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港町セイルズ

遊具で遊んでみよう

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いつの間にか遊んでいるはずだったのに緊張感が漂う場所になってしまった。

公平になるように俺が人形をセットして、人形を回す。

「よし。これで準備完了だ。誰からいく?」

「言い出したんはアキーエちゃんやからアキーエちゃんからでいいんやない?」

キリーエがそう言うとアキーエがおもちゃの剣を持ち樽の前に立つ。

「ありがとうキリーエ。それじゃわたしからでいい?」

いや、もうやる気満々じゃないか‥

そして反対の声もなかったのでアキーエから始めるようだ。

ん?
樽が前より横に広がってないか?
何か嫌な予感がするな‥

「アキーエちょっと待っ‥」

俺が声をかけると同時にアキーエがおもちゃの剣を刺す。

すると‥

おもちゃが爆発した‥



バネが強すぎたのが原因だろう‥
作って売る時は少し人形が飛び出すくらいで問題ないと思う。

こんな人形が天井に突き刺さるような強さはいらないはず‥

目の前で破裂したおもちゃを見ながら呆然としているアキーエ‥

「ア、アキーエ大丈夫か?顔に当たったりしなかったか?」

心配して声をかける。

「ふ、ふふふ。こ、これって一回目で人形が飛んだって事でいいのよね‥?」

剣を刺した衝撃で破裂したので、正式には剣を刺した事によって人形が飛んだわけではない。

し、しかし‥

とてもじゃないけど、驚きすぎて少し涙目になっているアキーエにそんな事は言えない‥

「そ、そうだな。アキーエが刺した事によって人形が飛び出したから、アキーエの勝ちになると思うぞ‥」

「あ、ありがとう。お、お願いは今度言うわね。」

「わ、わかった。俺のできる範囲でよろしく頼む。」

ここまでしてお願いしたい事とはなんだろう‥
フラフラとベッドに倒れ込むアキーエを見ながら、優しいお願いだといいなぁと祈るのだった。





とある一室で男が机の上で多量の紙と相対していた。

黒色の髪を短めに整えており、前髪は左から右に流して固めている。
身長は座っていて確認はできないが、それほど高くはないであろう。

印象的なのは日頃書類の仕事が多いためなのか、分厚目の眼鏡をかけている。
少しレンズに色が入っているのか薄暗い感じがする。

男の前にはいくつもの紙の束があった。
かなりの高さに積み上がっているが、男は顔色1つ変えずに黙々と紙にサインをしている。

男が作業している部屋の扉が乱暴に叩かれる。
ノックのつもりだろうが、扉を叩いた者は男の返事も聞かず中に入ってきた。

「おいサントバル!セイルズの市場は確認したか?またホット商会が新しい商品を売り出したぞ!今度は遊具だそうだ!値段も安価だから珍しい事もあって凄い売れ行きだそうだぞ!ふざけやがって!お前が任せとけと言ったからほっといたんだぞ!どうするつもりだ!」

中に入ってきた男はサントバルと呼ばれた男とは対照的で筋肉質な身体つきをしている。
服は商人らしい服を着ているが、その下にある筋肉質な身体つきを隠せていない。
髪は金髪で髪質なのか短くしているせいで針鼠のように逆立ってる。
顔には幾つかの傷があり、その中でも唇の右側に縦に遠目からでもわかるくらいの傷が入っている。

「そうだなダンバル。俺も釘をさして充分と思っていたが違ったらしい。計算違いだな。しかしなぜ今になっていきなりセイルズのホット商会が伸びだした?まさかセイルズにホット商会の会長が来たりしていないよな?」

「それはないだろう。うちから狙われているかもしれないってわかっているのにわざわざ乗り込んでくるか?たかだか商人だろう?それともよっぽど腕の立つやつを連れてきたとか?」

「ふん。その可能性もないことはないか‥まあどちらにしろこのまま放っておくわけにもいかないだろう。『カッカス』と連絡をとってセイルズの店に釘をさせ。これ以上バカな事をしないように派手にな。国の方は私に任せとおけ。いつものように金を握らせておけば問題ないだろう。ただ殺しはするなよ。殺すならこの国以外でだ。そこだけ守れば多少の無理も認めよう。」

「わかった。ひひひひ。面白くなってきたな」

ダンバルと呼ばれた男の笑い声に呼応するようにサントバルの口の笑みも深くなっていった‥
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