侯爵家の当主になります~王族に仕返しするよ~

Mona

文字の大きさ
上 下
59 / 85
poison

プロローグ

しおりを挟む
 執務室へと移動。
 冒険者ギルドが肩代わりしている俺の借金をハイネ領主が全額支払うという念書を書いてもらい、書類を作成。

「これでよいか?」

 ヘイゼルの言葉に俺は黙って頷く。
 金額は一切、言っていない。
 むしろ、ヘイゼルが金額に関しては聞いて来なかったので俺は黙っている。

「それじゃ俺は帰るので、また何かあったら依頼してください」
「分かった。君には世話になった」
「いえいえ。こちらこそ――」

 数十億もの、俺の借金を肩代わりしてくれるとは、俺こそ大変に世話になった。
 頑張って返済して欲しいものだ。
 俺は、借用書を無くさないようにアイテムボックスに入れつつ、部屋を後にした。

「マスター、話は終わったのか?」
「ああ、エミリアも疲れただろう?」
「――いえ。私は……何の役にも……」
 
 今回、水竜の討伐や皆月茜の件といい、エミリアは殆ど戦闘に参加できていない。
 その事を気に病んでいるのかも知れない。

「大丈夫だ。水竜も元・勇者であるサキュバスクィーンも、それぞれ次元の違う強さの化物だったからな。普通の冒険者では、誰も戦いについてこられないだろう」
「――でも、私……。完全に足手纏いに……」
「なら、妾が鍛えてやってもよいぞ? 亜人を鍛えるのは得意であるからな」
「本当ですか?」
「うむ。マスターだと次元が違いすぎるからの。妾くらいが丁度いいじゃろうて」
「それでは、リオンさん。お願いします」
「うむ」

 どうやら、リオンが空気を読んでエミリアを鍛えることにしてくれたようだ。
 なら、あとはする事は一つだけだな。

「エミリア、リオン」
「はい」
「マスター、なんじゃ?」
「まずは急いでハイネ領を出るぞ」
「――え?」

 エミリアが首を傾げるが、いまはハイネ城に居るので詳しく説明する時間が勿体ないというかサッサとトンずらしたい。

「とりあえず、宿に戻るぞ」
「分かりました」

 俺が、この場で事情を説明出来ない事に気がついたのか、エミリアは頷いてきた。
 すぐに用意された馬車に乗り、宿まで戻ったあとは、支払いを済ませて宿を引き払う。

 そして――、サキュバスに踏み荒らされた市場で水や食料を買いこんだあと城門へと向かう。

「もう行くのか?」

 辿り着いた城門で俺に話しかけてきたのは老兵のセイガル。

「ああ、リーン王国の王都まで行かないといけないからな。仕事が詰まっているから、ゆっくりしている時間がな……」
「それなら、今度、暇な時に立ち寄ってくれ。若き英雄に色々と聞きたいからな」
「時間があったならな」

 俺は、セイガルの言葉に肩を竦める。
 そして――、開いた城門からハイネの街を出た。

しおりを挟む
「令嬢の願い」新連載を初めました。
感想 87

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

さようなら、お別れしましょう

椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。  妻に新しいも古いもありますか?  愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?  私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。  ――つまり、別居。 夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。  ――あなたにお礼を言いますわ。 【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる! ※他サイトにも掲載しております。 ※表紙はお借りしたものです。

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です

ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」 「では、契約結婚といたしましょう」 そうして今の夫と結婚したシドローネ。 夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。 彼には愛するひとがいる。 それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?

【書籍化・取り下げ予定】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない

曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが── 「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」 戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。 そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……? ──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。 ★小説家になろうさまでも公開中

処理中です...