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笑う当主と踊る幽霊

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 侯爵家の小さな食堂には円卓が置かれている。家族の距離が離れてしまわないように。
そんな願いが込められている円卓に上がる朝食は、使用人達の主を思いやる気持ちが、込められている。

 そしてここは、テアルスティア侯爵家の食堂であると同時に、作戦を考える円卓の間でもあるのだ。

今日から円卓の間には、新しい戦士が加わるの。

彼女はキャサリン、元王宮の女官。
本日をもって私の秘書になってもらった。

何て、ラッキーなんだ。
人目が無かったら、クルクル踊ってしまう。

彼女の事は、一度目、二度目のループで知っているの。仕えて貰った事は無いわ。
でも、優秀な人間は注目を集めるものよ。

とても優秀な女性。
少しだけ頑な所があるけど、それが彼女の魅力。
背筋が綺麗に伸びてる女性、そんな印象があるの。
勿論、心配はあった。
テアルスティア侯爵家も綺麗事だけで済ます事が出来ない、そんな案件はある。

だから、時間を掛けて彼女と話した。

元だけど優秀な王宮女官だけあって、貴族家の裏事情も解っていてくれたの。

「どこの貴族家でも事情は抱えているものです。難問を主と共に乗り越え、主家が栄えるように歩む、そんな人生を望みます」

主家が抱える闇も共に抱え、それでも闇が強くなりり過ぎないように主と共に歩む。

彼女なりの決意を返してくれたの。

 朝食を終え、それぞれから問題定義が始まるわ。
まずは、ヴァジールお兄様からね。


執事とマリアが給仕してくれる紅茶を飲みながら知恵を絞るのよ。

お兄様からの議題は、ポンプ式井戸の利権。

ポンプ式井戸は、今、売れまくっているらしい。
その為か、国の事業とするように圧力が掛かかり始めてるらしい。

圧力とはテアルスティア家に公共の為に利権を捨て欲しい、そんな内容だ。

「お兄様、開発に伴った費用とある程度の利益は確保できましたか?」

「充分な利益は出したよ」

「そろそろ引き際ですか?」

「そうだね、元々、真似をしやすい技術だからね」

「もう少しだけ時間を稼いで貰えませんか」

今の状態は予想されていた事態だ。
こういった万人の為の公共事業は公の機関に渡してしまっても良いと思っている。

只、どの団体に渡すかが問題になる。

国はダメだ、外交の切り札にしかねない。
国を越える団体が好ましい。
ひとつ残す事なく、慈悲の心で広めて貰いたい。

過去のループで出会った彼に渡したい。

孤独な彼の、盾と剣にして貰う事を望んでしまう。

私が、円卓を見回すと彼等と視線が合う。
そうする事で1人では無い事を実感し、相談をすることにした。



才能に溢れるヴァジールお兄様。

貴族の力関係を把握し、冷静に物事を見る事が出来るキャサリン。

暗躍と諜報活動に秀でるキース。
彼の情報は生命線になる。

私の、身体と心の平穏を生き甲斐にしてくれてるマリア。

屋敷の采配を安心て任せる事が出来る執事。

 お父様が、心配そうに見ているので微笑んでしまう。
大丈夫ですよ、貴方の娘なんですから。

お父様は、王室や派閥関連の防波堤になってくれてる。
無爵なのに大丈夫なのか、心配になってしまうの。
我が家には、爵位が余っているので渡そうとした所、断られてしまった。
どうやら彼なりのケジメらしい。

皆、力を貸してくれる様だ。

さあ!1日が始まるよ。

円卓の戦士達が出陣する時間だ。

私達は、それぞれの戦場に向かう事にした。









 王都のコロッセオ・・・・私が出陣した戦場だ。

侯爵家から乗って来た馬車を降りると、辺りの人々が私達に注目している。

私は、重装備を身に付けてヴァジールお兄様と、秘書のキャサリンを共にコロッセオの正面に佇む。




 誤解しないで貰いたい、アルバニアはヴァジールにエスコートされ、ドレスを着てコロッセオでの武術大会の観戦に来たのだ。
決して、戦いに来た・・・・いやいや、戦いに来たのは間違いでは無いのだか。
キャサリンは秘書なのでアルバニアに付き添う事は当たり前である。



「お兄様、疑わしくありませんか?」
これは・・・・。
だって、皆、見てるよ。

「アルバニア、とても似合っているよ」
お兄様、甘過ぎます。


「当主様、今日の様な催しに着るドレスは皆遊び心を楽しみます。それに良く似合っていらっしゃいます」
キャサリン、励ましをありがとう。


まあ、仕方がない。

私は、ヴァジールお兄様とキャサリンを共にコロッセオの門を潜る。

頑張るわよ!あの子ばかり、働かせるなんて出来ないわ。




















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