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<風紀委員>
氷室 玲二(ヒムロ レイジ)
──キーンコーンカーンコーン
「ひーろ!食堂行こー!」
「もう道は分かるだろう、1人で行けば」
「俺は紘と食べたいんだよ」
面倒くさい…。
それに僕は昼食は食べないし。
1人で勝手に行けばいいのに。一緒に行きたそうにしてるやつらもいるんだから。
そう思い僕は席を立った。
「おい」
「きゃぁ、氷室様だ!」
「お目にかかれるなんて…」
「またアリスと一緒に…?」
…忘れてた。
「あ、またお前」
「あ?」
「なんで紘と一緒にいるんだよ」
「…別に、お前に言うことでもねぇだろ」
「それはっ!…そうだけど」
面倒くさいなぁ…。
「…おい、昼はどこ行くんだ」
氷室玲二が転入生を無視して話しかけてきた。
「別に、適当なとこ…」
──ぐいっ
「紘は今から俺と食堂に行くから!」
「…はぁ」
思い切り腕を掴まれた。
どうやら彼の中では決定事項になったらしい。
「なんでもいい、どっか行くなら着いていく」
「なんでお前が着いてくるんだよ」
「なんでもいいだろーが」
ほんと、面倒くさい…。
──食堂
「俺、ハンバーグ定食にしよ、紘は何にする?」
「僕は何も…」
「…何も食わねーのか?」
「え、あぁ…うん」
「…だからそんなちっせーのな」
はい?
こいつ今なんて言った?
「紘!食べないと大きくなれないぞ!」
──イラッ
なんでそんなことお前らに言われなきゃならないんだ?
それに僕は平均身長あるし、お前らがでっかいだけだし。
食べたところで僕の身長はもう止まったんだよ!!
「…」
「…こいつ拗ねてやがる」
「ひ、紘!ごめんって!俺のハンバーグ1口食べるか?」
「…いらないし、拗ねてない」
転入生はオロオロして、氷室玲二は鼻で笑いA定食を食べていた。
「はぁ…元々昼は食べても戻すことが多いから食べないだけだから」
「そ、そうなのか…」
そう言えば転入生は納得しつつも複雑な表情で昼食を食べ始めた。
──きゃああああっ!!
(またか…)
「うぉっ!?」
「…チッ」
「彼方!昨日ぶりですね!」
「あれ~?今日もいるの、アリスちゃん?」
「…お、ま…風紀、の…」
「最悪だな」
今日も全員揃ってご登場ですか…。
転入生と一緒だとろくな事がないな。
「彼方、なぜこんなやつらと一緒にいる?」
「誰といようが俺の勝手だろ」
「…ふん、どうせお前が誑かしでもしたんだろう、有栖川紘」
(なんで僕が…)
「昨日も言っただろ!俺が自分で紘と関わりたいと思ったから一緒にいるんだ!お前らなんでそんな言い方するんだ!」
こいつ、また余計なことを…
「知りたいか?こいつが過去に何をしたのか、どうして俺らを…裏切ったのか」
(…っ)
”裏切った”
やっぱり、皆からしたらあれは裏切りだった。
許されることはないと分かっていても、僕は心のどこかでまだ希望を求めていたのかもしれない。
直接聞かされたこの言葉が、こんなにも心にくるなんて思ってもなかった。
「裏切る?なんのことだよ、紘がそんな事するわけ…!」
「おい、これ以上騒がしくするなら風紀として取り締まる。生徒会と、お前もだ佐々木」
「チッ」
「…っ」
「わかったなら散れ
…いくぞ、有栖川」
──ぐぃ
そう言って氷室玲二は僕の腕を引っ張って食堂を後にした。
「…っ!そろそろ離してっ!」
「あ?…あぁ、
お前…なんで震えてんだ?」
「…触られるの、苦手なんだ…
しばらくすれば治まるからほっといてくれ…」
「…あぁ」
気になるって顔してる。
でも聞いてこない。
「…そろそろ授業始まるから」
「…教室まで送る」
「別にそこまでしなくても」
「仕事だ」
(はぁ…)
───キーンコーンカーンコーン
結局、転入生はあの後1度も教室に戻ってくることはなかった。
(まぁ、知ったことではないけど)
さっさと帰って休もう。
そう思って教室から出たところで、氷室玲二と鉢合わせた。
(そういえば、来るって言ってたな…)
「お前…迎えに行くって言っただろ…なに帰ろうとしてんだよ」
「僕はそれに返事をした覚えはないから」
「…チッ」
(…こわ)
不良の舌打ちは迫力がある。
「明日も同じ時間に来る」
そう言って氷室玲二は帰っていった。
何はともあれ、
「…疲れた」
体裁は受けなかったものの、氷室玲二が隣にいるという緊張や、いつもと違う周りの目にいつも以上に疲れた。
(さっさとシャワーを浴びて寝てしまおう…)
そう考えた僕は重い体にムチを打って浴室に向かった。
「…ひ…、…して…」
──いやだ
「…ひろ、…してる」
──もうやめて
「紘、愛してる」
───ハッ
…ゆめ
いつもみる夢…
僕はいつまでも過去に囚われてる
前に進むことも出来ずに、ずっと
(もう、終わったことのはずなのにな…)
時計を見ると、午前4時を指していた。
なんとも中途半端な時間だ。
夢のせいでもう一度眠る気もおきない。
(散歩でもしようかな)
寮の裏には小さな庭があり、そこにベンチもある。
そこに座りまだ明るくなり切っていない空を眺める。
(まだ僕は、進めないままなのか…)
先程みた夢を思い出してため息をついた。
その時、近くで人の気配がした。
(…近づいてくる?)
また面倒くさいことになる前に、この場を立ち去ろうか。
そう思考を巡らせた時、向こうの人物が僕に気がついた。
「…誰かと思えば、”アリス”じゃん」
今の学園で僕のことをそう呼ぶ人は、体裁を加える側の人間だ。
「やっと顔見てわかったよ」
──ハッ
そうだ、どうせこんな時間だからと思ってマスクをしないで外に出てしまった。
数分前の自分を恨む。
俯いてできるだけ顔が見えないようにして立ち上がる。
「え、どこいくの?折角だし少し話そうよ」
話すことなんて何も無い。
どうせ暴言や罵り、嫌味に決まってる。
(なんなんだこいつは)
横を通ろうとした時、腕を掴まれた。
咄嗟に振り払い、つい顔を上げてそいつの方を見てしまった。
(あっ…この人は…)
「やっとこっち見た、久しぶりだね”アリス”」
「あお、先輩…」
氷室 玲二(ヒムロ レイジ)
──キーンコーンカーンコーン
「ひーろ!食堂行こー!」
「もう道は分かるだろう、1人で行けば」
「俺は紘と食べたいんだよ」
面倒くさい…。
それに僕は昼食は食べないし。
1人で勝手に行けばいいのに。一緒に行きたそうにしてるやつらもいるんだから。
そう思い僕は席を立った。
「おい」
「きゃぁ、氷室様だ!」
「お目にかかれるなんて…」
「またアリスと一緒に…?」
…忘れてた。
「あ、またお前」
「あ?」
「なんで紘と一緒にいるんだよ」
「…別に、お前に言うことでもねぇだろ」
「それはっ!…そうだけど」
面倒くさいなぁ…。
「…おい、昼はどこ行くんだ」
氷室玲二が転入生を無視して話しかけてきた。
「別に、適当なとこ…」
──ぐいっ
「紘は今から俺と食堂に行くから!」
「…はぁ」
思い切り腕を掴まれた。
どうやら彼の中では決定事項になったらしい。
「なんでもいい、どっか行くなら着いていく」
「なんでお前が着いてくるんだよ」
「なんでもいいだろーが」
ほんと、面倒くさい…。
──食堂
「俺、ハンバーグ定食にしよ、紘は何にする?」
「僕は何も…」
「…何も食わねーのか?」
「え、あぁ…うん」
「…だからそんなちっせーのな」
はい?
こいつ今なんて言った?
「紘!食べないと大きくなれないぞ!」
──イラッ
なんでそんなことお前らに言われなきゃならないんだ?
それに僕は平均身長あるし、お前らがでっかいだけだし。
食べたところで僕の身長はもう止まったんだよ!!
「…」
「…こいつ拗ねてやがる」
「ひ、紘!ごめんって!俺のハンバーグ1口食べるか?」
「…いらないし、拗ねてない」
転入生はオロオロして、氷室玲二は鼻で笑いA定食を食べていた。
「はぁ…元々昼は食べても戻すことが多いから食べないだけだから」
「そ、そうなのか…」
そう言えば転入生は納得しつつも複雑な表情で昼食を食べ始めた。
──きゃああああっ!!
(またか…)
「うぉっ!?」
「…チッ」
「彼方!昨日ぶりですね!」
「あれ~?今日もいるの、アリスちゃん?」
「…お、ま…風紀、の…」
「最悪だな」
今日も全員揃ってご登場ですか…。
転入生と一緒だとろくな事がないな。
「彼方、なぜこんなやつらと一緒にいる?」
「誰といようが俺の勝手だろ」
「…ふん、どうせお前が誑かしでもしたんだろう、有栖川紘」
(なんで僕が…)
「昨日も言っただろ!俺が自分で紘と関わりたいと思ったから一緒にいるんだ!お前らなんでそんな言い方するんだ!」
こいつ、また余計なことを…
「知りたいか?こいつが過去に何をしたのか、どうして俺らを…裏切ったのか」
(…っ)
”裏切った”
やっぱり、皆からしたらあれは裏切りだった。
許されることはないと分かっていても、僕は心のどこかでまだ希望を求めていたのかもしれない。
直接聞かされたこの言葉が、こんなにも心にくるなんて思ってもなかった。
「裏切る?なんのことだよ、紘がそんな事するわけ…!」
「おい、これ以上騒がしくするなら風紀として取り締まる。生徒会と、お前もだ佐々木」
「チッ」
「…っ」
「わかったなら散れ
…いくぞ、有栖川」
──ぐぃ
そう言って氷室玲二は僕の腕を引っ張って食堂を後にした。
「…っ!そろそろ離してっ!」
「あ?…あぁ、
お前…なんで震えてんだ?」
「…触られるの、苦手なんだ…
しばらくすれば治まるからほっといてくれ…」
「…あぁ」
気になるって顔してる。
でも聞いてこない。
「…そろそろ授業始まるから」
「…教室まで送る」
「別にそこまでしなくても」
「仕事だ」
(はぁ…)
───キーンコーンカーンコーン
結局、転入生はあの後1度も教室に戻ってくることはなかった。
(まぁ、知ったことではないけど)
さっさと帰って休もう。
そう思って教室から出たところで、氷室玲二と鉢合わせた。
(そういえば、来るって言ってたな…)
「お前…迎えに行くって言っただろ…なに帰ろうとしてんだよ」
「僕はそれに返事をした覚えはないから」
「…チッ」
(…こわ)
不良の舌打ちは迫力がある。
「明日も同じ時間に来る」
そう言って氷室玲二は帰っていった。
何はともあれ、
「…疲れた」
体裁は受けなかったものの、氷室玲二が隣にいるという緊張や、いつもと違う周りの目にいつも以上に疲れた。
(さっさとシャワーを浴びて寝てしまおう…)
そう考えた僕は重い体にムチを打って浴室に向かった。
「…ひ…、…して…」
──いやだ
「…ひろ、…してる」
──もうやめて
「紘、愛してる」
───ハッ
…ゆめ
いつもみる夢…
僕はいつまでも過去に囚われてる
前に進むことも出来ずに、ずっと
(もう、終わったことのはずなのにな…)
時計を見ると、午前4時を指していた。
なんとも中途半端な時間だ。
夢のせいでもう一度眠る気もおきない。
(散歩でもしようかな)
寮の裏には小さな庭があり、そこにベンチもある。
そこに座りまだ明るくなり切っていない空を眺める。
(まだ僕は、進めないままなのか…)
先程みた夢を思い出してため息をついた。
その時、近くで人の気配がした。
(…近づいてくる?)
また面倒くさいことになる前に、この場を立ち去ろうか。
そう思考を巡らせた時、向こうの人物が僕に気がついた。
「…誰かと思えば、”アリス”じゃん」
今の学園で僕のことをそう呼ぶ人は、体裁を加える側の人間だ。
「やっと顔見てわかったよ」
──ハッ
そうだ、どうせこんな時間だからと思ってマスクをしないで外に出てしまった。
数分前の自分を恨む。
俯いてできるだけ顔が見えないようにして立ち上がる。
「え、どこいくの?折角だし少し話そうよ」
話すことなんて何も無い。
どうせ暴言や罵り、嫌味に決まってる。
(なんなんだこいつは)
横を通ろうとした時、腕を掴まれた。
咄嗟に振り払い、つい顔を上げてそいつの方を見てしまった。
(あっ…この人は…)
「やっとこっち見た、久しぶりだね”アリス”」
「あお、先輩…」
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