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愛別離苦

プリカの料理屋さん

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アキーエたちを探してギルドの外をぶらつく。

いくらミミウがお腹空いたとはいえ、この状況で店を出してる人なんていないと思うんだけどな‥

それにキリーエが一緒なら保存食くらいは【ボックス】に入ってると思うんだけど。

食べ切ったかな?

街で食べ物を出していた店通りに向かって歩いていく。

やはりほとんどの店が閉まっており閑古鳥が鳴いている。

空いてる店もあるけど‥

空いてただけで、中身もなかった。
夜逃げでもしたのかな‥?

その中で一軒だけひと気のある店があった。

「おお!お嬢ちゃん凄いな!どんどん食べな!」

うん。
やっぱりここか。

「客も来ないし、今日で最後にしようと思ってたからな。最後にこんなに食べてくれる客が来てくれて、料理人冥利に尽きるわな!」

カウンターにはミミウとアキーエ、キリーエが座っていた。
食べてるのはもうミミウだけみたいだけど。

「おっ!?またお客さんかい?今日は珍しいな。どうぞ座った座った。」

汗よけだろうか?
頭に捻った布を巻き付けている50代くらいの男性が厨房から声をかけてきた。

「いや、すまない。俺はこの娘たちの連れだ。」

「マルコイ?」「あーマルコイさんだ!」

「ん?おおそうかそうか!それならあんたも座ってくれ。」

俺はアキーエの隣に座る。

しかしこの店は珍しいな。
普通こういったお店はテーブル席がメインなんだけど、ここはカウンター席が多く厨房を囲むような座席になっている。

「それじゃお兄さん何にする?まあ何にするって言っても商品が入らないからあるもんしか出せないんだけどな!がはははは!」

はは。
商品が入らない、明日には店を閉めるってのに随分と明るいおじさんだな。

「おう兄さん!俺は自分の料理に自信を持ってる。ひとつひとつ丁寧に下処理をすれば、食材はそれに応えてくれる。だから俺は食材とこの腕さえあればどこでもやっていけるんだ!まあ今はじっと我慢だけど、時期が来たらヨエク王も街から人が出る事を許してくれるだろ。本音としては前王の治める街で腕を振るいたかったけどな!」

俺が不思議そうな顔をしていたのに気付いたのだろう。

「もう少ししたら落ち着くんじゃないか?」

もちろん俺たちがヨエクを倒して王様が王座に戻った形だけどな。

「がはは。兄さんはヨエク王を認めてるのか?俺は好きになれん。街もこの有様だからな。落ち着いたとしてもヨエク王が治めるここで料理屋を続ける気にはならんよ。はいよ、食ってくれ。」

そう言っておじさんは料理が乗っている皿を差し出した。

皿には大根が乗っていた。

「すまないな兄さん。こんなのしか出せなくてな。でも味には自信があるぜ。なにせホット商会が出してる醤油と味醂って調味料を使ってるんだ。」

おお!
こんな所にもホット商会気配が‥

大根の煮物でいいのかな?
一口食べてみる。

へえ。
こりゃ美味い。

大根にしっかり味が染みていて、ほんのり甘味がある。

ちゃんと煮崩れしないように面取りもしてあるし、ただの大根の煮物だけど下処理をきちんとしてあるみたいだ。

大根の煮物一品だけど、料理にかけている熱意が伝わってくる。

「どうだ?美味いだろ?ほんとは最近新しく米って素材を仕入れる事になってたんだ。そのお米を炊いて一口大に握った物に、素材の味を生かした物を乗せて食べてもらうって料理を考えてたんだよ。まあお米が手に入らなくなったからだいぶ先の話になっちまったけどな。」

ん?
それってどこかで見た事あるような‥

「それって上に乗せるのは何でもいいんですか?例えば生の魚とか?」

確か異世界の寿司って料理だったよな。

酢飯を握りって、その上に切り身の魚を乗せる。

簡単そうだけど握り方にもコツがあるし、一貫ずつ丁寧に下処理をした魚を乗せて出すんだよな。

「生の魚?とくにこれと決めてたわけじゃないが‥あと寿司ってなんだい?特に名前は決めてなかったけど、もうどこかで出しているのかい?」

おじさんは残念そうな顔をしている。

「いや、まだどこも出してないと思うよ。」

視界の端にキリーエとミミウの笑みが見えたけど、気にしないでおこう。

てかおじさん俺と話ししながらミミウに料理を出してるけど、さすがプロだな‥






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