上 下
840 / 953
愛別離苦

ヨエクの変化

しおりを挟む
「ぐ‥ガ‥コロす!こロッス!」


ヨエクのやつ、かなり錯乱しているようだが‥

しかしこちらもヨエクの変化がわからないから迂闊なことはできないな‥


ヨエクの身体から噴き出した血が地面に流れ落ちる度に、黒い煙が立ち上がる。

ヨエクの周辺に黒い煙が充満する。

風に乗って煙が徐々に近寄ってくる。


気味が悪いな‥

俺はエンチャント:穿つ者を発動して風の魔法を使う。

こちらに近寄ってきていた煙が四散する。

薄まった黒い煙が周りの空気に同化して徐々に色を失っていく。

空気に乗って俺の近くまで来た時には、ほぼ無色になっていた。

「うっ‥」

鼻の奥に痛みが走る。

なんだ?

「マルコイ!これ毒よ!」

アキーエの叫び声が聞こえた時には俺は後退していた。

周りの空気を全て吹き飛ばす威力の風の魔法を使うために魔力を練る。

頭の奥で鐘を鳴らされるように痛みが走る。

くそっ!

無理やり魔力を制御して風の魔法を発動させる。

「『斬風壁』!」

風の刃の壁を作り出し、周辺の空気ごとヨエクに叩き返す。

風の壁は周辺の空気を吹き飛ばし、ヨエクの身体を斬り刻む。

風の刃で傷ついたヨエクの身体から血が流れ出す。

「『氷封柱』!」

ヨエクの血が地面に流れ落ちる前に、氷の魔法でヨエクの身体ごと氷漬けにする。

すぐにエンチャント:慈愛ある者に切り替えて身体の毒素を抜く。

頭痛が少しずつ回復していく。

「こいつはヤバいな‥」

「マルコイ、あれっていつまで待ちそう?」

「もって数分だ。もう少しずつ動き出してるからな。」

ヨエクは氷の中に封じ込められているが、腕や足が徐々に動き出している。

魔法をかけ続けて時間を稼ぐ事ができると思うが‥

おそらく今のヨエクは万全ではない。

変化が完了する前に攻撃したからな。

もし時間を与えたら氷の魔法でもって数秒とかになるかもしれない‥


しかし何ださっきの煙は‥

かなり薄まった状態であれ程のダメージを受けるとは思わなかった。

あれをまともに喰らったらどうなるかなんて想像もしたくない‥

「どうするのマルコイ?」

「全火力を持って一気に勝負をつけよう。」

俺の魔法ではとどめを刺す事はできないかもしれないが、アキーエと同時に攻撃したら可能性はあるかもしれない。

「キリーエ、リル、アレカンドロはヨエクが動き出したら一斉に遠距離から攻撃してくれ。その後に俺とアキーエの魔法で焼き尽くす!」

まさかシエブラの置き土産がこんな凶悪なものとは思わなかった。

こんな物放っておいたら、プリカが死の街になってしまうぞ。

自分が王となろうとしている国を滅ぼすような存在に変化させられるとはな‥

ヨエクはそれすらもうわかっていないのだろうが‥

ミミウじゃないが、シエブラは絶対に許せんな‥




ヨエクが氷を壊すタイミングで攻撃できるよう、それぞれが攻撃の構えを取る。

ちなみにミミウは遠距離攻撃がないので、予想外の事が起きた時に対応してもらうため盾を持って待機している。

決してさっきのドラゴンとの戦いで魔力を使ったから眠くなってる訳ではない。

あの鼻提灯はフェイクである。

まるで眠っているように見せかけているのだ。
どこからどう見ても本当に眠っているようだがな‥

あ、首がコクってなった。

そ、それでもきっとあれは寝たふりなんだ‥




ヨエクの動きが大きくなっていく。
それに伴い、身体を包んでいた氷にひびが入り少しずつ剥がれていく。

「行くぞ!」

遠距離からの攻撃を任せた3人が同時に動く。

「アサルトフルバレット!」

キリーエがプロミネンスから数発の銃弾を放つ。

銃声が聞こえないからわからないが、1つの動作で数発の弾を放った。

な、なんだそりゃ‥

いつの間にそんな技を使え‥

「斬:風狼【刀牢】」

リルが俺の目にも捉えられない速度で刀を振るう。

まるで網の目のような斬撃がヨエクに向かって飛ぶ。

おおい?

だからなんで君たち‥

「どっせーい!『飛斧刃聖魔両拳』!」

アレカンドロが巨大な大斧を両手に持ち、それを信じられない程のスピードでヨエクに投擲した。

アレカンドロも‥

いや、だからお前は斧飛ばしてるのに、何故拳って言ってるんだよ!
そこは地獄極楽両斧投だろ!

アレカンドロのネーミングセンスはさておき、投げたのが、片方でヨエクの巨大化した身体と同じくらいの大きさの斧なんだが‥

さ、三人ともびっくりするくらいの火力なんだが‥

いかんいかん。
思わず見惚れてしまった

よし、次は後は俺とアキーエの番だ!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

全校転移!異能で異世界を巡る!?

小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。 目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。 周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。 取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。 「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」 取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。 そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...