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<転入生>
佐々木 彼方(ササキ カナタ)
「いやー、あの転入生くんはすごいねぇ
生徒会の全員に気に入られちゃってさー
オマケにあの会長からキスまでされちゃって、親衛隊の人たちは今頃発狂してるよ
これは体裁されるかなー、転入生くんイケメンだから守るやつも出てくると思うけど
そしたらいろいろ大変なことになっちゃうねー、ねえ、紘ちゃんはどう思う?」
「…知らん」
僕がいつもの定位置に座るなりいきなり話し始めたこいつは、どうやら食堂で起こったことを知っているらしい。
あの後…会長が転入生にキスをした後僕は脱兎のごとくその場を去り写真部の部室に来た。
ずっと部室に居たらしい高坂がどうやってそこら辺の情報を知ったのかは知らないが、やつが言った通り学園は今混沌としている。
「あ、でも転入生くんが体裁受けるようになったら紘ちゃんへの体裁は減るんじゃない?」
…確かにそうなるだろうな
でも僕は…
「別にそれを望んでるわけじゃない」
「あぁそう、相変わらずのドM思考なのねー」
「その言い方はやめろ」
「んで、今日は写真撮ってくの?」
「いや、やめとく」
今は撮る気分にならない。
「おー、そか
じゃあこの時間は何する?どうせなら俺との仲を深めちゃう??」
何がどうせならなのか分からないが、投げキス付きでそう言った高坂は最高に気色悪かった。
「…帰る」
「あらー、俺振られちゃったー悲しいなー」
棒読みで言われても説得力ないな。
僕は席を立ち扉へと向かった。
「紘ちゃん、帰り道気をつけてね」
そう言った高坂に返事をせず僕は扉を閉めた。
今日はもう寮に帰って大人しくしてよう…
これ以上面倒なことになるのはごめんだ。
「有栖川」
そう思ってたはずなのにどうして早速面倒なことになってるんだ…
「聞こえているのか、有栖川紘」
「…聞こえてますよ、渡里風紀委員長」
「ならさっさと返事をしろ、俺はそんなに暇じゃない」
「…なんの御用ですか?」
わざわざ風紀委員長が声をかけてくるなんて、何かやらかした覚えなんてないけど…
「食堂でのことを聞きたい、その場にいただろう」
「…本人達に聞けば良いのでは?」
「第三者の意見を聞きたい」
なら僕じゃなくてもいいだろうに
「風紀室まで来てもらう」
…拒否権は無しね、知ってたけど
──風紀室
「…つまり騒ぎの原因は生徒会の連中が転入生に絡んだことでいいんだな」
「そうゆうことになりますね」
「わかった」
「それじゃあ僕は失礼します」
「待て、まだ話は終わってない」
「終わりましたよ、僕が知っているのはこれが全てです」
僕はそのあと部室に行ったからこれ以上の情報は持っていない。
他に何を話せと言うのか。
「有栖川、お前はまだ被害届を出さないのか?」
…そのことか
「出しません、これは僕が受けるべき罰ですから」
渡里風紀委員長は顔を顰めた。
「お前への体裁は徐々にエスカレートしている。いくらお前が望まなくても俺たち風紀はこれ以上の事を見過ごす訳にはいかない」
「…」
「お前から被害届を出してくれれば風紀は動きやすくなる、これは俺からの頼みだ
被害届を出してくれ、取り返しのつかなくなる前に」
そんなこと言われても答えは決まってる。
「…僕からは出しません」
「…そうか」
「…ではもう失礼しま「なら風紀ではなく俺個人が勝手にお前を守ろう」…は?」
何を言っているんだこの人…
「できる限りそばにいて体裁が起こらないよう牽制しよう、それなら別に構わないだろう」
「いや、構いますよ
なんでそうなるんですか、意味がわかりません…それに風紀委員長であるあなたにそんな時間はないと思いますが…?」
これ以上面倒くさいことはごめんだ。
「なら俺が信頼しているやつをそばに置く、
もしこれを拒否するなら今無理矢理にでも被害届を出させる」
なんでその二択…
「どうする、有栖川」
「…はぁ、被害届は出しません
もう好きにしてください」
「わかった、なら明日からつくように奴に伝えておく」
「勝手にどうぞ」
どこの誰だか知らないけどできるだけ関わらなければいい。
どうせその人も僕に良い印象なんてないだろうから…
「話は以上ですよね、それでは今度こそ僕は失礼します」
「あぁ」
──バタン
風紀委員長と話すといつも疲れる。
転入生と対峙してる時とはまた違う疲れだ。
何はともあれ、
(やっと帰れる…)
この時の僕はまだ、明日からの波乱を知る由もなかった──。
佐々木 彼方(ササキ カナタ)
「いやー、あの転入生くんはすごいねぇ
生徒会の全員に気に入られちゃってさー
オマケにあの会長からキスまでされちゃって、親衛隊の人たちは今頃発狂してるよ
これは体裁されるかなー、転入生くんイケメンだから守るやつも出てくると思うけど
そしたらいろいろ大変なことになっちゃうねー、ねえ、紘ちゃんはどう思う?」
「…知らん」
僕がいつもの定位置に座るなりいきなり話し始めたこいつは、どうやら食堂で起こったことを知っているらしい。
あの後…会長が転入生にキスをした後僕は脱兎のごとくその場を去り写真部の部室に来た。
ずっと部室に居たらしい高坂がどうやってそこら辺の情報を知ったのかは知らないが、やつが言った通り学園は今混沌としている。
「あ、でも転入生くんが体裁受けるようになったら紘ちゃんへの体裁は減るんじゃない?」
…確かにそうなるだろうな
でも僕は…
「別にそれを望んでるわけじゃない」
「あぁそう、相変わらずのドM思考なのねー」
「その言い方はやめろ」
「んで、今日は写真撮ってくの?」
「いや、やめとく」
今は撮る気分にならない。
「おー、そか
じゃあこの時間は何する?どうせなら俺との仲を深めちゃう??」
何がどうせならなのか分からないが、投げキス付きでそう言った高坂は最高に気色悪かった。
「…帰る」
「あらー、俺振られちゃったー悲しいなー」
棒読みで言われても説得力ないな。
僕は席を立ち扉へと向かった。
「紘ちゃん、帰り道気をつけてね」
そう言った高坂に返事をせず僕は扉を閉めた。
今日はもう寮に帰って大人しくしてよう…
これ以上面倒なことになるのはごめんだ。
「有栖川」
そう思ってたはずなのにどうして早速面倒なことになってるんだ…
「聞こえているのか、有栖川紘」
「…聞こえてますよ、渡里風紀委員長」
「ならさっさと返事をしろ、俺はそんなに暇じゃない」
「…なんの御用ですか?」
わざわざ風紀委員長が声をかけてくるなんて、何かやらかした覚えなんてないけど…
「食堂でのことを聞きたい、その場にいただろう」
「…本人達に聞けば良いのでは?」
「第三者の意見を聞きたい」
なら僕じゃなくてもいいだろうに
「風紀室まで来てもらう」
…拒否権は無しね、知ってたけど
──風紀室
「…つまり騒ぎの原因は生徒会の連中が転入生に絡んだことでいいんだな」
「そうゆうことになりますね」
「わかった」
「それじゃあ僕は失礼します」
「待て、まだ話は終わってない」
「終わりましたよ、僕が知っているのはこれが全てです」
僕はそのあと部室に行ったからこれ以上の情報は持っていない。
他に何を話せと言うのか。
「有栖川、お前はまだ被害届を出さないのか?」
…そのことか
「出しません、これは僕が受けるべき罰ですから」
渡里風紀委員長は顔を顰めた。
「お前への体裁は徐々にエスカレートしている。いくらお前が望まなくても俺たち風紀はこれ以上の事を見過ごす訳にはいかない」
「…」
「お前から被害届を出してくれれば風紀は動きやすくなる、これは俺からの頼みだ
被害届を出してくれ、取り返しのつかなくなる前に」
そんなこと言われても答えは決まってる。
「…僕からは出しません」
「…そうか」
「…ではもう失礼しま「なら風紀ではなく俺個人が勝手にお前を守ろう」…は?」
何を言っているんだこの人…
「できる限りそばにいて体裁が起こらないよう牽制しよう、それなら別に構わないだろう」
「いや、構いますよ
なんでそうなるんですか、意味がわかりません…それに風紀委員長であるあなたにそんな時間はないと思いますが…?」
これ以上面倒くさいことはごめんだ。
「なら俺が信頼しているやつをそばに置く、
もしこれを拒否するなら今無理矢理にでも被害届を出させる」
なんでその二択…
「どうする、有栖川」
「…はぁ、被害届は出しません
もう好きにしてください」
「わかった、なら明日からつくように奴に伝えておく」
「勝手にどうぞ」
どこの誰だか知らないけどできるだけ関わらなければいい。
どうせその人も僕に良い印象なんてないだろうから…
「話は以上ですよね、それでは今度こそ僕は失礼します」
「あぁ」
──バタン
風紀委員長と話すといつも疲れる。
転入生と対峙してる時とはまた違う疲れだ。
何はともあれ、
(やっと帰れる…)
この時の僕はまだ、明日からの波乱を知る由もなかった──。
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