アリスの苦難

浅葱 花

文字の大きさ
上 下
9 / 10

<8>

しおりを挟む
<副会長>

宮下 楓(ミヤシタ カエデ)







「紘が、笑った…」


転入生のつぶやきが聞こえた。


「…僕が笑ったらおかしいか?」


「そういう事じゃなくて!…初めて笑ったところ見たから、意外で」


慌てたようにそういった転入生は、ほんのり顔が赤くなっていた。


(風邪か…?)


「チッ…」


うつされたくないなぁ、そんな呑気な事を考えていたらすぐ近くで舌打ちが聞こえた気がした。


「…あお先輩?」


「ん?どうかした?」


まさかと思いあお先輩に声をかけるも、いつもの笑顔が返される。


(やっぱり気のせいか)


なんでもないです、と答え転入生と氷室の方を向く。

二人ともなんとも言えない微妙な顔をしていた。


「猫被りか」


氷室が呟く。


「どうとでも」


それにあお先輩が答える。

僕にはさっぱり意味はわからなかったけど、あお先輩には伝わったらしい。

なんとなく高坂を見る。

目が合うと、ヘラリと笑われた。






「あのさ…聞いてもいいか?」


転入生が言葉を発する。

何を、なんて野暮な事を聞かなくても分かった。


「大雅達からなんとなく話は聞いたんだ、でも俺信じられなくて…だから紘の口から本当の事を知りたい」


そういえば、会長がそんな事言ってたな…。

話を聞かされても、なお僕を信じようとしてくれる。

僕も転入生の、佐々木彼方の事を信じてもいいんだろうか。

でも、信じて話して軽蔑されたら…?

信じたいのに信じていいのか分からない。


沈黙を破ったのは、佐々木彼方だった。


「話したくないなら無理にとは言わないから」


「話したくないわけじゃない、そうじゃなくて…」


話した後に嫌われたくないんだ。


ふー、と息を吐き覚悟を決める。


「これから話す事は、あんまりいい話じゃない…それでも聞いてくれる?」


「紘が話してくれるなら、ちゃんと聞くよ」


「分かった」


緊張しているのが自分でも分かる。

今でもあの時の事を思い出すと、体が震えてくる。

それでも伝えるために口を開いた。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

最弱伝説俺

京香
BL
 元柔道家の父と元モデルの母から生まれた葵は、四兄弟の一番下。三人の兄からは「最弱」だと物理的愛のムチでしごかれる日々。その上、高校は寮に住めと一人放り込まれてしまった!  有名柔道道場の実家で鍛えられ、その辺のやんちゃな連中なんぞ片手で潰せる強さなのに、最弱だと思い込んでいる葵。兄作成のマニュアルにより高校で不良認定されるは不良のトップには求婚されるはで、はたして無事高校を卒業出来るのか!?

BLドラマの主演同士で写真を上げたら匂わせ判定されたけど、断じて俺たちは付き合ってない!

京香
BL
ダンサー×子役上がり俳優 初めてBLドラマに出演することになり張り切っている上渡梨央。ダブル主演の初演技挑戦な三吉修斗とも仲良くなりたいけど、何やら冷たい対応。 そんな中、主演同士で撮った写真や三吉の自宅でのオフショットが匂わせだとファンの間で持ち切りに。 さらに梨央が幼い頃に会った少女だという相馬も現れて──。 しゅうりおがトレンドに上がる平和な世界のハッピー現代BLです。

秘める交線ー放り込まれた青年の日常と非日常ー

Ayari(橋本彩里)
BL
日本有数の御曹司が集まる男子校清蘭学園。 家柄、財力、知能、才能に恵まれた者たちばかり集まるこの学園に、突如外部入学することになったアオイ。 2年ぶりに会う幼馴染みはひどく素っ気なく、それに加え……。 ──もう逃がさないから。 誰しも触れて欲しくないことはある。そして、それを暴きたい者も。 事件あり、過去あり、あらざるものあり、美形集団、曲者ほいほいです。 少し特殊(怪奇含むため)な学園ものとなります。今のところ、怪奇とシリアスは2割ほどの予定。 生徒会、風紀、爽やかに、不良、溶け込み腐男子など定番はそろいイベントもありますが王道学園ではないです。あくまで変人、奇怪、濃ゆいのほいほい主人公。誰がどこまで深みにはまるかはアオイ次第。 ***** 青春、少し不思議なこと、萌えに興味がある方お付き合いいただけたら嬉しいです。 ※不定期更新となりますのであらかじめご了承ください。 表紙は友人のkouma.作です♪

主人公は俺狙い?!

suzu
BL
生まれた時から前世の記憶が朧げにある公爵令息、アイオライト=オブシディアン。 容姿は美麗、頭脳も完璧、気遣いもできる、ただ人への態度が冷たい冷血なイメージだったため彼は「細雪な貴公子」そう呼ばれた。氷のように硬いイメージはないが水のように優しいイメージもない。 だが、アイオライトはそんなイメージとは反対に単純で鈍かったり焦ってきつい言葉を言ってしまう。 朧げであるがために時間が経つと記憶はほとんど無くなっていた。 15歳になると学園に通うのがこの世界の義務。 学園で「インカローズ」を見た時、主人公(?!)と直感で感じた。 彼は、白銀の髪に淡いピンク色の瞳を持つ愛らしい容姿をしており、BLゲームとかの主人公みたいだと、そう考える他なかった。 そして自分も攻略対象や悪役なのではないかと考えた。地位も高いし、色々凄いところがあるし、見た目も黒髪と青紫の瞳を持っていて整っているし、 面倒事、それもBL(多分)とか無理!! そう考え近づかないようにしていた。 そんなアイオライトだったがインカローズや絶対攻略対象だろっ、という人と嫌でも鉢合わせしてしまう。 ハプニングだらけの学園生活! BL作品中の可愛い主人公×ハチャメチャ悪役令息 ※文章うるさいです ※背後注意

僕の平凡生活が…

ポコタマ
BL
アンチ転校生によって日常が壊された主人公の話です 更新頻度はとても遅めです。誤字・脱字がある場合がございます。お気に入り、しおり、感想励みになります。

眺めるほうが好きなんだ

チョコキラー
BL
何事も見るからこそおもしろい。がモットーの主人公は、常におもしろいことの傍観者でありたいと願う。でも、彼からは周りを虜にする謎の色気がムンムンです!w 顔はクマがあり、前髪が長くて顔は見えにくいが、中々美形…! そんな彼は王道をみて楽しむ側だったのに、気づけば自分が中心に!? てな感じの巻き込まれくんでーす♪

王道学園なのに会長だけなんか違くない?

ばなな
BL
※更新遅め この学園。柵野下学園の生徒会はよくある王道的なも のだった。 …だが会長は違ったーー この作品は王道の俺様会長では無い面倒くさがりな主人公とその周りの話です。 ちなみに会長総受け…になる予定?です。

チャラ男会計目指しました

岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように………… ――――――それを目指して1年3ヶ月 英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた 意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。 ※この小説はBL小説です。 苦手な方は見ないようにお願いします。 ※コメントでの誹謗中傷はお控えください。 初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。 他サイトにも掲載しています。

処理中です...