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僕はその男の手首を鷲掴んでラブホの中に入った。
もう変体し終わったので怠さが引いて、足取りも確かだ。
部屋を選ぶなんて余裕は無かったから、適当に選んだ一室に入る。
そこは不自然に大きな鏡のある広いベッドルームがあるが、案外普通でシンプルな内装だ。
もう部屋に入ってしまったし、男が騒ぎ立てる事なく大人しくここまで来てくれたことに安堵して繋いでいた手を離す。
この人は兎族の僕の正体を知ったら逃げてしまうだろうか。
それ以前にノーマルな男性に男を抱くなんて出来ない可能性は高い。
それならそれで仕方ないと、意を決して僕はニット帽を脱いだ。
隠されていた頭部からは白い兎の長い耳が垂れ下がり、その下の頭髪も白く染まっている。肌色もアルビノみたいに色が抜け、瞳だって紅くなっているはずだ。
例えるならロップイヤーラビットなんて言われる兎と同じ垂れ耳だ。
「こんな所に連れ込んでごめんなさい。具合が悪かったんじゃなくて……僕、こんな身体だから、満月の夜は発情してしまうんです」
ハァハァと熱い吐息混じりに発情しているなんて告白する僕は、端から見ると変態っぽいかもしれない。
でももうそんなことどうでもいいくらいこの人と性行為をしたい気持ちが抑えきれなくなっていた。
僕の身体は明らかに興奮状態だと言っているように腰が揺れる。
そんな恥態を見せる僕は化け物と言われても仕方ないのに幻滅するどころか、男は鼻息荒く迫ってきたのだ。
「それ、コスプレ?」
「え、耳のこと?本物だよ」
ピクピクと兎耳を動かして見せると彼は僕に近寄ってきて、兎の耳を触ってきた。ゴツい指に見合わず優しい力で触れられ、くすぐったくて思わず身をよじった。
「……あったかい。本物なんだ」
「ちょっ、いきなり耳を触るなんてっ!」
「あ、触るのダメだった?ごめんね、初めて見たからテンション上がっちゃった」
そう言って男は僕の頭に注目しながら周りをゆっくり回って隅々まで見る。
僕はいたたまれなくて人間が髪を乱された時と同じように耳の被毛を撫でて身繕った。
周回が3周目に入りそうだったので、僕は一歩後ろに下がって言った。
「あ、あのっ!僕は発情しているとは言いましたが、伴侶を探しているわけではなくてですねっ!」
「はんりょ?」
男は首を傾げた。
周囲を回るという行為は兎の求愛行動だ。だから求愛されたと勘違いしてしまったことに顔が熱くなった。
兎族でもないのに兎の求愛なんて知るわけがないのだ。
「身体もオスだし、兎耳があるから気持ち悪いって言うなら仕方ないですけど……」
「気持ち悪いなんてとんでもない!猫耳でも犬耳でもウサ耳でもケモミミは大好物だよ!」
鼻息荒くそう言われて、僕は喜んで良いものか悩む。
でも僕のこの兎耳を気持ち悪いと思わないのなら、交尾できるかもしれない。
衣服を脱ぎながら相手に乞う。
「じゃあ早くめちゃくちゃにして」
「めちゃくちゃ?耳も撫でていい?」
「発情してるって言ったでしょ!僕はセックスしたいの」
「本当に良いの?食べちゃうよ?」
「いい、からぁっ!早くっ、してよっ!もう我慢出来ないの!」
「分かった」
男はそう言って、僕の腰を抱えてベッドに押し倒した。
意図したわけじゃなかったけれど、脱ぎかけていたズボンのせいでバランスを崩してベッドの上に四つん這いのようになってしまった。
今すぐケツにぶち込んで欲しいとねだったようで恥ずかしくなったが、あながち間違ってもいない。
男は僕のズボンと下着を膝までずりおろした。
「うわぁ、しっぽもある。かぁわいい」
こんなところを触られたら……兎族は気持ち良くなってしまうのだ。
僕は後ろに手を回して尻尾を隠そうとしたがその腕を捕まれて腰の後ろに拘束された。
「尻尾はやめてっ、触っちゃダメです。あふっ!」
男は制止を無視して短な尻尾を根元から尾先に向けて上に撫で上げた。
ゾクゾクと電気が走るように背筋に震えが走って、情けない声を上げてしまった。
男は僕の反応に気を良くしたのか、尻尾を上下に擦ってきたり、根元を指先で揉んでくる。
そうかと思えば急に力が抜けるほど優しくなぞってきたりと愛撫は巧みだった。
僕の股間は痛いくらいに張り詰めて前屈みになっていき、ヘコヘコと媚びを売る用に前後に揺れてしまっていた。
「ねぇ、兎さん。本当に犯しちゃうよ?」
「して!犯して!」
「ウブそうな顔して、いつもそうやって男を誘っているの?」
「いつも?いつもなんてしてない。男の人とホテルに入るのは初めて」
否定したが、男は僕がしょっちゅう発情して男を誘っているのだろうと疑っている。
「本当です。自分でおしり弄ってオナニーはするけど、誰かと交尾したことないです」
「ふぅん、初めての相手に交尾したいなんて言っちゃうんだ」
「だって……、身体が疼いて我慢できなかったから」
付け加えるなら、貴方が憧れの人に似てたからなんて言ったら引かれそうで言えるはずもなかった。
口篭った僕を見て、尻を大きな掌で揉みながら兎耳を唇に挟んでハムハムと弄ぶ。
ゾワッと背筋に甘い痺れが走り、身体から力が抜けてフニャフニャになってしまう。
「本当に?」
「本当だってば!」
「発情した兎ってこんなにエロいんだ。ヤバいね」
男はそう言って僕の身体をひっくり返して仰向けにすると、中途半端に脚に絡まったズボンと下着を脱がせてしまった。
「肌は白いのに、おちんちんはピンク色で美味しそうだね」
「やぁっ、見ないでぇ」
僕は男の視線から逃れるように、股を隠すように脚を閉じようとするが彼はそれを許さず膝を割り開く。
「見ちゃダメなの?じゃあどうして欲しいか教えて?」
僕は自ら足を抱えて腰を少し浮かせると、発情してひくつくアナルに指を引っ掛けて見せた。
すると男からゴクリと喉を鳴らす音が聞こえて、僕の胎内が期待で濡れるのを感じていた。
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