侯爵家の当主になります～王族に仕返しするよ～

笑う当主と踊る幽霊

10ー5

　「フフンフフ♪フフンフフ♪」幽霊が鼻歌を歌いながらクルクルと登場する。
「ヘイッー！」最後のキメボーズまで・・・決めているようだ。

　彼女は貢ぎ物を回収しに現れたのだ。

「キースさん、貢ぎ物の回収に行っていいですか？」

「おう、ありがたく頂いてこい」

これは出動前の会話だ。

少女は、誰もいないだろう城の廊下を見渡す。
ドレスを着て、夜の城の廊下歩くなんて思いもしなかった人生の展開だ。

もし、あの時、炎の中からキースさんが助けてくれなかったら。

「私、死んでいたんだよね」
誰もいない廊下が、薄気味悪く感じてしまう。

「今日もありがたく頂きます」
少女は貢ぎ物の前で、礼儀正しく手を合わせる。

カサカサ・・・カサカサ。
「可愛！」

「気に入ってくれて嬉しいよ」
少女は、急いで振り返る。
「女の子は、ウサギのぬいぐるみが好きって聞いたんだ」

「お兄さん！」
少女は、ジェラールに微笑む。
「いつも、ありがとう」
少女は、ゆっくりとスカートをめくる。

「靴、ありがとうございます」

ジェラールが、一連の動作でドキドキしてしまったのは内緒だ。

「今日は、おしゃべり何だね」

「はい、有難い事に成仏する事が決まりました」

「君は幽霊ではない。アリス、君の名前だ」

「お兄さん！」

「君はリリィ・スチュワートさんの妹さんだね」

　ジェラールは、自分が怪しい人物でない事を必死に少女に語り、すぐに逃げようと説得を始めるのだ。










　ジェラールが必死に少女を説得している頃。


　「もう、アルバニア達はまだなの！」
城の応接室で、王女は怒りの真っ最中だ。

「そのうち、いらっしゃいますよ」
相変わらず、やる気の無い王女付きの女官。

2人が何時もの様に話していると。

トントン、トントン。

「さっさと入りなさいよ！」

「失礼する」

「あら、アルフォンスどうしたの」
「此方に、オーロラは居ないか！」
「居ないけど・・・もしかし後宮から抜け出したの？」
「そうらしい」
「不味くない？」
「どうやら、ギルバートと一緒らしいんだ。なにを考えているんだ！！」
第二王子は怒りで怒鳴りたくなる。

カチャリ

「まあ皆様、御機嫌よう。すいません、すっかり遅くなってしまいました」

「本当に遅いわよ！こんな時間に何のよう」

「あら、王子殿下もいらしゃいましたのね」
アルバニアは可憐に微笑む。
「いや、この様な時間に急用か」
「ええ、王女殿下に是非お見せしたくて」
アルバニアは、ビロードの箱の中身を2人に見せる。

「此れを、私に・・・・素晴らしいわ」
「是非、明日の結納の儀に付けて貰いたくて・・・お持ちしましたのよ」
「確かに、見事な宝石だ」

「デザイナーも連れて参りました。明日のドレスもかえなくては。誰か、王女殿下の手伝いをしなさい」

王女が支度の為、別室に移ると。

「王子殿下、今日の城は何だか騒々しいですわね」
アルバニアは朗らかに、王子に話し掛ける。
「皆様、幽霊を追いかけているみたいですわ」
「アルバ・・・・テアルスティア侯爵、そなたは、その様に笑うのだな」
「まあ、私は何も変わっておりませんわ」
王子に映るアルバニアの笑顔は、新鮮な輝きに満ちていた。

「アルバニア」ヴァジールがアルバニアに話し掛ける。
「お兄様」信頼と甘えが混じる少女の声


　アルバニアの横に並ぶ男に、王子は嫉妬を感じるのだ。
アルバニアの細い腰に添えられる男の手。
名前を呼ぶ声、何もかもが不快でしかない。


「ねえ！どうかしら」
王女が支度を整え戻ってくる。

「ドレスも、問題なさそうですですね」

王女は、ドレスを翻してクルリと回る。

アルバニアが持って来たのは、アメジストを中心にサファイアとダイヤを散りばめた首飾り。

使いの者に、託せる様な品でない事は明らかな品物だ。

ドレスの色は・・・・。