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第54話 捕食者
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極彩色の巨体が悶え苦しむ。
片目にナイフの刃が埋まり、滲み出す血液が涙のように伝っていく。
耳の痛くなる絶叫に眉を寄せつつ、松田はナイフの柄部分を見て感心する。
「はっ、悪くねえな」
安藤から渡されたナイフは刃の発射機構を搭載していた。
レバーを握ることで瞬時に攻撃できるのだ。
狙いは大雑把な上に一度きりの使い捨てだが、松田は見事に命中させることができた。
巨体は片目が潰れた痛みで動けない。
松田は手にした猶予で追撃を選択した。
タックルで巨体を突き飛ばすと、連続で蹴りを見舞う。
武器はもう残っていないので必死だった。
「おら! さっさと死ね!」
勢い付いていた松田の蹴りが止まる。
彼の足を屈強な腕が鷲掴みにしていた。
振りほどこうとするがびくともせず、指が万力のように食い込む。
そこから松田は人形のように振り回され、そのまま地面に叩き付けられた。
松田は声を上げて血を吐く。
「うがぁっ!?」
遠心力を乗せた一撃は強烈で、松田は息ができなくなった。
衝撃で脳が揺れて嘔吐し、身体を丸めてせき込む。
頭部からは血が流れ出していた。
(なんて怪力だ……! やっぱ化け物じゃねえかッ!)
松田の足はまだ掴まれていた。
巨体がその足をねじり、無理やり力を加えていく。
すぐさま松田は殴って止めようとするが、足は無情にも可動域を超えようとしていた。
「お、おい。やめろっ」
巨体が一気に体重をかけた瞬間、松田の太腿から凄まじい音が鳴った。
股関節が脱臼したのだ。
あまりの痛みに松田は叫び、激しくのたうち回る。
血も涙も涎も垂らしてみっともなく喚いた。
しかし攻撃は止まらず、同じ要領で左腕の関節も外されてしまった。
松田の叫びがひときわ大きくなる。
さらに掴まれた指先に鋭い痛みを感じた時、松田は肘打ちで抵抗した。
「いってえなクソが! 放せこの野郎ッ!」
咄嗟の反撃は巨体の眉間を捉えた。
松田は拘束を振り払うことに成功するも、自由になった手を見て凍り付く。
五本の指のうち、三本が欠損していた。
ずたずたになった断面は、刃物による切断ではないことを示している。
肘打ちを受けた巨体はくちゃくちゃと咀嚼音を立てていた。
自分の指が食われたと理解し、松田は呆然とする。
「う、嘘だろ」
巨体が自らの頭部を掻き毟る。
激しい動きに引っ張られた鱗の一部が裂け、顔面を中心に切れ目ができた。
めくれた切れ目の奥には、大きく開いた口があった。
黄ばんだ歯や青黒くなった舌が覗いている。
無事な片目が松田をしっかりと見つめていた。
「こ、こいつは……」
松田が呟くと同時に、巨体が彼を押し潰す。
顔面に歯が食い込む痛みを最後に、松田の意識は途切れた。
片目にナイフの刃が埋まり、滲み出す血液が涙のように伝っていく。
耳の痛くなる絶叫に眉を寄せつつ、松田はナイフの柄部分を見て感心する。
「はっ、悪くねえな」
安藤から渡されたナイフは刃の発射機構を搭載していた。
レバーを握ることで瞬時に攻撃できるのだ。
狙いは大雑把な上に一度きりの使い捨てだが、松田は見事に命中させることができた。
巨体は片目が潰れた痛みで動けない。
松田は手にした猶予で追撃を選択した。
タックルで巨体を突き飛ばすと、連続で蹴りを見舞う。
武器はもう残っていないので必死だった。
「おら! さっさと死ね!」
勢い付いていた松田の蹴りが止まる。
彼の足を屈強な腕が鷲掴みにしていた。
振りほどこうとするがびくともせず、指が万力のように食い込む。
そこから松田は人形のように振り回され、そのまま地面に叩き付けられた。
松田は声を上げて血を吐く。
「うがぁっ!?」
遠心力を乗せた一撃は強烈で、松田は息ができなくなった。
衝撃で脳が揺れて嘔吐し、身体を丸めてせき込む。
頭部からは血が流れ出していた。
(なんて怪力だ……! やっぱ化け物じゃねえかッ!)
松田の足はまだ掴まれていた。
巨体がその足をねじり、無理やり力を加えていく。
すぐさま松田は殴って止めようとするが、足は無情にも可動域を超えようとしていた。
「お、おい。やめろっ」
巨体が一気に体重をかけた瞬間、松田の太腿から凄まじい音が鳴った。
股関節が脱臼したのだ。
あまりの痛みに松田は叫び、激しくのたうち回る。
血も涙も涎も垂らしてみっともなく喚いた。
しかし攻撃は止まらず、同じ要領で左腕の関節も外されてしまった。
松田の叫びがひときわ大きくなる。
さらに掴まれた指先に鋭い痛みを感じた時、松田は肘打ちで抵抗した。
「いってえなクソが! 放せこの野郎ッ!」
咄嗟の反撃は巨体の眉間を捉えた。
松田は拘束を振り払うことに成功するも、自由になった手を見て凍り付く。
五本の指のうち、三本が欠損していた。
ずたずたになった断面は、刃物による切断ではないことを示している。
肘打ちを受けた巨体はくちゃくちゃと咀嚼音を立てていた。
自分の指が食われたと理解し、松田は呆然とする。
「う、嘘だろ」
巨体が自らの頭部を掻き毟る。
激しい動きに引っ張られた鱗の一部が裂け、顔面を中心に切れ目ができた。
めくれた切れ目の奥には、大きく開いた口があった。
黄ばんだ歯や青黒くなった舌が覗いている。
無事な片目が松田をしっかりと見つめていた。
「こ、こいつは……」
松田が呟くと同時に、巨体が彼を押し潰す。
顔面に歯が食い込む痛みを最後に、松田の意識は途切れた。
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