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女侯爵になります。
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王都侯爵邸の一室、幼さを残した侯爵家当主がまだ夢の中だ。
本来規則正しい生活を送る少女だが、今朝はまだ起床しない。
使用人達は、静かに職務に励む。
新たな女侯爵は昨日、死戦を勝利したのだ。
今だけでも安らかに眠らせてやりたいのだ。
彼女が、幼い頃から王子妃候補として重圧と束縛の中で生きてきた事。
2カ月前、落馬をしてから真実を確信した少女の苦悩。
使用人達は涙を流し見守ってきた。
そして、昨日お嬢様が無事に侯爵家当主として認められたと吉報が届いたのだ。
昨夜は侯爵家から振舞い酒が出され皆、嬉し涙を流しながら飲み明かした。
使用人達が静かなのは、決して二日酔いのせいでは無い。
彼等の名誉の為に繰り返す。
二日酔いになったのは、少人数だ。
侯爵邸のサロンで、1人の青年がタメ息をつく。
「ねえ、そろそろアルバニアを、お越しに行って良いだろ」
「ダメです。淑女の寝顔を見る何てマナー違反ですよ」
若いメイドは、青年を嗜める。
「早く、お姫様の顔が見たいよ」
「ヴァジールお兄様、お早うございます」
「お嬢様・・・・すいません。当主様、起きられたんですね」
「お姫様、お早う」
ヴァジールお兄様は、サイラスお兄様の実兄に当たる。
そして、過去三回のループの時には父やサイラス兄様よりも私を心配してくれた人。
彼の役割は、私のお目付け役。
実際、当主交代は一族の中では物議をかました。
父は当主としては充分役割を果たしていたのだから。
父親としては、いささか不実だったけどね。
それでも父は、一族を説得してくれたのだ。
一族の出した結論は、ヴァジールお兄様を、新当主で有る私のお目付け役に置くなら。
そんな、条件が出たの。
最もな、条件だと思うよ。
15才の令嬢だもんね、彼は一族からの保険。
私が当主として機能しなかった場合、彼を無条件で私の配偶者として迎える。
一族の長老達と約束したの。
お兄様には申し訳ないと思っている。
「マリア、紅茶が飲みたいわ」
マリアが、紅茶と軽食を用意してくれてる。
彼女も、過去のループの時に私を支えてくれたの。
本来なら、まだ知り会っていないんだけどね。
捜したの、大切な人だったから。
ヴァジールお兄様とマリア、私が無条件で信頼できる2人の優しさの中で、少し遅い朝食を頂いたの。
とても安らかな、リラックス出来る時間だったけど嵐は、突然やって来るのね。
謁見の間で例の事が会ってから数日後、嵐が我が家にやって来たの。
「当主様、王室から御手紙が来て下ります」
執事が銀のトレーに乗せた手紙を、持ち込んで来たの。
その頃、前侯爵は王城の執務室で職務に励んでいた。
彼は、当主の座こそ娘に譲ったが、現役の財務大臣で有る。
城の中は、昨日の謁見の間での出来事の話題で、賑わっている。
執務室に居ても、噂が耳に入ってくる程に。
本来なら、第二王子の成人の謁見と婚約者発表の場だったのだから。
娘が、惨めに人目に晒される為の舞台。
それを、15才の令嬢が切り抜けたのだ。
父親から見ても、凛々しく気高い姿だった。
そして、自分の行動を振り返る。
アルバニアが、事実に気付かなかったら、アルバニアを側室に上げようとした。
それだけの価値として。
勿論、サイラスも機会を見ての、処分対象としていた。
娘は、事実を掴み当主になるために自分達を説得し、その道に必要な工程をなしたのだ。
これは、親の欲目では無い。
前侯爵は確信している。
そんな事を思いながら、前侯爵は不思議に思う事がいくつか有る。
王家から、誠意を持って娘を側室に願われたら、娘を説得して王太子、又は第二王子の元に送っただろう。
確かに、高位の貴族の娘。アルバニア、クラスを望めば、支度金、月々の化粧代などの大金が掛かる。
アルバニアの品格を落とす。そんな事は、最初に不実をしたのは、王家だったと冷静になれば気付く。
何よりも、アルバニアの生家で有る我が家と溝を作る事になる。
王家は、一体何がしたかったんだ?
金の問題。自分は財務大臣だ。王家の資産は潤沢のはず。
アルバニアの品格を、落とす。
自分で言うのは憚るが、我が家は、名門中の名門。
品格を落と為に・・・・もしかすると。
前侯爵は妄想する。
王家は、王女を送り込んだ後自分を暗殺・・・・
そして、侯爵家を乗っ取る・・・・
以前の彼なら、そんな妄想はしなかった。
今の彼は、巨大な金庫の番人位の感覚だ。
妄想・・・・結構、楽しいのだ。
侯爵家当主の実務はサイラスの実兄、ヴァジールに移行されている。
実際、彼は有能なのだ。サイラスを遥かに凌ぐ。
サイラスが、養子になったのは、一重に王子達との相性も会った。
しかし、サイラスの最大の魅力は協調性だ。
ヴァジールには無い、無二の魅力。
サイラスはお互いを高め会うように、絆の上に立つ当主になっただろう。
ヴァジールは、天賦の才を放ち覇道をなし、混乱を招く。
そんな危惧が会った。
何よりも、ヴァジールのアルバニアを見る目が、気にくわなかった。
ヴァジールは、優秀過ぎたのだ。
トントン・・・・
執務室の扉に、ノックする者がいる。
彼の元にも、嵐はやって来た。
この後、彼は・・・・
本来規則正しい生活を送る少女だが、今朝はまだ起床しない。
使用人達は、静かに職務に励む。
新たな女侯爵は昨日、死戦を勝利したのだ。
今だけでも安らかに眠らせてやりたいのだ。
彼女が、幼い頃から王子妃候補として重圧と束縛の中で生きてきた事。
2カ月前、落馬をしてから真実を確信した少女の苦悩。
使用人達は涙を流し見守ってきた。
そして、昨日お嬢様が無事に侯爵家当主として認められたと吉報が届いたのだ。
昨夜は侯爵家から振舞い酒が出され皆、嬉し涙を流しながら飲み明かした。
使用人達が静かなのは、決して二日酔いのせいでは無い。
彼等の名誉の為に繰り返す。
二日酔いになったのは、少人数だ。
侯爵邸のサロンで、1人の青年がタメ息をつく。
「ねえ、そろそろアルバニアを、お越しに行って良いだろ」
「ダメです。淑女の寝顔を見る何てマナー違反ですよ」
若いメイドは、青年を嗜める。
「早く、お姫様の顔が見たいよ」
「ヴァジールお兄様、お早うございます」
「お嬢様・・・・すいません。当主様、起きられたんですね」
「お姫様、お早う」
ヴァジールお兄様は、サイラスお兄様の実兄に当たる。
そして、過去三回のループの時には父やサイラス兄様よりも私を心配してくれた人。
彼の役割は、私のお目付け役。
実際、当主交代は一族の中では物議をかました。
父は当主としては充分役割を果たしていたのだから。
父親としては、いささか不実だったけどね。
それでも父は、一族を説得してくれたのだ。
一族の出した結論は、ヴァジールお兄様を、新当主で有る私のお目付け役に置くなら。
そんな、条件が出たの。
最もな、条件だと思うよ。
15才の令嬢だもんね、彼は一族からの保険。
私が当主として機能しなかった場合、彼を無条件で私の配偶者として迎える。
一族の長老達と約束したの。
お兄様には申し訳ないと思っている。
「マリア、紅茶が飲みたいわ」
マリアが、紅茶と軽食を用意してくれてる。
彼女も、過去のループの時に私を支えてくれたの。
本来なら、まだ知り会っていないんだけどね。
捜したの、大切な人だったから。
ヴァジールお兄様とマリア、私が無条件で信頼できる2人の優しさの中で、少し遅い朝食を頂いたの。
とても安らかな、リラックス出来る時間だったけど嵐は、突然やって来るのね。
謁見の間で例の事が会ってから数日後、嵐が我が家にやって来たの。
「当主様、王室から御手紙が来て下ります」
執事が銀のトレーに乗せた手紙を、持ち込んで来たの。
その頃、前侯爵は王城の執務室で職務に励んでいた。
彼は、当主の座こそ娘に譲ったが、現役の財務大臣で有る。
城の中は、昨日の謁見の間での出来事の話題で、賑わっている。
執務室に居ても、噂が耳に入ってくる程に。
本来なら、第二王子の成人の謁見と婚約者発表の場だったのだから。
娘が、惨めに人目に晒される為の舞台。
それを、15才の令嬢が切り抜けたのだ。
父親から見ても、凛々しく気高い姿だった。
そして、自分の行動を振り返る。
アルバニアが、事実に気付かなかったら、アルバニアを側室に上げようとした。
それだけの価値として。
勿論、サイラスも機会を見ての、処分対象としていた。
娘は、事実を掴み当主になるために自分達を説得し、その道に必要な工程をなしたのだ。
これは、親の欲目では無い。
前侯爵は確信している。
そんな事を思いながら、前侯爵は不思議に思う事がいくつか有る。
王家から、誠意を持って娘を側室に願われたら、娘を説得して王太子、又は第二王子の元に送っただろう。
確かに、高位の貴族の娘。アルバニア、クラスを望めば、支度金、月々の化粧代などの大金が掛かる。
アルバニアの品格を落とす。そんな事は、最初に不実をしたのは、王家だったと冷静になれば気付く。
何よりも、アルバニアの生家で有る我が家と溝を作る事になる。
王家は、一体何がしたかったんだ?
金の問題。自分は財務大臣だ。王家の資産は潤沢のはず。
アルバニアの品格を、落とす。
自分で言うのは憚るが、我が家は、名門中の名門。
品格を落と為に・・・・もしかすると。
前侯爵は妄想する。
王家は、王女を送り込んだ後自分を暗殺・・・・
そして、侯爵家を乗っ取る・・・・
以前の彼なら、そんな妄想はしなかった。
今の彼は、巨大な金庫の番人位の感覚だ。
妄想・・・・結構、楽しいのだ。
侯爵家当主の実務はサイラスの実兄、ヴァジールに移行されている。
実際、彼は有能なのだ。サイラスを遥かに凌ぐ。
サイラスが、養子になったのは、一重に王子達との相性も会った。
しかし、サイラスの最大の魅力は協調性だ。
ヴァジールには無い、無二の魅力。
サイラスはお互いを高め会うように、絆の上に立つ当主になっただろう。
ヴァジールは、天賦の才を放ち覇道をなし、混乱を招く。
そんな危惧が会った。
何よりも、ヴァジールのアルバニアを見る目が、気にくわなかった。
ヴァジールは、優秀過ぎたのだ。
トントン・・・・
執務室の扉に、ノックする者がいる。
彼の元にも、嵐はやって来た。
この後、彼は・・・・
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