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笑う当主と踊る幽霊
8 ギルバートside『貴方は優しい人、他人を思いやれる人』
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宰相家のギルバートはオーロラへの面会の許可を王子から貰い面会所に急ぐ。
しかし、人々からの好機の目は確実に増えて行く。
「王子には愛人がいたが、オーロラと婚約する為に殺害した」
「本来の婚約者はドレスを作成したデザイナーで、オーロラがデザイナーを殺害し、ドレスを奪い現れた」
「アルバニア様はデザイナーと王子の恋を応援して身を引いたのに、オーロラが出張ってきた」
「オーロラが殺した・・・・」
「王子とオーロラが共謀して・・・・」
その様な噂話で溢れているのだ。ギルバートは怒鳴りたくなる。
違う!あの2人は運命の恋人なんだ!デザイナーを殺したのは・・・・。
証拠は処分した筈だ。日記を持ち去った妹も・・。
雇った者達からは、妹は骨も残らないほどに処分したと報告をうけた。
あの女め、今更幽霊になるなんて。
いや、幽霊とは限らない。もしかしたら、知ってる者が。
それが真実なら、真相を知ってる者がいるのか?
どちらにしても破滅を待つようなものだ。
ならば・・・・。
ギルバートは後宮の入り口に有る小さな宮を見上げる。
小さな宮は、城の表と後宮を唯一繋ぐ場所だ。
後宮の女性と第三者が会える場所は此処のみなのだ。
「ギルバート、来てくれて嬉しいよ。アルフォンスもそうそう来てくれないんだ」
「後宮は男子禁制だからね、なかなか来れないんだ。嫌な思いをしていないかい」
「・・・・皆、意地悪だ!僕の顔を見てこそこそこそ話すんだ」
オーロラは悔しげに俯く。
「王子妃教育の気晴らしに、剣の稽古をしてもいいじゃないか!」
「オーロラ・・・・第二王子殿下が王太子の座を得るまでだから頑張ってくれ」
「アルフォンスが、世継ぎの君になればギルバートが宰相になるんだね」
「ああ、そうだよ。オーロラは未来の王妃様だ。オーロラと殿下は運命の恋人同士。王と王妃になるのが相応しいんだ」
『ギルバートは優しい人。他人を思いやれる人』
「オーロラ、君を幸せにして見せる」
「ギルバート、僕達で幽霊退治をしよう。皆をあっと言わせてやるんだ」
「そうだね。悪者は退治しなくては」
ギルバート・フォン・クロイスとは、神経質であり疑心暗鬼の塊。
クロイス家は宮廷貴族でありながら、侯爵の爵位を賜り宰相という重責を任じられる名門の家柄である。
彼が第二王子の側近に選ばれたのは、秀才と認められた頭脳故だ。
彼自体は、腰までの白金の髪、銀縁の細いフレームの眼鏡を掛ける瞳は知的な印象をあたえるアイスグレー。
恵まれた家柄、容姿、頭脳。彼がそこまで卑屈になる理由が過去の私は理解できなかった。
「アルバニア、いよいよだね」
「私、1人ならできなかった。皆に感謝しなくては」
「そんな心配はいらない。当主を嵌めよとした者に制裁をするのは当たり前だからね」
「お兄様、キースには」
「大丈夫、いくつかの回収する物のリストは渡してあるから」
ヴァジールは、長椅子に座るアルバニアの隣に座る。
「約束しなさい、危ない事はしないと。何らかで危険を感じたら引くんだよ」
「約束します、危ない事はしません」
彼を卑屈にさせていたのは、彼の出生が関係していたのかも知れない。
彼の実母は宰相夫人となっているが、生母は男爵家の令嬢だったのだ。
生母の男爵令嬢は、彼の幼い頃に亡くなり宰相家に実子として引き取られている。
学園で出会った男爵令嬢であるオーロラを幸せにする事で自分のコンプレックスを克服しようとしたのかも知れない。
報告書によればギルバートが、一番、親身になりオーロラの世話をしていたとの事。
『ギルバートは優しい人。他人を思いやれる人』
オーロラはギルバートの人柄を評していたらしい。
彼は生母に『優しい子』と言って貰いたかったのかも知れない。
「アルバニア、眉間に皺が・・・・」
「お兄様は、私の母を覚えていますか」
「とても綺麗な人だったよ。そして優しい人だった」
「クックッ・・・・もしかしたら、お兄様の初恋の相手ですか?」
「私の初恋は・・・・」
「初恋は?」コテント、アルバニアが首を傾ける。
「・・・・可愛過ぎる」
大事の前だが、緊張感がない2人なのだ。
しかし、人々からの好機の目は確実に増えて行く。
「王子には愛人がいたが、オーロラと婚約する為に殺害した」
「本来の婚約者はドレスを作成したデザイナーで、オーロラがデザイナーを殺害し、ドレスを奪い現れた」
「アルバニア様はデザイナーと王子の恋を応援して身を引いたのに、オーロラが出張ってきた」
「オーロラが殺した・・・・」
「王子とオーロラが共謀して・・・・」
その様な噂話で溢れているのだ。ギルバートは怒鳴りたくなる。
違う!あの2人は運命の恋人なんだ!デザイナーを殺したのは・・・・。
証拠は処分した筈だ。日記を持ち去った妹も・・。
雇った者達からは、妹は骨も残らないほどに処分したと報告をうけた。
あの女め、今更幽霊になるなんて。
いや、幽霊とは限らない。もしかしたら、知ってる者が。
それが真実なら、真相を知ってる者がいるのか?
どちらにしても破滅を待つようなものだ。
ならば・・・・。
ギルバートは後宮の入り口に有る小さな宮を見上げる。
小さな宮は、城の表と後宮を唯一繋ぐ場所だ。
後宮の女性と第三者が会える場所は此処のみなのだ。
「ギルバート、来てくれて嬉しいよ。アルフォンスもそうそう来てくれないんだ」
「後宮は男子禁制だからね、なかなか来れないんだ。嫌な思いをしていないかい」
「・・・・皆、意地悪だ!僕の顔を見てこそこそこそ話すんだ」
オーロラは悔しげに俯く。
「王子妃教育の気晴らしに、剣の稽古をしてもいいじゃないか!」
「オーロラ・・・・第二王子殿下が王太子の座を得るまでだから頑張ってくれ」
「アルフォンスが、世継ぎの君になればギルバートが宰相になるんだね」
「ああ、そうだよ。オーロラは未来の王妃様だ。オーロラと殿下は運命の恋人同士。王と王妃になるのが相応しいんだ」
『ギルバートは優しい人。他人を思いやれる人』
「オーロラ、君を幸せにして見せる」
「ギルバート、僕達で幽霊退治をしよう。皆をあっと言わせてやるんだ」
「そうだね。悪者は退治しなくては」
ギルバート・フォン・クロイスとは、神経質であり疑心暗鬼の塊。
クロイス家は宮廷貴族でありながら、侯爵の爵位を賜り宰相という重責を任じられる名門の家柄である。
彼が第二王子の側近に選ばれたのは、秀才と認められた頭脳故だ。
彼自体は、腰までの白金の髪、銀縁の細いフレームの眼鏡を掛ける瞳は知的な印象をあたえるアイスグレー。
恵まれた家柄、容姿、頭脳。彼がそこまで卑屈になる理由が過去の私は理解できなかった。
「アルバニア、いよいよだね」
「私、1人ならできなかった。皆に感謝しなくては」
「そんな心配はいらない。当主を嵌めよとした者に制裁をするのは当たり前だからね」
「お兄様、キースには」
「大丈夫、いくつかの回収する物のリストは渡してあるから」
ヴァジールは、長椅子に座るアルバニアの隣に座る。
「約束しなさい、危ない事はしないと。何らかで危険を感じたら引くんだよ」
「約束します、危ない事はしません」
彼を卑屈にさせていたのは、彼の出生が関係していたのかも知れない。
彼の実母は宰相夫人となっているが、生母は男爵家の令嬢だったのだ。
生母の男爵令嬢は、彼の幼い頃に亡くなり宰相家に実子として引き取られている。
学園で出会った男爵令嬢であるオーロラを幸せにする事で自分のコンプレックスを克服しようとしたのかも知れない。
報告書によればギルバートが、一番、親身になりオーロラの世話をしていたとの事。
『ギルバートは優しい人。他人を思いやれる人』
オーロラはギルバートの人柄を評していたらしい。
彼は生母に『優しい子』と言って貰いたかったのかも知れない。
「アルバニア、眉間に皺が・・・・」
「お兄様は、私の母を覚えていますか」
「とても綺麗な人だったよ。そして優しい人だった」
「クックッ・・・・もしかしたら、お兄様の初恋の相手ですか?」
「私の初恋は・・・・」
「初恋は?」コテント、アルバニアが首を傾ける。
「・・・・可愛過ぎる」
大事の前だが、緊張感がない2人なのだ。
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