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4章 魔族暗躍

スキル【勇者】

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完全に目測を誤った。まさかここまでの実力差があるとは思わなかった。
ミミウの盾士の力と俺の剣闘士の力があれば勝てないまでも時間稼ぎくらいはできると思っていた‥

そんな甘い考えのせいでアキーエの命が奪われようとしている。

どうにかして身体を動かそうとするが、まるで自分の身体じゃないようで這いずるのが精一杯だった。

魔法で回復をしようとするが、魔力がうまく纏まらない‥

喉の奥から血が迫り上がってくる。
内臓をやられたのだろう。身体から力が抜けていく。

(すまないアキーエ、ミミウ‥‥‥)




(ピコーンッ)

『著しい身体能力低下を確認しました。周囲に魔族を確認。模倣スキル【勇者】を一時的に開放します。開放時間は120秒になります。』

『模倣スキル【勇者】の能力により、身体機能が向上します。』

(な、なんだ?)

突然頭の中に鳴り響く音と機械的な声‥
呆然としていたマルコイだったが、身体に力が戻り纏まらなかった魔力も今は操作できるようになった。

「彼の者を癒せ!」

マルコイの身体が光り身体の痛みが薄れていく。

「なんだか知らんが助かった!考察は後だ!おい、魔族!お前の相手はまだ俺だっ!」

アキーエに歩み寄っていたザックタルトに向かい猛スピードで迫るマルコイ。

(なんだこのスピードは!自分の身体じゃないみたいだ!でもこの力なら‥)



気配を察したのか、こちらを振り向くザックタルト。

「ふん。お前との格付けは終わっている。邪魔をするな。」

マルコイに対して薙ぎ払うように腕を振るう。
それを盾で逸らす。膂力の差で逸らすことすら出来なかったザックタルトの腕がポンッと上に弾かれる。そして隙だらけになった腕に渾身の剣を振るう。

先程まで弾かれていた剣はあっさりとザックフルトの腕を斬り落とす。

「なっ!なんだと?」
明らかに動揺するザックタルト。

『開放時間残り60秒です』

信じられないくらい身体が動く。
しかし開放時間が60秒を切ったな。
開放時間が終わった後に何があるかわからない。リスクもなしにこれ程の力が得られるとは思えないからな‥

「光矢!」

マルコイは光の矢をザックタルトの斬り落とした右腕側から放つ。

ザックタルトは矢を無意識に右手で弾こうとして一瞬の隙がうまれる。
矢を放つと同時に動き出したマルコイは、左手で光の矢を弾いたザックタルトの脚に剣を突き刺す。

モンスターとの戦闘で脆くなっていたのか、その剣はザックタルトの脚に刺さったまま半ばあたりから折れた。

「き、貴様!いったい何をした?何故急に‥くそっ!」

ザックタルトは脚に刺さった剣を力任せに引き抜くと、マルコイを睨みつける。

「ゆ、ゆるさん!殺してやるっ!」

脚を引きずっているとは思えないスピードでザックタルトがマルコイに迫ってくる。

身構えるマルコイに絶望的な機械音が頭に響く。

『開放時間が終了しました。模倣スキル【勇者】の使用を凍結します』

それと同時に全身の力が抜ける。そして身体中に猛烈な痛みが走る。

「ぐっ‥」

スキルを無理矢理使用した反動でマルコイは指の一本すら動かす事が出来なくなっていた。

ザックタルトが突進しながら残っている左腕に力を込める。

「岩土槍!」

声がしたと同時くらいにザックタルトの足下から岩で出来たような槍が現れる。

「なっ!」

岩の槍は刺さらなかったものの、大きく後退させられるザックタルト。

「な!今のでダメージ喰らわないなんて硬いわね。」

マルコイの後ろから声が聞こえる。痛みに耐えながら首だけ後ろを向かせると4人組のパーティがこちらに駆け寄ってくる。

熊の獣人だろうか?大きな身体にタワーシールドを持った毛深い男がマルコイの前に位置取る。

「時間稼ぎ感謝する。もう大丈夫だ。あの魔族は俺たちで相手する。」

「Aランクパーティの『折れない翼』だ!助かった。」

周りから歓声が上がる。

「た、助かったのか‥」

そのまま崩れ落ちるよう座り込むマルコイ。

すぐにアキーエが駆けつけてマルコイの身体を支える。

「ありがとうアキーエ。ミミウは大丈夫なのか?」

「うん。魔族に飛ばされたけど気絶してただけで、怪我は大した事ないみたい。でも動けないから、後方に運んでもらってる。」

「そっか‥」

そしてそれを聞いたマルコイは意識を手放したのだった。




マルコイが気絶した後も戦いは続いた。

魔族も最後まで抵抗したが、片腕で機動力も削がれていたためかAランクパーティの『折れない翼』の連携になすすべなく討ち取られた。

魔王の関与も疑われ、魔族との戦闘中に情報を引き出そうとしたが、関与が疑われるような情報もなく、今回の氾濫は偶発的なものだと結論づけられた。

騎士団、冒険者合わせて死者50名程度、重傷者100名程の被害を出したモンスターの氾濫は終幕するのだった。
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