侯爵家の当主になります~王族に仕返しするよ~

Mona

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笑う当主と踊る幽霊

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 カラ~ン、コロ~ン、王都の処刑場が開かれる合図の鐘が鳴るわ。


ギルバートも、処刑台に立つのね。

「アルバニア、見に行きたかったかい」

お兄様の問いに、首を横に振る。


 もし、彼が貴族の立場で処刑されるなら非公開の場所で、ギロチンか毒杯で処刑されたのでしょうね。


今の彼の立場は平民の為、公開処刑となるわ。

月に一度だけ、公開処刑が観衆の元で施行されるの。

処刑がある日の処刑場には、沢山の屋台等が出店される。

さながら祭りの様な空気になるのよ。

祭りの様な騒ぎの中を、彼等は引き回され処刑台に登るの。


処刑台に上がった彼等は、胡座を強制され縄で固定される。


固定された彼等の回りを、斧を持った数人の処刑人が賑やかな音楽に載り、練り歩く。

結構シュールな感じよね。

だって、処刑人の斧からは血が滴り落ちているんですもの。


《ザクザク!》シュワッー。

処刑される彼等は、自分の処刑される順番は解らないの。

所詮、処刑人の気分しだいなのだから。


 この世界の連絡手段は、私が日本人と生きていた時に比べると格段に劣っている。

だからこそ、処刑を見世物にし罪に対する恐怖を教える。

同時に、不満が多く娯楽が少ない社会の捌け口になっているわ。



 処刑を利用しなくても大丈夫な社会を築きたい。
直ぐには無理でもね。

見に余る志しかもしれない。

でも、少しの教育と夢だけでも社会は変わる筈。




 カラ~ン、コロ~ン。

王都に、処刑が終わった合図の鐘の音が響く。

人々の熱狂の中で彼は、処刑台の露として消えたのでしょう。

殿下とオーロラは親しい人の死をどのように見送ったのかしら。




 『月の夜の物語』のカーテンコールは、ギルバートの処刑を告げる鐘の音で終わりを告げたわ。

大円団、拍手喝采になったかしら。









 考え事をして、冷えきった指先に温もりが重ねられた。

「お兄様」

私が成人する17才までは『お兄様』でいてくれる。
お兄様から提案が会ったの。

私が17才になったら名前で呼ぶのよ。

『ヴァジール、貴方が・・・・です』



 「アルバニア様ヴァジール様、お茶を御用意しました」

マリアが、私の好きな紅茶を用意してくれた。

「それにしても、美しいカップですね」
マリアは、ため息を付く。

ええ、そうでしょうとも。

この肌触り、繊細な絵付け。

ある場所で見つけた、副産物。


「マリアが嫁入りする時には、劣らない物を持たせてあげるわ」

マリアは、静かに首を振る。

それは、無邪気な当主に対する呆れなのか、何かしらの信念があるかは・・・・まだ、秘密だから。






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