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幕間 マリアの秘密
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私の人生は、下町から始まります。母は男爵家の元メイドです。
母は、父に遊ばれて私を身籠りました。
良くある話しだと思います。
男爵夫人は夫の浮気が許せなかったらしく、妊娠している母を屋敷から追い出したそうです。
まあ、良くある話しです。
下町で、女で1人私を産み育て上げたのです。
無理をしたのでしょう。私が10才の春に倒れて、その年の冬を越える事無く亡くなりました。
私の事情を知る方が父に連絡を入れたので、父は渋々私を引き取ってくれました。
そう、私に転記が起こったのは時期的にアルバニア様が落馬なさった頃だと思います。
『バコン!!物理的衝撃はいきなりやってきたのです』
男爵家での私の立場は、メイド以下の下女でした。
主な仕事は、水回りの掃除と野菜の皮剥き。
お陰様で、じゃがいも、人参、大根・・・・。
皮剥きなら負け知らずでしょう。
申し訳有りません、話しを戻します。
私は、物理的障害を受け三日間生死をさ迷いました。
でも、怪我の巧妙とでも言うのでしょうか。
私は、以前の私の記憶を取り戻したのです。
幾度に渡る悲劇。
あの方の元に直ぐに行きたかった。
ですが、只の平民の様な者。訪ねたとしても会うことも叶わず、追い立てられるのは確実なのです。
私は迷いました。アルバニア様に会う切っ掛けは後継のサイラス様の目に止まる事なのです。
王女殿下とサイラス様が婚約なさった日に、過去では王宮舞踏会が開かれていました。
その日に私は、お見合いも兼ねて舞踏会に連れて行かれるのです。
過去の私は、結婚相手に会う事になる事を知らされずに出席をしていました。
相手は、年の離れた禿げチビッ子オヤジです。
確か、ハゲ・チャービン卿です。
初めて知らされた、結婚相手に衝撃を受けました。
同時に、初めて着たドレスに夢心地になっていた自分に嫌気が込み上げて・・・・。
悔しかったのです。
私は馴れないドレスに踵の高い靴に構わず、その場を逃げ去りました。
舞踏会の人垣を掻き分け進んでしまったせいで、ご令嬢にぶつかり、相手のドレスを汚してしまったのです。
騒ぎになり掛ける時に救い出してくれたのがサイラス様でした。
私は、婚約者がいる方と逢瀬を重ねました。只、見詰め会うだけの逢瀬でも・・・・。
いいえ、私達が行けなかったのです。
それでも私にとっては、生涯で只の一度の恋だったのです。
サイラス様から男爵家に取りなしが有り、私の縁談も破談になり、男爵家でも令嬢として扱われる様になりました。
今、思うと父には打算が有ったのでしょう。
そう、あの日が来るまで私達は庭でお茶飲みながら見詰め合う関係だったのです。
母は、父に遊ばれて私を身籠りました。
良くある話しだと思います。
男爵夫人は夫の浮気が許せなかったらしく、妊娠している母を屋敷から追い出したそうです。
まあ、良くある話しです。
下町で、女で1人私を産み育て上げたのです。
無理をしたのでしょう。私が10才の春に倒れて、その年の冬を越える事無く亡くなりました。
私の事情を知る方が父に連絡を入れたので、父は渋々私を引き取ってくれました。
そう、私に転記が起こったのは時期的にアルバニア様が落馬なさった頃だと思います。
『バコン!!物理的衝撃はいきなりやってきたのです』
男爵家での私の立場は、メイド以下の下女でした。
主な仕事は、水回りの掃除と野菜の皮剥き。
お陰様で、じゃがいも、人参、大根・・・・。
皮剥きなら負け知らずでしょう。
申し訳有りません、話しを戻します。
私は、物理的障害を受け三日間生死をさ迷いました。
でも、怪我の巧妙とでも言うのでしょうか。
私は、以前の私の記憶を取り戻したのです。
幾度に渡る悲劇。
あの方の元に直ぐに行きたかった。
ですが、只の平民の様な者。訪ねたとしても会うことも叶わず、追い立てられるのは確実なのです。
私は迷いました。アルバニア様に会う切っ掛けは後継のサイラス様の目に止まる事なのです。
王女殿下とサイラス様が婚約なさった日に、過去では王宮舞踏会が開かれていました。
その日に私は、お見合いも兼ねて舞踏会に連れて行かれるのです。
過去の私は、結婚相手に会う事になる事を知らされずに出席をしていました。
相手は、年の離れた禿げチビッ子オヤジです。
確か、ハゲ・チャービン卿です。
初めて知らされた、結婚相手に衝撃を受けました。
同時に、初めて着たドレスに夢心地になっていた自分に嫌気が込み上げて・・・・。
悔しかったのです。
私は馴れないドレスに踵の高い靴に構わず、その場を逃げ去りました。
舞踏会の人垣を掻き分け進んでしまったせいで、ご令嬢にぶつかり、相手のドレスを汚してしまったのです。
騒ぎになり掛ける時に救い出してくれたのがサイラス様でした。
私は、婚約者がいる方と逢瀬を重ねました。只、見詰め会うだけの逢瀬でも・・・・。
いいえ、私達が行けなかったのです。
それでも私にとっては、生涯で只の一度の恋だったのです。
サイラス様から男爵家に取りなしが有り、私の縁談も破談になり、男爵家でも令嬢として扱われる様になりました。
今、思うと父には打算が有ったのでしょう。
そう、あの日が来るまで私達は庭でお茶飲みながら見詰め合う関係だったのです。
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