だけど近い将来には、躍進するのよ。
未来を知る私が言うの!間違い無いわよ。
きっと、新しい物語が始まるのね。
「ねぇ、幽霊騒動が、私達だと何で解ったのかしら」
アルバニアは、パイに舌鼓を打ちながら尋ねる。
初対面の日を、思い出したのだ。
「今の、王都で王族に正面から喧嘩を売れる気力、財力を持つ家はそうそういないわ」
そうね、私達のやり方は正体を隠すより、証拠を残さないやり方だものね。
ちなみに、茶会での毒は自分で飲んで貰った。
一番、証拠が残らないと思ったの。
「そんな、わずかな家の中にテアルスティア家が残った。第二王子の婚約発表の場所で、貴女は主役のように輝いていた。だから貴女だと思ったのよ」
彼女は、初めて会った時に言ったの。
「幽霊騒動の手際を見て、感服しました。どうかお力を御貸し下さい」
彼女は、自分の感と強い願いで未来を掴んだのね。
アルバニアは、応接室の窓から春の草原を見る。
いつか、この草原に黒髪の子供達が走り回るかもしれない。
そんな事を想像してしまう事が、幸せにに思えるのだ。
馬車から降りる私は少し、緊張していたかもしれない。
でも、迎えてくれる使用人達と屋敷の雰囲気は暖かいものだった。
年配の女性が、彼女の居る部屋まで案内してくれたわ。
トントン・・・・。
「お嬢様、テアルスティア侯爵様とお連れの方でございます」
「どうぞ、入ってちょうだい」
とても明るい声が聞こえたの。
「ご機嫌よう」
彼女は、爽やかな風を浴びながら窓際に座っていたわ。
明るい日差が差し込む窓辺で、美しい黒髪が風になびいてる姿の彼女の傍らには、彼が付き添っているの。
柔らかい笑顔で迎えてくれた。
感情を表す事ができない。
彼女の笑顔を見たら、涙が溢れてしまった。
嬉しく、嬉しくて、彼女の恋が叶った事で胸がいっぱいになるのよ。
「さあ、入ってちょうだい」
私達は、応接室の椅子に座らせて貰った。
「婆や、お友達を歓迎したいのよ。チェリーパイを用意してくれたんでしょ。早く持ってきて頂戴い」
婆やさんは、彼女に優しく微笑むと部屋から出ていったの。
「ご免なさいね。使用人の人数が少ないのよ」
カテリーナは、テレるようにアルバニアに詫びる。
「べつに構いません。ただ・・・・」
そう、彼女は車イスに乗っていたのよ。
「そんな顔をしないで。貴女は、丁寧にリスクを教えてくれたわ。選んだのは、私達なのよ」
彼女の足には、軽い後遺症が残ってしまった。
「あのね、リハビリを頑張れば又歩けるようになるの。それに、赤ちゃんも産めるらしいわ」
カテリーナの恋人は、彼女を車イスから抱き上げて応接椅子に座らせる。
「それにね、余り症状が軽かったら嫁に出されたと思うのよ。このぐらいが丁度良かったのよ」
カテリーナは、正面に座るアルバニアの両手に自分の手を重ねる。
「御礼を言うのが、遅くなってしまったわ。ありがとう。心から貴女に感謝します」
彼女の瞳にも、涙が溢れていた。
「良かった。幸せに・・幸せになって下さい」
私達は、二人で泣いていたの。
二人で泣いていたら、何だか可笑しくなって最後は二人で笑っていたわ。
私達が笑い始めたら、婆やさんとメイドがチェリーパイと、お茶を持ってきてくれたの。
「お茶会のやり直しよ」
カテリーナは、ご満悦にお茶を口に運ぶ。
私達も、お茶とチェリーパイを美味しく頂いたわ。
庭で取れたチェリーで作った、サクサクで甘酸っぱいパイは、婆やさんが焼いてくれたらしいの。
彼女が大切にされている事が解る。
洗練された焼き菓子、豪華な茶器も素敵よ。
でも、やはり美味しいお茶を頂くには、心を許せる相手が必要なのね。
アルバニアは、笑い会いながらパイを食べている二人を見詰める。
カテリーナ・フォン・カローラ公爵令嬢。
『恋に生き、恋の為に死ぬ令嬢』
彼女は側室として入宮して、どのループでも死んでいたわ。
彼を、彼を忘れる事ができなくて、自ら毒を飲み自殺してしまうの。
本来ならば貴族令嬢は、家の為に政略の駒として嫁ぐのが義務とされている。
家と家を結び付け、生家の利に繋げる。
それは、領地に居る領民の生活の安定に繋がる。
だけど、私達は三回も死んだ。
だから、4回目は幸せになりたい。
それに、カテリーナ嬢の恋人のキーナンさんの実家は、今は小さな商家だけど近い将来には、躍進するのよ。
未来を知る私が言うの!間違い無いわよ。
きっと、新しい物語が始まるのね。
「ねぇ、幽霊騒動が、私達だと何で解ったのかしら」
アルバニアは、パイに舌鼓を打ちながら尋ねる。
初対面の日を、思い出したのだ。
「今の、王都で王族に正面から喧嘩を売れる気力、財力を持つ家はそうそういないわ」
そうね、私達のやり方は正体を隠すより、証拠を残さないやり方だものね。
ちなみに、茶会での毒は自分で飲んで貰った。
一番、証拠が残らないと思ったの。
「そんな、わずかな家の中にテアルスティア家が残った。第二王子の婚約発表の場所で、貴女は主役のように輝いていた。だから貴女だと思ったのよ」
彼女は、初めて会った時に言ったの。
「幽霊騒動の手際を見て、感服しました。どうかお力を御貸し下さい」
彼女は、自分の感と強い願いで未来を掴んだのね。
アルバニアは、応接室の窓から春の草原を見る。
いつか、この草原に黒髪の子供達が走り回るかもしれない。
そんな事を想像してしまう事が、幸せにに思えるのだ。
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「令嬢の願い」新連載を初めました。
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