上 下
787 / 953
愛別離苦

おぞましき物

しおりを挟む
アレカンドロの攻撃で紫色の肉塊は身体の至る所から血を噴き出している。

動きも鈍くなっているし、そろそろ倒す事ができそうだな。

その時、千切れた肉片が不自然に動き出したのが見えた。

なんだ‥?

その肉片は本体の方に向かい進んでいる。

まさかな‥

嫌な予感がする‥

動き出した肉片は本体の近くまで行くと、本体に向かって飛び込むように動いた。

千切れた肉片は本体に引っ付くと、そのまま吸収されるように消えた。

ちっ‥

嫌な予感が的中したみたいだ。

アレカンドロが終始優勢に進めているけど、戦いが長引いたら負けるかもしれない。

アレは多分ダメージを喰らってはいるんだろうが、千切れた物を吸収して回復してやがる。

「アキーエ!アレはあのままじゃ倒せないようだ。すまないが魔法の準備をしておいてくれ。」

「わ、わかったわ。」

「ルパートさんたちは下がってください。」

「わ、わかった!すまない!」

「イェルンさんも王様と一緒に下がっ‥」

あっ!
イェルンさんもうあんな所に逃げてやがる。

イェルンさんはクィリーノさんと王様と一緒にかなり離れた場所に移動しており、腕で丸の形を作っている。

わかっている。
わかっているが何かムカつく‥

新しいスキル【創造士】で作る新しい魔道具の最初の犠牲者は絶対イェルンさんにしよう。

間違えた、被験者‥実験台‥‥

まあいい。
兎に角素敵な物をプレゼントしよう。



俺は肉塊に大斧を振り回しているアレカンドロに声をかける。

「わははははっ!」

た、楽しそうに大斧を振り回してるなぁ‥
あれって【聖鎧闘士】に譲与結合したときに結合された【狂戦士】とか関係ないよね?

少し心配になってしまうぞ。

「おい!アレカンドロ!そいつはそのままじゃ倒せない!一旦下がれ!」

「承知しました!あと30分したら一旦引きます!」

おい‥
俺たちは30分見てればいいのかい?

「冗談です!次の攻撃で下がります!」

あ、冗談なの?
君の場合は冗談に思えないんですけど‥

アレカンドロは大斧を大きく振りかぶって叩きつけた。

大斧には風の力が宿っており、叩きつけたと同時に血と肉片が飛び散った。

そしてアレカンドロはすぐにその場を飛び退いた。

よし!
肉塊は回復しようとしているが、その前に決着をつける!

俺はエンチャント:穿つ者を発動させる。

魔力を練り魔法を放つ。

「凍える息吹よ、彼の時を止めよ!『氷結雪牢』!」

俺の氷魔法は肉塊の熱を奪い、活動を停止させる。

本体に飛びつこうとしていた肉片も同じように凍りつく。

エンチャント:氷を使ってたのもあって、氷魔法はイメージがし易くて高威力が出せる。

そう易々と抜け出すことはできないだろう。

このまま放置しておけば、いずれ復活するだろうな。
きちんと始末しておかなければ‥

「アレカンドロ、とデカい一発を頼む。その後にアキーエの魔法で焼き尽くそう。」

「承知しました!」

「わかったわ!」

2人が準備に入る。

アレカンドロが空高く舞い上がり、大斧を構える。

アキーエが魔力を練って魔法の発動準備に入る。

「アキーエ!ほどほどだぞ!ほどほど。」

「えっ?焼き尽くすのよね?」

「そうだ!だけど、あの肉塊だけを狙ってくれよ。」

「うっ‥わ、わかったわ。」

ただの勘だ。

ただの勘だけど、そのままアキーエに任せて魔法を撃たせると、ここら一帯が焦土になりそうな気がする‥

多分言わなかったらそうなってたと思う。
恐ろしい娘っ!


アレカンドロが上空から肉塊目指して物すごいスピードで突っ込んでいく。

最初攻撃した時の2倍くらいの高さから突っ込んでいる。

「大斧烈風隕石落とし斬!」

もの凄い音と共に、砂塵が舞う。

あれだけの高さからの攻撃だ。
スピード、質量、重量で恐ろしい程の威力になっている。
もうある意味人間隕石だな‥

ただ技名に関してはもう一度話し合う必要があると思う。
『超強力メテオヘルスラッシュアタック』とか。


「彼の場所に炎界を顕現せよ『炎封熱波』!」

アレカンドロの攻撃で飛び散った肉塊に、アキーエの魔法が放たれた。






----------------------------------------------------------------------
近況にも書いてますが、ブログ始めました。
遊びに来ていただけたら嬉しいです!修正している本編や、書いている時に考えてた事などを載せてます!
https://ogicon3777.com
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

全校転移!異能で異世界を巡る!?

小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。 目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。 周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。 取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。 「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」 取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。 そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて

だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。 敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。 決して追放に備えていた訳では無いのよ?

処理中です...