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第87話 助太刀
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警官達は困惑していた。
彼らはここまでの道案内を任せていた駐在に注目する。
その駐在、加納はいきなり叫ぶと、他の警官を突き飛ばして走り出した。
「畜生めっ」
加納は星原の首に腕を回し、彼女の頭に拳銃を押し付ける。
突然の暴挙に警察達は狼狽えた。
「な、何をしているんだ!?」
「うるせえ! こいつを殺されたくなけりゃ道を開けろ!」
加納は怒鳴って要求する。
語気の荒さとは対照的に、その顔は少なくない焦りを浮かべていた。
「くそ、誰が吐きやがった! 村を売って有耶無耶にする計画が台無しだっ!」
「あんたが勝手に自滅したんでしょ。勘違いとかハッタリかもしれなかったのに」
冷淡に指摘したのは佐伯だった。
彼女は静かな怒りを見せながら加納と対峙する。
「あんたのことを教えてくれたのは伊達さんよ」
「あのヤブ医者め……やはり裏切り者だったか。見つけ出して殺してやる」
憎々しげに唸る加納は、星原が腕を叩いてくることに気付く。
ほとんど痛みのない強さだったが、今の彼の神経を逆撫でするには十分な強さだった。
「何じゃ。命乞いしても放さんぞ。お前は人質じゃ」
「一つあなたに伝えなければいけないことがあります」
拳銃を突き付けられても星原は落ち着き払っていた。
彼女は堂々とした態度で宣告する。
「あなたの寿命は一分を切りました。遺言の用意を推奨します」
「はあ……?」
首を傾げた加納は、その直後に顔を真赤にして激怒した。
興奮する彼は拳銃の引き金に力を加えようとする。
「ふざけるなァ! それで挑発のつもりか! もうええわい、見せしめにお前をぶち殺して――」
発砲の直前、遠くから数人の男達が走ってくる。
男達は村の人間だった。
それを目にした加納は勝ち誇った様子で笑う。
「ははは! よし、応援が来たぞ! これで形勢逆転じゃァ!」
加納の笑い声を不気味なエンジン音が掻き消す。
走る村人達が後ろからのハイビームで照らされる。
夜闇から現れたのは殺戮装甲車"方舟"だった。
村人達は加納の助太刀にしたのではなく、方舟から逃げてきたのであった。
ほどなくして、村人達は方舟に轢き潰された。
それでも方舟は止まらず、景気よくクラクションを鳴らしながら突進してくる。
警察は大慌てで道の脇に退避した。
佐伯もすぐさま走って逃げる。
加納は星原を掴んだまま横に動き、間一髪で突進を回避した。
加納は安堵するも、その表情をすぐに凍らせる。
走り去る方舟はワイヤーを尻尾のように垂らしていた。
ワイヤーの先端には何かが付属している。
地面をバウンドしながら引きずられるのは、銛で腹を貫かれた村長だった。
走り去る方舟の加速に合わせて村長の躍動も激しくなる。
すれ違う際、遠心力を乗せた仕込み杖が加納の首を刎ねた。
彼らはここまでの道案内を任せていた駐在に注目する。
その駐在、加納はいきなり叫ぶと、他の警官を突き飛ばして走り出した。
「畜生めっ」
加納は星原の首に腕を回し、彼女の頭に拳銃を押し付ける。
突然の暴挙に警察達は狼狽えた。
「な、何をしているんだ!?」
「うるせえ! こいつを殺されたくなけりゃ道を開けろ!」
加納は怒鳴って要求する。
語気の荒さとは対照的に、その顔は少なくない焦りを浮かべていた。
「くそ、誰が吐きやがった! 村を売って有耶無耶にする計画が台無しだっ!」
「あんたが勝手に自滅したんでしょ。勘違いとかハッタリかもしれなかったのに」
冷淡に指摘したのは佐伯だった。
彼女は静かな怒りを見せながら加納と対峙する。
「あんたのことを教えてくれたのは伊達さんよ」
「あのヤブ医者め……やはり裏切り者だったか。見つけ出して殺してやる」
憎々しげに唸る加納は、星原が腕を叩いてくることに気付く。
ほとんど痛みのない強さだったが、今の彼の神経を逆撫でするには十分な強さだった。
「何じゃ。命乞いしても放さんぞ。お前は人質じゃ」
「一つあなたに伝えなければいけないことがあります」
拳銃を突き付けられても星原は落ち着き払っていた。
彼女は堂々とした態度で宣告する。
「あなたの寿命は一分を切りました。遺言の用意を推奨します」
「はあ……?」
首を傾げた加納は、その直後に顔を真赤にして激怒した。
興奮する彼は拳銃の引き金に力を加えようとする。
「ふざけるなァ! それで挑発のつもりか! もうええわい、見せしめにお前をぶち殺して――」
発砲の直前、遠くから数人の男達が走ってくる。
男達は村の人間だった。
それを目にした加納は勝ち誇った様子で笑う。
「ははは! よし、応援が来たぞ! これで形勢逆転じゃァ!」
加納の笑い声を不気味なエンジン音が掻き消す。
走る村人達が後ろからのハイビームで照らされる。
夜闇から現れたのは殺戮装甲車"方舟"だった。
村人達は加納の助太刀にしたのではなく、方舟から逃げてきたのであった。
ほどなくして、村人達は方舟に轢き潰された。
それでも方舟は止まらず、景気よくクラクションを鳴らしながら突進してくる。
警察は大慌てで道の脇に退避した。
佐伯もすぐさま走って逃げる。
加納は星原を掴んだまま横に動き、間一髪で突進を回避した。
加納は安堵するも、その表情をすぐに凍らせる。
走り去る方舟はワイヤーを尻尾のように垂らしていた。
ワイヤーの先端には何かが付属している。
地面をバウンドしながら引きずられるのは、銛で腹を貫かれた村長だった。
走り去る方舟の加速に合わせて村長の躍動も激しくなる。
すれ違う際、遠心力を乗せた仕込み杖が加納の首を刎ねた。
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