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勇者の救出

賢者の救出

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声をかけるが反応はない。

一瞬死んでいるのではないかと、身体を触ってみたら温かく体温はあるようだ。

しかしこれでは死んでいるようなものだな。

俺は賢者がつけている魔道具を確認する。

魔道具は洗脳を解こうとしているようだが、さっき聖王たちが言っていたように何度も洗脳をかけられたのだろう、それを拒否するために精神が活動を止めてしまっているようだ。

果たしてこの状態で治るのだろうか‥?

やってみるしかないだろうな‥


洗脳を治す1番の方法を試してみるべきだろう。

そして少しでも改善すれば、後は魔道具が時間をかけて治していくはずだ。

このままここで試してみてもいいのだが、リルの時は結構大きな声を出していたから、場所を移す事にする。


男1人を担いだが問題なく移動できる。

賢者は諦められているのか、あまり人は来ないようだが、鍵を破壊したので見つかれば誰かが拐ったことがすぐにわかるだろう。

なるべく早く移動しなくては。

一旦、正人たちのところに戻る。

「賢者を連れてきた。だが洗脳のせいで反応がない。できれば治療をしたいのだが、どこか適当なところはないか?」

「マルコイさん。ここから西に行って、聖都の外れにある神殿が今誰も住んでいないと聞いてます。そこであれば。」

恵がすぐに答えてくれた。

「マルコイ!卓は‥卓は治るの?」

「わからん。だが最善は尽くしてみる。」

「お願い!」

「賢者が監禁されていた部屋の鍵を入るために壊してきた。そう遅くなく気づかれるはずだ。お前たちもその教会に移動しろ。」

「わかったわ!」

俺は賢者を抱えたまま街を疾走する。

西の外れにある教会‥

あれかっ!



俺の目の前には廃墟と化した教会があった。
女神を祀ってる国で廃墟化している教会って‥

本来はありえない事なんだろうが、今は助かる。

鍵もついていない扉を開けて中に入る。

中は灯りもなく、真っ暗だった。


しかし‥


誰かいるな‥

「誰かいるのか!?」

俺は問いかける。

反応はないようだ‥

俺はいつ攻撃されてもいいように、賢者を横たわらせて辺りを探る。

「この時間にこんな辺鄙な所になんのようだ?見たところ騎士団ではなさそうだが‥?」

そう言いながら、1人の男が暗がりから出てきた。

他にも数人隠れているようだが‥

こんな時間に集まっているくらいだ。
神聖国側の人ではないはずだが‥


「すまない。騎士ではないが、諸事情で人気のない場所を探してここに着いた。迷惑をかけるつもりはない。仲間と待ち合わせしているから、少しでいいから場所を貸してもらえないか?」

盗賊なら仲間が来るとわかれば襲ってくるかもしれない。
だがそれ以外なら‥

「なるほど。」

男は灯りをつける。

40代後半くらいだろうか。
煤けた灰色の髪を短く刈り込んでいる。

「ほう‥黒髪か‥その寝ている男は勇者のようだな‥何故この時間に勇者を連れて移動している?内容によっては‥」

男は腰の剣を抜く。

「今からここに来るのは勇者たちだ。だから俺は勇者と敵対しているわけじゃない。」

相手がどこに位置する者かわからない。
あまり下手な事は言わない方がいいか‥?

「勇者は聖王の犬だ。ならばお前もその仲間と言ったところか?こいつはいい。その勇者もお前もここで拉致させてもらおうか。」

こいつらはもしかして‥

「それじゃあんたたちは聖王と敵対しているわけか?」

「そうだな‥敵対というわけではない。ただこの国のあり方を変えたいと思っているだけだ。女神を奉るのはわかる。それは俺も変わらん。しかし他の神を認めない、女神こそが唯一神だと布教している今の神聖国を変えたいと思っているだけだ。」

なるほど。
今の俺にとっては好都合だが‥
問題はこの人たちが国を動かせるほどの勢力をもっているかだけど。

「わかったら大人しく縛られるといい。聖王との交渉に使わさせてもらおう。」

「いや、俺たちは聖王から逃げ出して来たんだ。この国を出るつもりでな。俺たちもこの国のあり方に疑問を持っているし、今の聖王では国が滅びると思っている。あんたたちと少し話がしたい。あんたたちはどんな人たちなんだ?」

「なるほどな。まあ話程度ならいいだろう。それに国を出るつもりなら余計にな。俺たちは『タルタルの艶』。この国にタルタル教を布教するのが目的だ。」

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