アリスの苦難

浅葱 花

文字の大きさ
上 下
5 / 10

<4>

しおりを挟む
<風紀委員長>

   渡里 魁(ワタリ カイ)






──ピンポーン


朝、時刻は7時28分。

僕がそろそろ登校しようかと思っていた矢先、部屋のチャイムが鳴った。


僕の部屋は一人部屋だ。同室の人の客人ということはない。

なら、間違え?嫌がらせ?

なんにせよ僕の客ではないだろう。


(少し待ってから出るか…)


──ピポピポピポーーン


「!?」


え、なに、やっぱり嫌がらせ!?


──ドンッ


「っ!…は、はい!」


──ガチャ


「どちら様で…え?」


な、なんでこの人が…!?






「…おい、あれ」

「げ!?なんであの人が…」

「…目合わせんなよ、殺される」

「朝からお姿を見られるなんて…!」

「今日はついてるかも!」

「でもなんでアリスと一緒なの…?」


遠目からの視線や陰口、いつもと同じなのにいつもと違うのは隣を歩くこの人のせいだ。


氷室 玲二(ヒムロ レイジ)


この学園の番長的存在。

喧嘩で右に出るものはいない。

…らしい。


噂話程度にしかこの人のことを知らなかったし、これからも関わるつもりがなかったから知ろうともしなかった人。


なんでも、風紀委員長が言っていた”信頼しているやつ”とは彼のことだったらしい






──数分前


「どちら様で…え?」


な、なんでこの人が…!?


「…居るならさっさと出ろ」


「え、な、なんで貴方がここに?」


「昨日、話されてんだろアイツに」


「アイツ…?」


「…風紀の」


「え…」


じゃあ、昨日言ってたやつって氷室玲二のことだってのか!?

そんな、そんなの…


「お断りします!」


「…あ゛ぁ?」


「っ!」


だって、こんなの聞いてない!

こんな目立つ人と一緒に行動しろなんて、委員長は何を考えてるんだ!



「…何ごちゃごちゃ考えてんのか知らねーけど、俺は言われた仕事をやるだけだ。そこにお前の意思は関係ねーよ」


「…っ」


「わかったらさっさと準備しろ」


「…」



───

──








朝の一悶着を起こしてから急いで準備してきたけど…


(やっぱり目立つよなぁ…)


こうゆう視線には慣れないな。


そう思いつついつも通り下駄箱を開ける。


──べちゃ


(…今日は泥か)

まぁ、予備の靴を持ってきてたからいいか。

こっちの靴は流石に捨てよう。


「…お前これ、いつもなのか?」


「え?あぁ、まぁ…」


「…」


(…こわ、ガンつけられた…)


氷室玲二が口を開く前に僕は素早く昇降口を後にした。 


その態度が気に入らなかったのか、もしくはこれ以上何も言うなというテレパシーが伝わったからなのか、氷室玲二は舌打ちをひとつして僕の後を着いてきた。






──ガラッ


「!!おはよう!紘!」


「…」


朝から眩しい…


「おい、昼休みまた来る」


「…結構です」


「…来るからな」


(はぁ…)


彼も面倒な仕事を任されたと思っているだろうな…。

風紀委員長には適当に報告してサボってしまえばいいものを。


「…紘、今のやつ誰?」


「…知らない」


「知らないわけないだろ!なんか話してたし!」


「…」


僕は転入生の話を無視して席につく。


(まだ朝なのにとても疲れた…)


ため息をひとつついて僕は目を瞑った。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

最弱伝説俺

京香
BL
 元柔道家の父と元モデルの母から生まれた葵は、四兄弟の一番下。三人の兄からは「最弱」だと物理的愛のムチでしごかれる日々。その上、高校は寮に住めと一人放り込まれてしまった!  有名柔道道場の実家で鍛えられ、その辺のやんちゃな連中なんぞ片手で潰せる強さなのに、最弱だと思い込んでいる葵。兄作成のマニュアルにより高校で不良認定されるは不良のトップには求婚されるはで、はたして無事高校を卒業出来るのか!?

BLドラマの主演同士で写真を上げたら匂わせ判定されたけど、断じて俺たちは付き合ってない!

京香
BL
ダンサー×子役上がり俳優 初めてBLドラマに出演することになり張り切っている上渡梨央。ダブル主演の初演技挑戦な三吉修斗とも仲良くなりたいけど、何やら冷たい対応。 そんな中、主演同士で撮った写真や三吉の自宅でのオフショットが匂わせだとファンの間で持ち切りに。 さらに梨央が幼い頃に会った少女だという相馬も現れて──。 しゅうりおがトレンドに上がる平和な世界のハッピー現代BLです。

秘める交線ー放り込まれた青年の日常と非日常ー

Ayari(橋本彩里)
BL
日本有数の御曹司が集まる男子校清蘭学園。 家柄、財力、知能、才能に恵まれた者たちばかり集まるこの学園に、突如外部入学することになったアオイ。 2年ぶりに会う幼馴染みはひどく素っ気なく、それに加え……。 ──もう逃がさないから。 誰しも触れて欲しくないことはある。そして、それを暴きたい者も。 事件あり、過去あり、あらざるものあり、美形集団、曲者ほいほいです。 少し特殊(怪奇含むため)な学園ものとなります。今のところ、怪奇とシリアスは2割ほどの予定。 生徒会、風紀、爽やかに、不良、溶け込み腐男子など定番はそろいイベントもありますが王道学園ではないです。あくまで変人、奇怪、濃ゆいのほいほい主人公。誰がどこまで深みにはまるかはアオイ次第。 ***** 青春、少し不思議なこと、萌えに興味がある方お付き合いいただけたら嬉しいです。 ※不定期更新となりますのであらかじめご了承ください。 表紙は友人のkouma.作です♪

主人公は俺狙い?!

suzu
BL
生まれた時から前世の記憶が朧げにある公爵令息、アイオライト=オブシディアン。 容姿は美麗、頭脳も完璧、気遣いもできる、ただ人への態度が冷たい冷血なイメージだったため彼は「細雪な貴公子」そう呼ばれた。氷のように硬いイメージはないが水のように優しいイメージもない。 だが、アイオライトはそんなイメージとは反対に単純で鈍かったり焦ってきつい言葉を言ってしまう。 朧げであるがために時間が経つと記憶はほとんど無くなっていた。 15歳になると学園に通うのがこの世界の義務。 学園で「インカローズ」を見た時、主人公(?!)と直感で感じた。 彼は、白銀の髪に淡いピンク色の瞳を持つ愛らしい容姿をしており、BLゲームとかの主人公みたいだと、そう考える他なかった。 そして自分も攻略対象や悪役なのではないかと考えた。地位も高いし、色々凄いところがあるし、見た目も黒髪と青紫の瞳を持っていて整っているし、 面倒事、それもBL(多分)とか無理!! そう考え近づかないようにしていた。 そんなアイオライトだったがインカローズや絶対攻略対象だろっ、という人と嫌でも鉢合わせしてしまう。 ハプニングだらけの学園生活! BL作品中の可愛い主人公×ハチャメチャ悪役令息 ※文章うるさいです ※背後注意

眺めるほうが好きなんだ

チョコキラー
BL
何事も見るからこそおもしろい。がモットーの主人公は、常におもしろいことの傍観者でありたいと願う。でも、彼からは周りを虜にする謎の色気がムンムンです!w 顔はクマがあり、前髪が長くて顔は見えにくいが、中々美形…! そんな彼は王道をみて楽しむ側だったのに、気づけば自分が中心に!? てな感じの巻き込まれくんでーす♪

僕の平凡生活が…

ポコタマ
BL
アンチ転校生によって日常が壊された主人公の話です 更新頻度はとても遅めです。誤字・脱字がある場合がございます。お気に入り、しおり、感想励みになります。

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

チャラ男会計目指しました

岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように………… ――――――それを目指して1年3ヶ月 英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた 意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。 ※この小説はBL小説です。 苦手な方は見ないようにお願いします。 ※コメントでの誹謗中傷はお控えください。 初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。 他サイトにも掲載しています。

処理中です...