侯爵家の当主になります~王族に仕返しするよ~

Mona

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女侯爵になります。

王太子side

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 アルバニアとヴァジールが楽しくお茶をしている時間帯の出来事。

 王太子の執務室室には、王太子妃が訪ねて来た。

「殿下、側妃の選定を始めたと聞きました」
妃が王太子に詰め寄る。
「もう少し、もう少し待っては頂けませんか」

「そなたと婚姻して4年。妊娠の兆候も無い」
王太子は厳しく答える。
「なら、せめて、迎える側妃は私の従妹にしてはもらえませんか」
「第一側妃は、国内の高位貴族の令嬢と決まっている。いい加減にしないか!」
王太子は実際に苛立っていた。
このやり取りは、初めてではないからだ。

今現在、王室の王子は二人いる。

王太子と第二王子だ。

王太子は外国の貴族の王妃の産んだ男子。
第二王子は、国内の高位貴族の産んだ男子。

第二王子には高位貴族の外戚が付いていて、王太子の座を狙っているのだ。

王太子の座を安定させるには、世継ぎの御子が必要不可欠になる。

王太子妃に子ができないなら、より強い一族の令嬢が望ましい。

王太子は一人の令嬢を思い浮かべる。
第二王子が、愚かな婚約を実行する事は解っていた。

弟王子を愚かだと思っていたが、あれほどバカだとは思わなかった。

男爵令嬢でありながら騎士を目指していた令嬢が、まともな妃になれるはずがない。

本来、側室にするのも難しい身分だ。
妾にでもして可愛がったほうが面白いだろうに。

いや、自分の護衛騎士にして好きな時に可愛がるほうがよっぽど面白い。

王太子がほんの少しの間、思考していると。

「アルバニアですか!知っていますのよ。殿下がテアルスティア家に打診していた事を」

愚かな妃だ。

あの令嬢を手に入れようと算段もしていたが、あのようになるとは思いもしなかった。

女侯爵になった者が側室になるはずがない。
打診、いったい何時の話だ。
「話す事はない。出ていくんだ」
王太子は従者を呼ぶと、妃を退室させるようにと指示を出す。




 後宮の一室で王太子妃は自分の未来を思い、悲しんでいた。
「王太子妃、泣いているのですか」騒ぎを聞いた王妃が訪ねて来たのだ。
「王妃様、殿下をお慕いしております。私以外に妃を娶るなど・・・・うっうっ」

 ルトビニア王国の風習は、王妃を国外の貴族から連れてくるのだ。

王権の邪魔にならないために。
外戚の力を必要性以上に王権に入れないためだ。
故に外国の王族ではなく、貴族になる。

 大国の王妃に望まれた令嬢達は、夢うつつで嫁いで来て現実を知るのだ。

力を持つ事を望まれないばかりか、第一側妃に国内の高位貴族の令嬢が入宮する事が決定事項なのだと。

 王妃は己と同じく、外国から嫁いで来た王太子妃を可愛がっていた。

王妃はゴブレットを王太子妃に差し出す。
「血の循環器を良くして、子を身籠りやすい身体にします」

王妃の生国は薬草の栽培を生業にし、同時に薬師の育成にも秀でている。
貴族の娘が調剤できても不思議ではない国柄だ。

薬学に通じる、それは⚫⚫にも通じる。


王妃は、王太子妃を哀れみに思っている。

子ができない、外国人である王太子妃の行く末を案じてしまうのだ。

「私に任せて頂戴」

王妃は・・・・。

本来、王妃は後宮で子が産まれる事に苦心しなくてはならない。

彼女達は、楔の無い優れた世継ぎを望むルトビニア王国、王族の犠牲者なのかも知れない。



次回、王女sideの予定です。
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「令嬢の願い」新連載を初めました。
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