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愛別離苦

自動二輪車

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ふぅ‥

散々な目にあった。

どうにか自動二輪車も止まってくれて、今は普通に操縦している。

止まったといっても壊れた建物に乗り上げて、俺が吹っ飛ばされる事で止まったのだが‥

はっきり言って、今までで1番のダメージを受けたかもしれない。

魔力が乏しかったので、回復するためにポーションがぶ飲みして事なきを得たが、一歩間違えれば自動二輪車のせいで戦闘不能になるところだった。

やはり最初はラケッツさんやスキャンに試してもらわないと、俺の身が危ない事を再認識してしまった。

自動二輪車も問題なく動いてくれたので、とりあえずついでの目的である偵察を行うことにした。

偵察と言いながらも、自動二輪車は結構な音を立てて街中を走っている。

普通なら物珍しさで見に出てくる人と思っていたが、誰1人として家から出てくる人がいない。

う~む‥

氾濫したモンスターを討伐して街に来た時は、盛大に歓迎してくれて、街の人にも笑顔が溢れていた。

そんな街が今は見る影もなく、街自体が徐々に死んでいっているようだ。

あまりにも悪政だよな。
ヨエクに事情があったとしても、国民を巻き込んでするべきじゃない。

自分1人でやってりゃいいんだ。

お前のやってる事は全力で阻止させてもらうからな‥




ん?
あれは‥

城に向かう途中で武装した集団を見かけた。
どうやらヨエク兵のようだな‥

自動二輪車を停めて様子を窺う。

ヨエク兵もこちらに気づいたようで数名がこちらに近寄ってくる。

「貴様何者だ!?それに跨っている物は何だ!モンスターか?それともゴーレムか?早急に答えろ!」

「別に何でもいいだろ。お前たちにこの自動二輪車の素晴らしさは伝わらないし、別に伝わらなくてもいい。それよりもお前たちこそどこに行ってるんだ?」

「なんだと貴様っ!ここで撃ち殺してもいいんだぞ!」

おお、怖い怖い。

こっちもここで木偶人形軍団を放ち殺してもいいんだぞ?

するとヨエク兵たちの後方にいた1人の男がこちらに歩いてきた。

周りのヨエク兵たちが避けるように離れるため、男の前が割れるように開ける。

その男には片腕がなかった。
身体のバランスがおかしいのか、歩き方がぎこちなくどこかふらふらしている。
まるでつい最近腕をなくしたような感じだ。

白髪混じりの髪の毛は、げっそりとした顔の目の辺りまで伸びていて視界の邪魔をしている。

それでもその目は爛々としており、俺を睨みつけるような視線を送っている。

「聞きたいことがある‥お前が盗人か?」

はぁ?
いきなり盗人呼ばわりとは随分な奴だな。

「何の事を言っているんだ?俺が盗みなんてするわけないだろう。」

「それじゃあ質問を変える。ヨエク王の鉱山から鉱石を盗んだ奴を知っているか?」

え?
あれ‥?

もしかしてコイツ、ヨエクの鉱山の入り口で会った偉そうな奴じゃないか?

確かダリックとかいう名前じゃなかったかな?
でも一目見て誰かわからないくらい様子が変わっているのだが‥

もしかしてヨエクにいじめられたか?

「いや、それも知らない。俺は関係ないな。」

嘘は言っていない。
だってあの鉱石はこの国の王様に貰ったんだもの。
別に盗んだわけじゃないからな。

「そうか‥‥おい。」

ダリックは近くにいる兵に声をかける。

「数人残ってあいつが跨っている物を回収しろ。鉱石ではないが、ヨエク王は喜びになるかもしれん。他はギルドを目指すぞ。別班はもう着く頃だろう。先遣隊が帰ってこないという事は何かあったという事だ。何かルパートは知っているのかもしれん。早く行ってルパートを締め上げるぞ。」

「はっ!」

マジで?
それなら早く俺もギルドに戻らないと‥

アレカンドロとリルが破壊の限りを尽くすかもしれないぞ。

数人の男が近寄ってきた。

「おい。その跨っている物を寄越せ。抵抗するならこの場で死んでもらうぞ。」

目が血走ってますね。
余程ダリックが怖いのか、かなり追い詰められてるような感じがするけど‥

でももちろん降りませんけどね。






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