嫌いなアイツ

如月 永

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8.渉

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   ◇◇◇◇

途中からぼんやり記憶がある。
やってしまった。
素面なら絶対にあんな事しないのに、どうしてこうなった。
まぁ完全に酒の勢いなのは分かるけれど。
隣を見ると雄大がスヤスヤ寝息を立てていた。
昨日のアレは夢じゃない。
アンアン喘いで、気持ち良いとか言ってた自分が恥ずかしくて死にたい。
俺は雄大の頬をペチペチ叩いた。
起きてくれないと困る。
「うぅ……ん。渉さん?……おはよ」
「こらっ、雄大っ!またヤりやがったな」
「気持ち良かったです」
雄大はへにょりと幸せそうに微笑んだ。
「気持ち良かったじゃねぇよ!」
雄大は俺の行動を予想したようで、のっそりと起き上がってスマホを見せてきた。
「怒らないって言ったのに。渉さんが誘ったんですよ。これ見てください」
そこには、俺が尻の穴に指を入れている姿が映っている。
俺は顔が真っ赤になった。
「なんていうものを撮ってるんだー!!」
「俺はダメだって言ったのに、渉さんがどうしてもって言うから怒られないよう証拠に撮ったんですよ」
コイツ……。ぬかりない。
それにしても、このアングルからだと俺の尻穴が丸見えじゃないか。
恥ずかしい。
こんなの他の人に見られたら死んでしまう。
俺は必死になって消去させようとした。
しかし、雄大は全力で拒否をする。
「嫌ですよ。せっかく渉さんの可愛い姿を収めたのに」
「消せ!今すぐ消してくれ!頼むから」
「消しません。だって渉さんと俺は友達なんでしょ?もう幸せなセックス出来ないから、記念に残しておくんです!」
「雄大に恋人が出来れば幸せなセックスだって……」
「無神経なこと言わないでください。俺の好きな人は渉さん何ですよ?諦めようとしても渉さんが誘惑するから、俺だって……」
俺は言葉に詰まる。スマホに残っていたようにきっと俺が誘ったのだ。だから後ろめたい。
「俺はお前が恋愛対象にならないって言ったよな?」
「はい、聞きました。じゃあ昨晩は何で俺のこと好きなんて言ったんですか?」
「言った覚えは無い!」
「あー、全部録画しておけば良かった」
「仮に言ってたとしても、酔ってたからだからな」
「酔ってる時の言葉って本心なんじゃないですか?」
俺は図星を突かれてギクリとした。
「うるさい!うるさい!違うって言ってるだろう!?」
「酷い人ですね。セックスしたいって誘ったり、好きだって言ったのも嘘で……。でも俺は渉さんが好きです」
雄大の話を真実とするならば、クズじゃん、俺。
俺は雄大を振ったけど、雄大はそれでも好きでいて、なのに俺は雄大を拒絶ばかりして。
俺も雄大が……好き?
分からない。
でも嫌いではないことは確かだ。
でも好きかと言われると……。
俺が答えに悩んでいると、雄大は悲しそうな顔をした。
そんな顔をさせたかったわけじゃない。
でもどうしたら良いのか分からなくて。
俺が何か言おうとすると、雄大が先に口を開いた。
「ねぇ、渉さんは俺に性処理相手は他で探せと言ったけど、渉さんの方こそ性処理相手が必要なんじゃないですか?」
「どういう意味だよ?」
「そのままの意味です。酔ってたからって俺にセックスをねだるなんて溜まってるんじゃないですか?」
俺が雄大を誘うようなことを言ったのは間違いない。
でもそれは酒のせいだけれど、欲求不満だから……?
「良いんですよ、俺は。渉さんが気持ち良くなってくれれば性処理相手でも」
「えっ?えっ?ちょっ?!どうしてそうなる?!」
俺は混乱していた。
抱きたいのは雄大であって、俺は別に抱かれたいわけじゃ……でも気持ち良かった。
違う違う!そっ、そう!欲求不満だったんだ。うん、仕方ない。
あー、現実逃避してるな。俺。
でも、もしかしたらセックスフレンドとしての関係を続けるのは有りかもしれない。
正直、昨晩の行為は凄く気持ち良くて、癖になりそうだったのだ。
でも調子が良すぎないか?
「あっ、いや、その、待って。もう少し考えさせてくれないか?」
「良いですよ。俺、いくらでも待ちますから」
「ごめん。雄大の気持ちを知ってるのに」
「良いんですよ。俺的には、ちょっと進展かなとか嬉しいですもん」
こうして、俺はまたズルズルと雄大との関係を続けてしまうことになった。

=========


お読み頂きありがとうございました。
続きの更新は予定しておりません。
だって、しばらく素面では恥ずかしがってさせてくれない渉とか、雄大が女と浮気したと誤解して喧嘩して好きだって気付く渉とか、きちんと恋人になったのに渉にちょっかいをかけてくる取引先の遊び人っぽい人登場とか、王道のBL展開しか思い付かないので終了なのです。
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