屋根裏のネズミ捕まる

如月 永

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その後のネズミ

27.春助視点

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   ◇◇◇

おかしい。
絶対おかしい。
紫狼はここで働いているはずなのにここ四日ほど姿が見えない。
直末は屋敷内で仕事をしているのだろうなんて言っているけど、何度覗きに言っても紫狼は見つけられなかった。
だから忍び込もうと試みたのだが、独り立ちをしている忍びの俺が、事もあろうに屋敷の中に入る前にあっさり見つかって敷地内に放り出された。
たまたま居合わせたのかもしれないなんて無理やり思い込んで再度挑戦したが、一度ならず何度も失敗するから俺の矜持も自尊心も傷付いた。
紫狼の父は良く知っていて、とてつもない功績を上げた人物であるが、その相棒だった辰彦という人間を俺は知らないから、紫狼の事が心配だった。
「直末ぇ。紫狼大丈夫かな?四日も姿見せないなんて、おかしいよね?」
「紫狼は屋敷の主人を信用してるみたいだったし、もし屋敷にいないなら使いにでも出されたんじゃないかな?直に戻ってくるよ」
「そうかな?」
俺は不安な気持ちを落ち着かせるように、お茶を飲んだ。
そんな俺を見て直末は呆れた顔をして言う。
「……とはいえ、俺達もそろそろ任務が始まる。ここを去る前に紫狼に会ってから帰りたいよなぁ」
「だろ?!そうだろ!」
俺は直末の腕にしがみついた。
「じゃあ作戦立てようぜ!屋敷に忍び込む作戦!」
「は?……お前って、馬鹿だよな。直接紫狼に会わせて欲しいって正面から行けば良いだけだろ?」
「え?」
俺は目を丸くして直末を見つめた。
正面から行けば良かったのか?とあからさまに顔に書いてあったようで、直末は溜息を吐いてから、俺の頭を軽く叩いた。
「ほら行くぞ、ハル」
俺と直末は屋敷へ向かった。
宿からは歩いて15分くらいで到着し、屋敷の正門前で足を止めた。
「なぁ、こういう時って何て言うんだ?『たのもう』?」
「道場破りか、お前は。ごめんくださいで良いだろうが」
ちょうど話かけやすそうな小姓が通ったので、半ば強引に引き止めて紫狼に会いたいと伝えた。
すると小姓は困ったような顔をして、「しばらくお待ちください」と言って駆けて行ってしまった。
待つこと数分、その小姓ががたいの良い男を連れ立って戻ってきた。
あの顔、見覚えがある。
屋敷に忍び込もうとする俺を放り出す奴だ。
また俺達を締め出す気かとガルルルと唸り出しそうな顔で見ているとソイツが門の中へ導いた。
「どうぞ、お上がりください」
あっさり入れた事に拍子抜けしつつ、案内されるままに奥へと進んだ。
何人かの使用人とすれ違ったし、商人独特の事務的な会話が聞こえるから変な仕事をさせられているわけではないと安心出来た。
そして通された座敷には中央の上座に辰彦の作業机があり、その横に紫狼が座っていた。

==========

<紫苑の名前の呼び方について補足> ※読まなくてもOK

●紫苑(※本名)
⇒辰彦、父、母(故人)のみ
●紫狼
⇒忍びの里に関係する人のみ
●四郎
⇒屋敷の人、辰彦(他人がいる場合)

紫狼の発音は四郎と同じ「しろう」です。
だから会話をしているキャラ同士では、違和感なく進んでいます。文章だとややこしくてすみません。
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