スターダスト・ジョーカーズ

劇団バスターズ

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8月11日 町からのSOS

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「ここにトランプのカードが7枚ある。一枚引いてみろ」

そう言うと、森谷さんは7枚のカードを俺の前に並べる。
あれから数時間が立ち、俺は先ほど助けてくれた男子の、森谷康平(もりたに こうへい)さんの家に来ている。
通瑠と深杜、そしてもう一人女子がいた。

森谷さんの家はとても立派で、日本庭園のようだった。

俺は黙って、一枚のカードを引く。

「…ジョーカー、ですね」

引いたカードは、ジョーカーのカードだった。騒ぎだす女性陣。冷静な顔だった森谷さんも、少し笑いながら

「おめでとう、今日から君は俺たち『スターダスト・ジョーカーズ』の仲間だ」

と言った。
スターダストについては、移動中に説明してもらった。
俺が相手にしていた悪霊は、スターダストと呼ばれる(森谷さん達がそう呼んでいる)やつで、反転世界と言われる世界から、こちらの世界に干渉してくる存在だということ。
そして、反転世界では、それぞれ何かしらの能力が使えるということ。反転世界で負ったダメージは、こちらの世界に戻ってくると、治っているということ。
その為、反転世界からこちらの世界に戻ってきても、身体的ダメージはもとより、眠気なんかもこちらでは特に影響はない。ただ時間だけが進んでいるということだった。

「あ…ありがとうございます…なのかこれ…」

反応に困ってしまったが、他のみんなは喜んでくれていた。

「改めてよろしくな。俺は森谷康平、年は君より一個上だな。康平でいいから」

手を差し伸べられる。

「あ、はい…」

まだ返事はしていない。戸惑いながら握り返すと、大きな手だった。力も強そうである。

「私もはじめましてだね。永井未鈴(ながい みすず)。未鈴でいいからね。年は康平君と同じだから、君の一つ上」

茶髪がかった肩ぐらいまでのきれいな髪が特徴の、清楚な感じの女子。握手をしたが、すごくきれいで白い手をしていた。

「私は別にいいかなぁ。今更だしね」

「わたしも」

そう言ったのは通瑠と深杜だった。彼女らの事はすでに知っていた。通瑠は中学からの同級生。深杜は家が隣の幼馴染。

康平さんは、ジョーカーズというチームの説明をしてくれた。
スターダスト・ジョーカーズとは、スターダスト(悪霊)からこの町を守る集団。メンバーはこの4人。
ジョーカーとは、殺人鬼などを意味する場合があるが、この人たちの場合は、切り札という意味で名乗っていた。…町の想いが、この失踪事件に対する町の想いが、彼らを切り札として選んだ、というわけだ。

スターダストの由来については、この町の名物、流れ星から来てて、美しい流れ星には、星屑が隠れている、という意味からだ。

スターダスト・ジョーカーズ。その仲間に、俺は誘われていた。

「一応、最後に確認だ。危険性も、もちろんあるからな」

康平さんは、和みつつある空気を、一度引き締める。
反転世界でダメージは無いものの、死んでしまうと現実世界でもダメージを受ける。精神的ダメージだ。蓄積されると、精神に異常をきたす可能性がある。

「そして、俺たちの一番の目的は、『反転世界に迷い込んでしまった人の救出』だ」

稀に反転世界に来てしまう人がいるという。
反転世界はどうやら、人間が見る夢と同じ次元の存在だという。眠りにつき、意識だけが反転世界に迷い込んでしまうケースがあり、その人を反転世界から救うのが一番の目的らしい。それにはもちろん危険が伴い、スターダストとの戦闘も避けられない。

スターダストのエネルギー源は『人間の記憶』なのだそうだ。人間の意識を食べることにより、それを摂取する。
食べられてしまった人間は、現実世界でも消滅してしまう。

「どのように人が消えるのかは、俺らにも分からない。そして、迷い込んできた人を救い出しても、その人に反転世界の記憶は残らない」

ゆえに、何の見返りもない活動だが、それでもやるか?という事だろう。

「参加させて下さい」

迷いはなかった。今までも似たようなことをやってきた。これからはチームを組んでやることになる。それだけだ。

「最後に。俺たちは、正義のヒーローじゃない。命の危険を感じたら、真っ先に逃げてくれ。それは、俺も、こいつらも同じだ」

全員がうなずく。

「じゃあ、今日は解散だ。明日の夜にまた来てくれ」

時間は後で連絡するとのことなので、康平さんと連絡先を交換する。その流れで未鈴さんも。他二人はすでに知っていた。

「ああ、あと、反転世界の事とか詳しい資料をデータ化してあるのを送るから、改めて確認してくれ。分からないことがあれば連絡してくれ」

というと、今日は解散ということになった。

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