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笑う当主と踊る幽霊

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 ヴァジールとキースが、馬車から降りた頃。

 ここは、王太子の執務室。

「陛下の具合は、いかがですか?」

新宰相である、ウイルス伯が王太子に訊ねる。

「ただの高血圧だ。若い娘相手に怒気などぶつけようなど、年を考えて貰いたい。ウイルス伯、今回の一連の不祥事どう思う」


「一言で言えば、全てはテアルスティア侯爵家に繋がるでしょう」

「あの若い当主か」

「はい、当主の後ろにはヴァジール・フォン・テアルスティアが控えています。しかし、有る意味、彼が全ての立案者にしては、生温いのです」

王太子の顔が歪む。
彼は、ヴァジールとは学園で同級生だったのだ。

被害者の1人。


 トントン・・・・「失礼します。兄上、お呼びですか」

「ああ、呼んだ」

王太子が、第二王子に冷ややかに話し掛ける。

「あれの様子を見に行った様だな」

「はい、刑の方はどうなるのですか?まさか・・・・」

「知りたいのか?知りたいだろうな。聞いた話では、お前の小性も現場にいたらしいではないか」

「申し訳有りません」

「テアルスティア侯爵家の従者が、汚ならしい小性も紛れ混んでいた。そのように証言したらしい」

「ですが、きっとアルバニアが絡んでいるに決まっています。落ち着いて考えました。タイミングが良すぎるのです」

「証明する事はできるのか」


「私から申し上げます」
ウイルス宰相が喋り始める。

「今、一番の問題は領地貴族の押さえが無いことです。今迄はテアルスティア前侯爵が警戒しておりましたが、今の当主は放棄しております」

「一連の事件には、テアルスティア侯爵家が絡んでいるのでしょう。しかし、証拠は有りません」

「最後に、テアルスティア現当主の怒りの矛先をどう納めるか。あの方は幼少より王子妃教育で束縛されていましたからね」

「忘れてはいけません。テアルスティア当主への教育は長い時間を掛け、王室の贅沢な資金を元に行われています。普通の少女ではないのです」


 宰相と、第二王子が退室した部屋の中から王太子は城下町の灯りを見詰める。

『普通の少女ではないのです』

王太子の胸に、宰相の言葉が浮かぶ。

昼間、庭園を案内した少女は普通の少女だった。

自分に驚きアタフタとする仕草。


 数年がたち少女らしさが抜けた頃、どの様に微笑むのか見てみたい。


 「殿下、大変です」従者が駆け寄る。

昨夜の騒ぎの折りに、王妃殿下の元から・・・・が紛失したようです。

「王妃は何故そのようなものを。しかも紛失するなど」

『普通の少女では無い』

「・・・・くっ」

宰相の言葉が、再び浮かぶ。








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