14 / 85
女侯爵になります。
9
しおりを挟む
謁見の間で、私を惨めにさせる小道具。水色のドレスは着られる事なく綺麗に保管されている。
ドレスを注文した時に、私の記憶は戻っていた。
それでも注文したの。
相手を油断させる為に。
誰がどのような意図でさせたのか、はっきりさせたかったから。
「申し訳有りません」ミセス・ステアンは跪くの。
「私の監督不足にございます」
リリィ・ツチュアート、彼女が送り出した弟子。
正確になら元弟子ね。
そして三回のループの中で、必ずあの日のドレスを仕上げたデザイナー。
何年も前に送り出した弟子なら、問題は無かったわね。
彼女は、つい最近1人立ちしたの。
普通なら侯爵令嬢の、特別な日に着るドレスを任されたりしない。
彼女には、ミセス・ステアンの推薦があったの。
才能を認め可愛がっていたのね。
彼女の後ろに居る弟子達は、心配を隠せないみたい。
「貴方は知っていたの」聞いてみるの。
「こちら様に、推薦状を出したのは私です。布地を仕入れるさい融通しましたので、侯爵様が着られるドレスの色は知っていました。ですが同時に、第二王子殿下の婚約者様のドレスを担当するなど知りませんでした。しかも同じ色のドレスを仕立てるなんて」
おそらくミセス・ステアンの言っている事は真実だ。
彼女は常識人だ。そうでなくては、今の立場は無いだろうから。
「謁見の間の出来事は聞いておりました。職業柄、皆様のドレスを担当したデザイナー、ドレスのデザイン、色等の情報は直ぐに入手できます。当主様のドレスは紫色であったと聞き安堵致しました」
「貴方はどう思うの」
「私どもは、職業柄いろいろな御屋敷に出入りさせて頂いております。中には敵対している家門、両家に出入りする事もありました」
彼女の弟子達も真剣に聴いてるの。
貴女達がいずれ通る道なんだから、良く聞きなさいね。
「他家の情報を求められる事も有りました。正直申し上げますと、噂話ならいたします。ですが、してはいけない一線というものもございます」
彼女は水色のドレスを見つめたの。
「ご注文して頂いたドレスを使い、注文主様を貶める事等してはいけないのです。ドレスとは女性にとって鎧なのです。どうか私を罰して下さい。弟子を甘やかし過ぎてしまい、大事な事を教える事ができませんでした」
「ミセス・ステアン私は貴女を許します」
「アルバニア、良いの」
ヴァジールお兄様は私に確認します。推薦状を出す、それは身柄を保証する事。
ミセス・ステアンにも責任は有るでしょう。
私は、甘いのかもしれません。
彼女がとても小さく見えるのです。
とても傷付いて見えてしょうがないのです。
それに、仕組んだ人間も解っている。
何よりも、デザイナーのリリィ・ツチュアートはもう亡くなっているのよ。
数日前に刃物で挿された遺体が発見されたの。
勿論、私達が殺したりなんかしてない。
彼女は、信頼と最愛の弟子を無くしたの。
充分だと思うわ。
「ミセス・ステアン貴女にお願いがあるの」
ミセス・ステアンは私の願いを聞き、とても驚いたの。
私は改めて彼女にドレスの注文をしたの。
ミセス・ステアンは当初、辞退したのよ。
でも、受けてくれたの。
私の欲しいドレスは、彼女しか作れない。
15才の女侯爵のドレス。
とても難しいと思うの。
必要なドレスは2枚。
1枚は、2週間後に王室と行う結納の義。
サイラスお兄様と王女殿下のね。
今は、水面下で擦り合わせをしているの。
数日前に王室から来た手紙は、王妃のお茶会の招待状だったの。
そちらは三週間後。
その為のドレスを求めているの。
招待状の紙の質、装飾、茶会場所。
招待された者はそれらを見て判断するの、茶会のランクをね。
おそらく最高ランクの茶会で間違いないわ。
別名、女王の茶会ね。
だからこそ必要なのよ。
15才の少女の恥らいと気品、少女から大人の女性になる一瞬の儚さ。
そして、侯爵位に有る者の威厳。
そんな物を体現するための鎧を求めてしまう。
ミセス・ステアン、彼女ならできるはず。
彼女が落ち目等と思われているのは、媚びないからなの。
婚活中の令嬢やその親は、彼女のドレスを厭うの。
着る者の品性を曝し出すから。
戦う為の鎧を求めるなら、覚悟が必要なのよ。
結局、ドレスの打ち合わせは明日になったの。
急ぎ、そう、急ぎなんだけどね。
彼女達なら信頼できる、期限までに最高の鎧を用意してくれるはず。
あと、ヴァジールお兄様が何か注文を出していたの。
黒い雰囲気だったから、知らないふりをしたわ。
それに、彼女達に見せたい物があったから。
その為に、ドレスの打ち合わせを明日にしたのよ。
ドレスを注文した時に、私の記憶は戻っていた。
それでも注文したの。
相手を油断させる為に。
誰がどのような意図でさせたのか、はっきりさせたかったから。
「申し訳有りません」ミセス・ステアンは跪くの。
「私の監督不足にございます」
リリィ・ツチュアート、彼女が送り出した弟子。
正確になら元弟子ね。
そして三回のループの中で、必ずあの日のドレスを仕上げたデザイナー。
何年も前に送り出した弟子なら、問題は無かったわね。
彼女は、つい最近1人立ちしたの。
普通なら侯爵令嬢の、特別な日に着るドレスを任されたりしない。
彼女には、ミセス・ステアンの推薦があったの。
才能を認め可愛がっていたのね。
彼女の後ろに居る弟子達は、心配を隠せないみたい。
「貴方は知っていたの」聞いてみるの。
「こちら様に、推薦状を出したのは私です。布地を仕入れるさい融通しましたので、侯爵様が着られるドレスの色は知っていました。ですが同時に、第二王子殿下の婚約者様のドレスを担当するなど知りませんでした。しかも同じ色のドレスを仕立てるなんて」
おそらくミセス・ステアンの言っている事は真実だ。
彼女は常識人だ。そうでなくては、今の立場は無いだろうから。
「謁見の間の出来事は聞いておりました。職業柄、皆様のドレスを担当したデザイナー、ドレスのデザイン、色等の情報は直ぐに入手できます。当主様のドレスは紫色であったと聞き安堵致しました」
「貴方はどう思うの」
「私どもは、職業柄いろいろな御屋敷に出入りさせて頂いております。中には敵対している家門、両家に出入りする事もありました」
彼女の弟子達も真剣に聴いてるの。
貴女達がいずれ通る道なんだから、良く聞きなさいね。
「他家の情報を求められる事も有りました。正直申し上げますと、噂話ならいたします。ですが、してはいけない一線というものもございます」
彼女は水色のドレスを見つめたの。
「ご注文して頂いたドレスを使い、注文主様を貶める事等してはいけないのです。ドレスとは女性にとって鎧なのです。どうか私を罰して下さい。弟子を甘やかし過ぎてしまい、大事な事を教える事ができませんでした」
「ミセス・ステアン私は貴女を許します」
「アルバニア、良いの」
ヴァジールお兄様は私に確認します。推薦状を出す、それは身柄を保証する事。
ミセス・ステアンにも責任は有るでしょう。
私は、甘いのかもしれません。
彼女がとても小さく見えるのです。
とても傷付いて見えてしょうがないのです。
それに、仕組んだ人間も解っている。
何よりも、デザイナーのリリィ・ツチュアートはもう亡くなっているのよ。
数日前に刃物で挿された遺体が発見されたの。
勿論、私達が殺したりなんかしてない。
彼女は、信頼と最愛の弟子を無くしたの。
充分だと思うわ。
「ミセス・ステアン貴女にお願いがあるの」
ミセス・ステアンは私の願いを聞き、とても驚いたの。
私は改めて彼女にドレスの注文をしたの。
ミセス・ステアンは当初、辞退したのよ。
でも、受けてくれたの。
私の欲しいドレスは、彼女しか作れない。
15才の女侯爵のドレス。
とても難しいと思うの。
必要なドレスは2枚。
1枚は、2週間後に王室と行う結納の義。
サイラスお兄様と王女殿下のね。
今は、水面下で擦り合わせをしているの。
数日前に王室から来た手紙は、王妃のお茶会の招待状だったの。
そちらは三週間後。
その為のドレスを求めているの。
招待状の紙の質、装飾、茶会場所。
招待された者はそれらを見て判断するの、茶会のランクをね。
おそらく最高ランクの茶会で間違いないわ。
別名、女王の茶会ね。
だからこそ必要なのよ。
15才の少女の恥らいと気品、少女から大人の女性になる一瞬の儚さ。
そして、侯爵位に有る者の威厳。
そんな物を体現するための鎧を求めてしまう。
ミセス・ステアン、彼女ならできるはず。
彼女が落ち目等と思われているのは、媚びないからなの。
婚活中の令嬢やその親は、彼女のドレスを厭うの。
着る者の品性を曝し出すから。
戦う為の鎧を求めるなら、覚悟が必要なのよ。
結局、ドレスの打ち合わせは明日になったの。
急ぎ、そう、急ぎなんだけどね。
彼女達なら信頼できる、期限までに最高の鎧を用意してくれるはず。
あと、ヴァジールお兄様が何か注文を出していたの。
黒い雰囲気だったから、知らないふりをしたわ。
それに、彼女達に見せたい物があったから。
その為に、ドレスの打ち合わせを明日にしたのよ。
0
お気に入りに追加
2,392
あなたにおすすめの小説
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
令嬢の願い~少女は牢獄で祈る~
Mona
恋愛
私は、婚約者と異母妹に何回も殺された。
記念するべし何回めかのループで、やっと希望がかなった。
今回は、記憶が有ります!!
「火刑の後は喉が渇くわ」令嬢は花瓶の水を飲み干す。
柔らかいベッドの上でピョンピョンしながら考える。
「私の希望」それは・・・・。
邪神様、願いを叶えて下さり感謝します。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。
なにひとつ、まちがっていない。
いぬい たすく
恋愛
若くして王となるレジナルドは従妹でもある公爵令嬢エレノーラとの婚約を解消した。
それにかわる恋人との結婚に胸を躍らせる彼には見えなかった。
――なにもかもを間違えた。
そう後悔する自分の将来の姿が。
Q この世界の、この国の技術レベルってどのくらい?政治体制はどんな感じなの?
A 作者もそこまで考えていません。
どうぞ頭のネジを二三本緩めてからお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる