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魔王の影

スキル【獣化】

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スキル【獣化】か‥

「何故かわからぬが、徐々に【獣化】を持つ獣人族がいなくなってきており、今では希少スキルになっている。おそらくワシらの生活が安定して、獣と生活が別れてしまったのが原因だろうとは思われるがな。しかしスキル自体は身体能力の向上や五感の鋭敏化など、通常ではありえない力を得る事ができる。」

なるほど。
それほどのスキルであれば是非とも模倣したいところだが‥

「まあ問題はお主が人族だから、人族がスキル【獣化】使った時にどうなるかわならないところだな。」

そうなんだよな。
あくまで獣人族のスキルだから、人族の俺が使ったらどうなるのか‥

多分使えないってのが可能性としては1番大きい気がするけど。

「構いません。使えなかったとしても問題はないので、模倣させてもらえませんか。」

もし俺が使えなかったとしても、アレカンドロに譲渡すればアレカンドロが使えるからな。

「わかった。しばし待て。」

エッケンさんが外に出て、1人の女性を連れてきた。
円背でかなりの高齢のようだ。

頭には狐耳がついているところを見ると、狐族の獣人のようだ。

「獣人国に数人スキル【獣化】を持つ者がいるが、今王城にいるのは彼女だけだ。」

「オドレイと申します。」

「マルコイと言います。すみませんがよろしくお願いします。」

俺がそう伝えると、オドレイはギルドカードを提示してくれた。

オドレイ
冒険者ランクA
スキル【獣化Lv.6】

「私はスキル【獣化】を使って冒険者をしていました。今は高齢で戦う事はできませんけどね。でもスキルをお見せすることくらいはできますよ。」

オドレイはそう言うと、俺から少し離れる。

「いきます。【獣化】」

オドレイがスキルを使う。

すると円背だったオドレイの背中がすっと伸びる。

そして年齢により刻まれていた皺のある顔に、毛が生えてくる。

顔だけではなく、身体全体に毛が生えてきた。
そして【獣化】が終わる。

なるほど。

スキル【獣化】によって、オドレイはより獣に近い姿になった。

獣人と獣の間といったところか。

「どうでしょう。これがスキル【獣化】になります。」

そう言って、オドレイはその場から部屋の隅に移動した。

とても先程まで目の前にいた高齢の女性の動きではない。

「如何でしょうか?スキルを見たいとの事でしたが、参考になられましたでしょうか?」

「ありがとうございます。参考までに、その状態はどれくらいの時間保てるのでしょうか?」

「そうですね、魔力が尽きるまで、といったところでしょうか。時間として5分くらいですかね。ですが今の私は魔力が尽きるまで動いてしまうと、その後2~3日は動けなくなるでしょうね。若い時であれば半日くらいでしたが‥」

なるほど。
さすがにこれ程のスキルだ。
デメリットはあるだろう。
魔力の消費量が多く、使った後の疲労感か。
しかし魔力を回復しながら使うのであれば、かなり長い時間使用する事ができるだろう。

まあ俺が使えるのであれば、と言ったところだがな。

(ピコーンッ)

『模倣スキルを発現しました。スキル【獣化】を模倣しました。』

ふむ。
とりあえずスキルは模倣できたようだな。

使えるかどうかはまだ不明だけど‥

「大変珍しいスキルを見せていただいて、ありがとうございました。自分のスキルの参考になりました。」

俺は獣王様に目で合図する。

獣王様は大きく頷く。

「オドレイ。マルコイはワシが目をかけている冒険者でな。スキルの事で少し悩んでおったから助かったぞ。」

「勿体ないお言葉ありがとうございます。それでは失礼致します。」

オドレイは【獣化】を解く。
そしてそのまま壁にもたれかかるように体勢を崩す。

エッケンさんが人を呼び、支えながら部屋を出て行った。

「どうだマルコイ。スキル【獣化】は模倣できたか?」

「はい。ありがとうございます。使えるかどうかは今から試してみます。」
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