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poison

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 お茶会とは貴族の夫人、令嬢が優雅に紅茶を飲みながら、菓子を摘まみながら会話を楽しむ。

とても優雅な雰囲気を想像すると思うわ。

確かに、中の良い友人同士ならば楽しむ事もできる。

でも、実際にその場は女の闘いの場になるの。

情報を集め、自分に有利な情報を発信する。

メディアが進んでいない分、重要な場所になるわ。



 そして、着ていくドレスも考えなくてはならない。

招待してくれた相手の家の家格、自分の身分。

勿論、季節感や流行も視野に入れるわ。


今日の日の為に私が用意したのは、薄紫と白のドレス。甘くなりすぎないように濃い紫色が配色されているの。

ベテランデザイナー、ミセス・ステアンに依頼したドレスよ。

彼女には、数着依頼したの。

王女殿下とサイラスとの結納の儀でも、彼女がデザインをしたドレスを着たわ。

淡いサーモンピンクに総レースで露出は控え目のドレスは御目出度い席にピッタリだった。

貴族の社交を長年に渡り見据えた、彼女ならではの作品ね。





「御仕度、整いました」

「ありがとう」
鏡に映る姿を確認するわ。

春の爽やかな気候に相応し淡い配色に、濃い紫色が映えて甘くなりすぎていない。

銀髪は、緩めにアップされ白い小花が散らされているの。

アメジストの髪飾りがとても映えている。


鏡の前でゆっくりと回る、最後の確認よ。

「とても気に入ったわ」
着付けをしてくれた彼女達に感謝しなくては。

貴族の者の中で、彼女達をいたわる者は少ないと思う。
だけどね、嬉しい気持ちを相手に伝える事は大事だと思うの。

信頼とは、日々のちょっとした配慮で築くと私は思う。


トントン。

「お姫様、仕度は終わったようだね」
ヴァジールが、アルバニアに満開の笑顔を向ける。

お兄様、駄目よ!

そう、数人いるメイド達が悶えているのだ。

心配だわ。今日は美しい夫人や令嬢がいる場所に行くのよ!もっと、抑えてもらわないと。

「アルバニア、とても綺麗だ。妖精かと思ったよ」

ヴァジールは、ビロードの宝石箱をアルバニアに渡す。

「お兄様?」
「アルバニアに似合うと思ったんだ」

ビロードの箱を開けてみたの。

「お兄様、これは先日、美術館で見かけた・・・」

ヴァジールは、アルバニアからビロードの宝石箱を受け取ると、納められていたネックレスをアルバニアに付ける。

「思った通りだ。良く似合う」

紫色の水晶が小さな薔薇の形に彫られ、幾つも繋がっている二連のネックレス。

「これは、古代の王が最愛の妃に送った物だよ」

「お兄様・・私・・嬉しいです」

とても嬉しいわ。でも、これ、古代の遺跡からの発掘品よね。

赤くなったり、青くなったりするアルバニアをヴァジールは、お決まりのように抱きしめるのだ。




「そろそろ行こう。お姫様、お手を」
ヴァジールは、アルバニアに手のひらを差し出す。

「はい」
アルバニアの指先がヴァジールの手の上に乗る。

二人は、頷あい馬車寄せに向かう。


これから向かうのは王城で開かれる茶会。

華やかな仮面をかぶり、魑魅魍魎を蹴散らすのだ。

















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