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笑う当主と踊る幽霊

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 「ねぇ、昨日のアルバニア様のドレス・・・・」
「素敵だったわ」
「それでね・・・・ギルバート様がね・・・・」
「知ってるわ・・・・クスクス」

「ねぇ、宰相家のギルバート様よ」
「やだ~!本気なの」
「クスクス・・・・」

「何なんだ、この視線は!」ギルバートは眉をしかめる。

 今迄も注目を集める事は会っても、今、自分に向けられている視線は、決して好意てきなものでは無いのだ。

「ねぇ、聞いた?」
「知ってるわ」

令嬢達の声が鬱陶しくて仕方がない。

ギルバートは銀縁のメガネをかけ直す仕草をして気を紛らわす。

父の宰相からは、謹慎を命じられていたが彼はどうしても第二王子殿下に会わなければならなかった。

この状況で彼に見切りを付けられる分けには、いかないのだ。

それに、彼女にも会いたいと思う自分がいる。
オーロラは寂しくしてるはずだ。
オーロラも自分に会いたいはず。

「ねぇ、貴女は知ってる?」
「知ってるわよ」

「水色のドレスを着た幽霊・・・・」

ギルバートは令嬢達の会話に割り込む。
「その話を教えてくれ!」








 彼は苛つく気持ちを抑え第二王子の自室に向かっていた。

もしかしたら会えない、そんな事を思っていたが最悪は免れたみたいだ。


「殿下、昨日のお詫びにまいりました」
王子は見ている書類から目を離そうとはしない。

「俺がどれ程の恥をかいたか解っているのか」
そう、彼は、捨てた婚約内定者に詫びを請うような真似を強いられたのだ。
しかも、大勢の貴族達が見守る中で。

「申し訳有りません、しかしアルバニアが」
ギルバートの過ちは、テアルスティア家の力を甘く見ている事。
これは、彼が力の有る宮廷貴族家の出身で、三男という緩い立場が思わせる過ちなのだ。

「黙れ、アルバニアは正式なテアルスティア家の当主だ。お前には解らないのか」
第二王子は面倒そうに、見ていた書類を机の上に投げ捨てる。

「俺達はアルバニアに情けを掛けて貰い、あの場の非礼を許されたんだ」


ギルバートの顔が歪む。

「お前は、侯爵家に楯突いたんだ。愚かなお前に教えてやろう」

王子は、ギルバートに蔑みの目を向ける。
「お前の失言は主である俺に、又は貴様の生家である宰相家に向けられる。宰相が宮廷貴族家と領地貴族家の関係緩和にどれ程、気を使っていたか」

王子は額に手を当てる。
「婚約発表の件で、王家とテアルスティアとの間柄に不調和音は見受けられたのは事実だが決定的な亀裂ではなかった。しかし厄介な噂が出始めてる」

王子はギルバートを見つめる。
「婚約者を変えたのは宮廷貴族達が先導し、宰相家が指示を出した。昨日のお前のアルバニアに対する態度が決定打になっているみたいだ」

王子は机に触れ付し、髪をかきむしる。

こんな大事になるなんて、彼は思って無かったのだ。
小さな火種が間違って暴発してしまったら。

領地貴族の中には、強力な領地軍を有する家も存在する。

オーロラに夢中になっていた当時の彼は脳内に花畑が存在し、おまけに蝶々も飛んでいた。

彼は現在、通常脳に戻りつつ有る。

それが、新たなる苦悩を生むのだろう。


ギルバートの目線が王子の机を見据えた。
「殿下、これは見合いの釣書ではありませんか?」

なにか問題でもあるのか?
通常脳に戻りつつある王子がギルバートを不思議そうに見る。
「側室ですよね」

「いや、まだ決めてない」
王子は、決まりの悪そうな顔でギルバートを見る。

ギルバートは、ぞんざいに釣書を閲覧し始めるのだ。

公爵令嬢は理由有り、伯爵家、子爵家は極普通の令嬢だ。

「男爵家の娘は居ませんね」
王子は何気に毒気をぬかれた。
問うのはそこなのか?そんな感じだ。

「これ以上、下位の娘は要らない」

「そうですよね。2人は運命で結ばれているんですから」


 王子は後に、このちぐはぐな会話をもう少し考えてみていればと後悔した。

「殿下、オーロラへの面会の許可を頂けませんか」

「わかった、短時間だ。あれも謹慎中の身だからな」

ギルバートは再び、アルバニアへの怒りを隠す事なく頷のだ。

全てがアルバニアのせいなのだ。









 城で、王子とギルバートが会っている頃。太陽は天頂でニコニコてらしている。

そう、幽霊達が起きる時間だ!

「うわっ!眩し」少女は腕を伸ばしながら窓際に近づき空を見上げる。

「お姉ちゃん、今日も頑張るよ!」

幽霊が決意を新たにする。

内容は不明。


そして、幽霊少女は枕元に置かれている可愛らしい靴を見つめる。

「裸足で走るのは危ない」

以前、菓子を恵んでくれたオッサン?青年が新たに恵んでくれたのだ。

「可愛」少女は靴を大切に抱きしめる。

お兄さんが靴を選らんでいる姿を想像して微笑んでしまうのだ。






 


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