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1.出会い
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◇◇◇◇
人間の出生バランスが崩れてから500年余り。
それ以前、つまりバランスが最悪になった頃は男女比率が1:9になっており、男が絶滅する寸前になったが、生き残るために人間は遺伝子を弄って交配を繰り返したらしい。
その頃の事は文献にしか残っていなくて本を読まない僕には分からないが、何とかうまくいったらしい。
但し、今はもう純粋な人間同士の子供がいないと言われている。
人類は遺伝子操作によって様々な生き物の特性を持った人造人間を作り出しては、それを繁殖させてまた新たな特性を持った人造人間を作り出す……そんな事をずっと繰り返してきたのだから仕方ない。
だから今は見た目は人間でも何かしらの動物の特性を持っているのが当たり前なのだ。
人類が絶滅しなかったのは大成功だか、かつては獣の性欲求が強まった時期があり、性犯罪が増えたらしい。
今は性欲求は程々に調節出来るようになったらしいけれど、その時代に慰み用だけに開発された人権も無い人型動物が今でもペットショップで売られている。
ぱっと見た姿は人間だが動物の耳や尻尾などがあって『獣人』と呼ばれ、人間とは区別されている。
一応現在は、過度なペットの繁殖や飼育について動物保護法が改訂されて性処理だけに買うことは出来なくなった。
だって購入するにも飼育するにも人間一人分と同じくらいの金がかかるし、人間が増えて人数も男女比も安定したのだからわざわざペットと交尾しなくっても良いもんね。
だから今は金持ちの道楽としてしか扱われなくなっている。
そんな僕も獣人だ。
猫型で、金と水色のオッドアイがチャームポイントかな。
短毛種なので抜け毛も少なくて飼いやすいとペットショップの店員は、お客様が来ると説明してたっけ。
ただ僕はオスだったから、なかなか買い手がつかなかった。
猫型はメスの方が人気なんだよね。
犬型だったらオスの方が人気だけれど。
僕は売れる時期を逃して、販売ケージから外されて売り物の獣人達の世話係を任されていた。
獣人同士の方が微妙な要求とかが伝わりやすくて、人間に世話されるよりストレスが軽減されるんだ。
でも、たまたま昨日はケージの子達が立て続けに売れてしまい、次の入荷まで空けておくのも見栄えが悪いので、僕が空いたケージに入れられた。
こんな日は雑用をしなくて良いから楽チン。
二畳くらいのスペースだけどクッションも毛布もあり、ゴロゴロしてても怒られない。
は~、天国。
うとうとしていたら店長さんと誰かの会話が聞こえてきた。
お客さんかな?
聞き慣れない低音の声が擽ったくてピピピと耳が震える。
「こちらなんていかがですか?入荷したてです」
「いや、オスがいい」
オスって言ってもどうせ犬型に決まっていると他人事に捉えて、僕は毛布を抱き枕にして身体を丸めた。
カツカツと歩く音が聞こえるから可愛い子を吟味しているのだろう。
「猫型のオスもいるのか?あまり幼くない方が良い」
「はい。ちょうどお客様のご要望通りの子がおります。少々育ち過ぎかもしれませんが」
足音か近付いてきた。
もしかしてこっちにくる?!
まさかこっちに来るとは思っていなかったから慌てて上半身を起こそうと顔を上げた時には、もうそこに客が立っていた。
その後ろの店長は渋い顔をしている。
悪かったね。来るとは思わなかったんだよ。
「猫は寝るのが好きなので。はははっ。ほら、起きてご挨拶しなさい」
「こんにちは、旦那様。猫型のオスで17歳です」
ちなみに獣人も人間と同じくらいの寿命。
ただ、成人するまでの成長速度は人間の4~7倍でかなり早め。だからあっという間に僕は売れる時期を逃したということだ。
売れずに残ったら、ペットショップの雑用や売れて行ったペットのお世話係として雇われることが多い。
人間社会にある派遣会社みたいな所に登録して、給料ももらえるんだ。
20歳を越えても買い手がつかなかったり、歳を取る前に飼い主が亡くなったりしたら登録してもらえるようだ。
「働き者で、歳を取ったぶん自分自身の世話なら出来ますし、お値段も割引価格です」
「値段は幾らでも良い。金ならあるし、世話係も必要なら付ける」
結構なお金持ち?
もしかして僕も悠悠自適な生活が出来る?
「これを」
カードみたいな物を店長に渡したら、カードの裏を見て店長が眉を顰めた。
あれは、大きさ的に身分証かな?
飼う時には身分証の登録が必要だもんね。お世話係してた時によく見たから知ってるよ。
「ライオン種に……ウサギもですか。ご苦労されてますね」
「ああ」
「それならば余計にメス型の方が良いのではないですか?」
「女は面倒臭い」
「あ~……、そちらでもご苦労なさったんですね」
二人の会話の意味が分からなくて、僕は二人を交互に見やる。
「それに俺の遺伝子だと獣人でもメスを孕ませる可能性があるからオスが良いんだ」
「そうなんですか。では、あとはこの子の同意次第ですね」
店長が僕を見た。
え?なんの話? 同意って何? それにさっきから気になってるんだけど。はらませって何?
分からないけど僕はオスだから関係ないか。
「応接室にご案内します。お前も身なりを整えて応接室に来るんだ。寝癖ついてるぞ」
ひぃいいいっ!早く言ってよ!恥ずかしいっ!
僕は両手で頭を隠した。
人間の出生バランスが崩れてから500年余り。
それ以前、つまりバランスが最悪になった頃は男女比率が1:9になっており、男が絶滅する寸前になったが、生き残るために人間は遺伝子を弄って交配を繰り返したらしい。
その頃の事は文献にしか残っていなくて本を読まない僕には分からないが、何とかうまくいったらしい。
但し、今はもう純粋な人間同士の子供がいないと言われている。
人類は遺伝子操作によって様々な生き物の特性を持った人造人間を作り出しては、それを繁殖させてまた新たな特性を持った人造人間を作り出す……そんな事をずっと繰り返してきたのだから仕方ない。
だから今は見た目は人間でも何かしらの動物の特性を持っているのが当たり前なのだ。
人類が絶滅しなかったのは大成功だか、かつては獣の性欲求が強まった時期があり、性犯罪が増えたらしい。
今は性欲求は程々に調節出来るようになったらしいけれど、その時代に慰み用だけに開発された人権も無い人型動物が今でもペットショップで売られている。
ぱっと見た姿は人間だが動物の耳や尻尾などがあって『獣人』と呼ばれ、人間とは区別されている。
一応現在は、過度なペットの繁殖や飼育について動物保護法が改訂されて性処理だけに買うことは出来なくなった。
だって購入するにも飼育するにも人間一人分と同じくらいの金がかかるし、人間が増えて人数も男女比も安定したのだからわざわざペットと交尾しなくっても良いもんね。
だから今は金持ちの道楽としてしか扱われなくなっている。
そんな僕も獣人だ。
猫型で、金と水色のオッドアイがチャームポイントかな。
短毛種なので抜け毛も少なくて飼いやすいとペットショップの店員は、お客様が来ると説明してたっけ。
ただ僕はオスだったから、なかなか買い手がつかなかった。
猫型はメスの方が人気なんだよね。
犬型だったらオスの方が人気だけれど。
僕は売れる時期を逃して、販売ケージから外されて売り物の獣人達の世話係を任されていた。
獣人同士の方が微妙な要求とかが伝わりやすくて、人間に世話されるよりストレスが軽減されるんだ。
でも、たまたま昨日はケージの子達が立て続けに売れてしまい、次の入荷まで空けておくのも見栄えが悪いので、僕が空いたケージに入れられた。
こんな日は雑用をしなくて良いから楽チン。
二畳くらいのスペースだけどクッションも毛布もあり、ゴロゴロしてても怒られない。
は~、天国。
うとうとしていたら店長さんと誰かの会話が聞こえてきた。
お客さんかな?
聞き慣れない低音の声が擽ったくてピピピと耳が震える。
「こちらなんていかがですか?入荷したてです」
「いや、オスがいい」
オスって言ってもどうせ犬型に決まっていると他人事に捉えて、僕は毛布を抱き枕にして身体を丸めた。
カツカツと歩く音が聞こえるから可愛い子を吟味しているのだろう。
「猫型のオスもいるのか?あまり幼くない方が良い」
「はい。ちょうどお客様のご要望通りの子がおります。少々育ち過ぎかもしれませんが」
足音か近付いてきた。
もしかしてこっちにくる?!
まさかこっちに来るとは思っていなかったから慌てて上半身を起こそうと顔を上げた時には、もうそこに客が立っていた。
その後ろの店長は渋い顔をしている。
悪かったね。来るとは思わなかったんだよ。
「猫は寝るのが好きなので。はははっ。ほら、起きてご挨拶しなさい」
「こんにちは、旦那様。猫型のオスで17歳です」
ちなみに獣人も人間と同じくらいの寿命。
ただ、成人するまでの成長速度は人間の4~7倍でかなり早め。だからあっという間に僕は売れる時期を逃したということだ。
売れずに残ったら、ペットショップの雑用や売れて行ったペットのお世話係として雇われることが多い。
人間社会にある派遣会社みたいな所に登録して、給料ももらえるんだ。
20歳を越えても買い手がつかなかったり、歳を取る前に飼い主が亡くなったりしたら登録してもらえるようだ。
「働き者で、歳を取ったぶん自分自身の世話なら出来ますし、お値段も割引価格です」
「値段は幾らでも良い。金ならあるし、世話係も必要なら付ける」
結構なお金持ち?
もしかして僕も悠悠自適な生活が出来る?
「これを」
カードみたいな物を店長に渡したら、カードの裏を見て店長が眉を顰めた。
あれは、大きさ的に身分証かな?
飼う時には身分証の登録が必要だもんね。お世話係してた時によく見たから知ってるよ。
「ライオン種に……ウサギもですか。ご苦労されてますね」
「ああ」
「それならば余計にメス型の方が良いのではないですか?」
「女は面倒臭い」
「あ~……、そちらでもご苦労なさったんですね」
二人の会話の意味が分からなくて、僕は二人を交互に見やる。
「それに俺の遺伝子だと獣人でもメスを孕ませる可能性があるからオスが良いんだ」
「そうなんですか。では、あとはこの子の同意次第ですね」
店長が僕を見た。
え?なんの話? 同意って何? それにさっきから気になってるんだけど。はらませって何?
分からないけど僕はオスだから関係ないか。
「応接室にご案内します。お前も身なりを整えて応接室に来るんだ。寝癖ついてるぞ」
ひぃいいいっ!早く言ってよ!恥ずかしいっ!
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