上 下
302 / 953
港町セイルズ

冒険者ギルド訪問

しおりを挟む
スキャンと名乗った男は40歳位だろうか。
短めの髪に無精髭といった出立ちだ。
髪も整えているというよりも無造作に自分で切ったといった感じである。

朝訪ねた時に夜来たら会えると言われて来たが、もしかして待っていてくれたのだろうか?

「ああ。俺はロッタスから来た冒険者のマルコイだ。ロッタスの冒険者ギルドのギルドマスターから手紙を預かって来ている。おそらく俺たちがこの国に来た理由が書いてあると思う。」

スキャンは俺が懐から出した手紙をもらう。
そしてその手紙をその場で読み出した。

「なるほどな。」

スキャンは手紙を読みながら頷く。

「確かにお前らがセイルズに来た理由が書いてある。そしてよければお前に助力してやってくれとな。しかし‥俺にも立場がある。お前が今のこのセイルズ‥いやロンギル共和国を変える程の力があるのかは疑わしい‥」

そうスキャンが呟くと、それまで動かずにいた昼間会った少年が持っていたナイフを投げる。

俺は首を動かしてナイフを避ける。
危ないな。
動かなかったら頬が切れるとこだったぞ。

「「なっ!」」

2人して驚いた表情をしている。

「おい。イザベラさんの紹介だから大人しくしているが、喧嘩を売られてるのか?もしそうだとしたらやめてもらえるか?イザベラさんには恩があるからな。その知り合いの人と揉めたくはない。もし気に食わないのならもうここには来ないから。」

「お前よくライリーのナイフが見えたな。ライリーがいるのがわかっていたのか?」

ん?
不思議な事を聞くな。

「わかっていたも何も最初からそこにいただろ?」

最初にギルドに入った時から【察知】でいる事がわかっていた。
それに幾ら薄暗いからといっても目を凝らしたら見えるしな。
ナイフ投げてくるとは思わなかったが‥

「そ、そうか。しかしナイフを躱したからといっても強いとは限らん。そうだな。今から俺と軽く模擬戦でもしてもらおうか?」

助力するにしても俺が強くないと無駄骨って事か。
いきなりナイフ投げてくるような人たち助けてもらうつもりはないが、このまま帰るのも紹介してくれたイザベラさんに悪いな。

「わかった。案内してくれ。」

ギルドの地下は軽く運動できる程度のスペースがあった。
上は今にも崩れそうだったが、地下は割と綺麗にしている。

「得意な武器をとるといい。俺はこう見えてもお前が住んでいる獣人国の闘技会で本戦に出たことがある。つまり冒険者をしていた時はAランクだったって事だ。商人がどこまで闘えるかしらんが、全力でかかってこい。」

ん?
商人?
イザベラさんどんな事書いてたんだ?

「わかった。全力で行かせてもらう。あと俺は商人じゃない冒険者だ。それにあんたの言う闘技会では一応優勝している。」

そう言って壁に立てかけてある木剣をとる。

握りを確かめて構える。

「は?商人じゃない?闘技会優勝?ちょ、ちょっと待て。少し話し合う必要がありそうな気がするぞ。」

「いや、話し合う必要はない。もしかしたら俺が言ってる事が嘘かもしれないだろ。それなら実際に闘って証明した方が早いだろ。」

俺はエンチャント:風を使う。

「いや、ちょっと待て。一度話し合おう!な!な!」

「それじゃこれで証明になるかわからんが、行くぞ。」

俺は脱力した状態から身体が倒れる力を利用して前にダッシュする。

「ちょ!ちょ!待って!待って!」

俺は身体を起こし、スキャンの正面から頭に木剣を振り下ろす。

そしてスキャンの顔ギリギリで木剣を止める。

「うびゃっ!」

スキャンは不思議な声を出してその場に尻餅をつく。

「これでよかったか?」

スキャンは尻餅をついた状態でコクコクと頷く。

「手紙に何て書いてあったか知らないが、いきなり人に向かってナイフを投げるのはどうかと思うぞ。それにイザベラさんの紹介だから模擬戦に乗ったが、本来なら無視して帰るとこだ。それじゃあな。」

横柄な対応にはそれなりの対応をしないとな。
俺は木剣をスキャンに投げ渡して地下室を後にした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

拾った宰相閣下に溺愛されまして。~残念イケメンの執着が重すぎます!

枢 呂紅
恋愛
「わたしにだって、限界があるんですよ……」 そんな風に泣きながら、べろべろに酔いつぶれて行き倒れていたイケメンを拾ってしまったフィアナ。そのまま道端に放っておくのも忍びなくて、仏心をみせて拾ってやったのがすべての間違いの始まりだった――。 「天使で、女神で、マイスウィートハニーなフィアナさん。どうか私の愛を受け入れてください!」 「気持ち悪いし重いんで絶対嫌です」  外見だけは最強だが中身は残念なイケメン宰相と、そんな宰相に好かれてしまった庶民ムスメの、温度差しかない身分差×年の差溺愛ストーリー、ここに開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜

黒城白爵
ファンタジー
 とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。  死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力を受け取り、第二の人生の舞台である以前とは別の異世界へと送り出された。  自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。  取り敢えずの目標は世界最高ランクの冒険者。  使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。 ※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。

魔力吸収体質が厄介すぎて追放されたけど、創造スキルに進化したので、もふもふライフを送ることにしました

うみ
ファンタジー
魔力吸収能力を持つリヒトは、魔力が枯渇して「魔法が使えなくなる」という理由で街はずれでひっそりと暮らしていた。 そんな折、どす黒い魔力である魔素溢れる魔境が拡大してきていたため、領主から魔境へ向かえと追い出されてしまう。 魔境の入り口に差し掛かった時、全ての魔素が主人公に向けて流れ込み、魔力吸収能力がオーバーフローし覚醒する。 その結果、リヒトは有り余る魔力を使って妄想を形にする力「創造スキル」を手に入れたのだった。 魔素の無くなった魔境は元の大自然に戻り、街に戻れない彼はここでノンビリ生きていく決意をする。 手に入れた力で高さ333メートルもある建物を作りご満悦の彼の元へ、邪神と名乗る白猫にのった小動物や、獣人の少女が訪れ、更には豊富な食糧を嗅ぎつけたゴブリンの大軍が迫って来て……。 いつしかリヒトは魔物たちから魔王と呼ばるようになる。それに伴い、333メートルの建物は魔王城として畏怖されるようになっていく。

悪意か、善意か、破滅か

野村にれ
恋愛
婚約者が別の令嬢に恋をして、婚約を破棄されたエルム・フォンターナ伯爵令嬢。 婚約者とその想い人が自殺を図ったことで、美談とされて、 悪意に晒されたエルムと、家族も一緒に爵位を返上してアジェル王国を去った。 その後、アジェル王国では、徐々に異変が起こり始める。

はずれスキル『模倣』で廃村スローライフ!

さとう
ファンタジー
異世界にクラス丸ごと召喚され、一人一つずつスキルを与えられたけど……俺、有馬慧(ありまけい)のスキルは『模倣』でした。おかげで、クラスのカースト上位連中が持つ『勇者』や『聖女』や『賢者』をコピーしまくったが……自分たちが活躍できないとの理由でカースト上位連中にハメられ、なんと追放されてしまう。 しかも、追放先はとっくの昔に滅んだ廃村……しかもしかも、せっかくコピーしたスキルは初期化されてしまった。 とりあえず、廃村でしばらく暮らすことを決意したのだが、俺に前に『女神の遣い』とかいう猫が現れこう言った。 『女神様、あんたに頼みたいことあるんだって』 これは……異世界召喚の真実を知った俺、有馬慧が送る廃村スローライフ。そして、魔王討伐とかやってるクラスメイトたちがいかに小さいことで騒いでいるのかを知る物語。

仮面を被った模倣犯

須藤真守
ミステリー
都内で起こる連続猟奇殺人事件。被害者には必ず能面を着けられた状態で発見されることから犯人は“マスク”と呼ばれている。その被害者数は50人を上回る。そんなある日、“マスク”と思われる妖艶な美女・明日奈は重度の怪我を負わされた状態で発見され逮捕される。彼女も容疑を認めたが「この9人は私ではない」と言い出す。彼女は牢に入れられ、死刑判決が出されるが事件はなぜかまだ続いたままだった…。警察はまだ共犯者がいると判断し、捜査を進めるが事件はスピードを増すばかり。 そんな中、警視庁の嫌われ者の刑事・孝宏は犯行を模倣犯の仕業と目論み、模倣犯の正体を暴くためにも彼女に協力を求める。 そして常に監視するという条件で30日間の仮釈放が認められたが… 殺人鬼と刑事がタッグを組む、新感覚タイムリミット・サイコサスペンス開幕。

来訪神に転生させてもらえました。石長姫には不老長寿、宇迦之御魂神には豊穣を授かりました。

克全
ファンタジー
ほのぼのスローライフを目指します。賽銭泥棒を取り押さえようとした氏子の田中一郎は、事もあろうに神域である境内の、それも神殿前で殺されてしまった。情けなく申し訳なく思った氏神様は、田中一郎を異世界に転生させて第二の人生を生きられるようにした。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

処理中です...