擬人化スキルで百合ハーレム

葛野桂馬

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第二章:蒼穹水晶編

2話 蒼の世界と覗く視線

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「ん…………っ」


 小さな舌が唇を割って侵入てくる。

 私はそれを掬うように舌を合わせる。


「ん……ちゅるっ、はむ……んんっ」


 口の端から水滴が伝う。

 貪るように、求めるように、ただ夢中にミントと舌を絡める。


「んんっ…………ぷはっ。ミント……んっ」

「あんず……あんず! んんっ!」


 息を継ぎ、名前を呼び合いながら再び唇を重ねる。

 熱い吐息が頬を撫でる。


「杏……わたしも忘れちゃ嫌です……」

「んん――っ!!」


 アリアの声が聞こえたと思った瞬間、首筋に痛みが走った。

 高熱が身体を駆け巡り、視界が白く染まっていく。


「ん――――っ! ぷはっ! アリア!? んんっ!?」

「あんず、いまはみんとをみてて。ん……」


 不意打ち気味の吸血に対しての抗議はミントにより塞がれてしまう。

 身体から力が抜けていき、体重をアリアに預けるようにもたれかかる。

 口の中を掻きまわしてくる舌を、小さな口で必死に受け止める。


「――ぷはっ! 二人とも、激しすぎ――ひゃあぅっ!」

「あんず、ごめんね。でも、いまはあんずがほしいの」

「わたしも……です。今日の杏、なんだか凄く美味しい……はむっ」


 ミントは首筋に口づけ、つうっと舌を這わせた。反対の首筋にはアリアが再び小さな犬歯を立て、喉を鳴らしていく。


「あ…………あぅ…………」


 私の喉から嬌声とも呻き声ともとれる音が零れる。

 燃えるような熱が身体を駆け巡るが、不思議と苦痛は感じず、形容しがたい快感に包まれていく。


「あぁ……はうぅ……」


 声が漏れる度アリアの吸血が強くなり、ミントの口が身体を撫でていく。

 ミントのキスは首筋から肩、鎖骨へと下りていく。


「み、ミント……。それより下はダメ……」

「ん」


 快楽に耐えて、なんとか言葉を絞り出す。

 ミントは鎖骨に口付けたままこくりと頷くと、私の手を取って持ち上げた。


「何をする気――ひゃああんっ!」


 次の瞬間、ミントが私の腋に吸い付いた。

 くすぐったさと羞恥により悲鳴が上がる。


「ミント……や、やめ……」

「あんずが、ここはみずがでるって、おしえてくれたもん」

「確かに言ったけど…………ひぁああっ!」

「あんず……ここすごい……あんずのあじがする……」

「恥ず……かしい……ひゃうぅっ!」


 ミントの舌が這う度、体が痙攣し嬌声が漏れる。

 雷が全身を駆け巡るかのような錯覚に陥る。

 強烈な刺激に呂律が回らなくなり、目の端から涙が零れていく。


「や、やあぁ……もう、もう……」

「杏……私も欲しいです……。ん……」

「んむ…………」


 肩越しに覗き込んできたアリアの唇が触れる。

 互いの体液を求め合うミントとは違い、唇を触れ合わせる優しいキス。それなのに私の頭の中で星が散った。


 ゼリーのように弾力のあるミントとは違う、マシュマロのような柔らかさ。

 優しく包み込むような感触に、私の思考は溺れていく。


 ゆっくりと唇が離れる。

 瞳を潤ませたアリアの表情が目に入る。


 普段見ることのないその表情は、可憐で、綺麗で、艶やかだった。

 気の弱い少女のものと思えない表情に、胸を打つ鼓動が速くなっていく。


「みん、と。あ、りあ」


 感じたことのない幸福感が私を満たしていく。

 幸せの中に揺蕩いながら、私は二人に呼びかけた。


『もっと、私を……愛し、なさい』


 口から出た言葉に、ぞくりと寒気が走る。

 今のは私の言葉じゃない。


 私は彼女達を愛しているし、愛されていることを嬉しく思う。

 けれど今の言葉には、私への愛を強要するような響きがあった。


「ミント、アリア――んくっ!? んんんっ!」


 言葉を撤回しようとした口は、言葉を紡ぐ前にアリアに奪われた。


 アリアの舌が口内を蹂躙する。

 勢い余って歯と歯がぶつかり、カチカチと音をたてる。


 先程まで優しいキスをしていた少女とは思えない、貪るような濃厚なキス。


「んんんっ!」


 息をすることすら許されない暴力的な口づけを私は、受け入れてしまった。

 わずかに残った理性は、押し寄せる苦痛と快楽の波に飲み込まれていく。


「んんっ――――――かはっ! けほっ!」


 意識が飛ぶと覚悟をした瞬間、舌が引き抜かれた。

 急に流れ込んできた酸素と一緒に唾液を吸い込んでしまい、思わず咳込む。


「アリア、急に何を……」


 涙を浮かべての抗議は尻すぼみに消えて行く。

 眼前にいたのはアリアではなく、ミントだった。彼女は私に馬乗りになって、こちらを覗き込んでいた。


 ミントは幼い顔に似合わない、妖艶な微笑を浮かべながら私の涙を指で掬った。

 小さな指が頬を撫でるのに従い、言い表しようのない快感が駆け巡る。


「あぁ……ミント……。それ、気持ちいぃ……」


 思わずミントの指に頬擦りをするように顔を動かす。

 ミントは掌で私を受け止めると、人差し指を耳の中に滑り込ませた。


 冷たいものが侵入してくる感覚に、全身が身震いする。

 くちゅくちゅ、という水音を立てて、柔らかいものに耳の中をかき混ぜられる。


「あうぅ……ミント……これ、だめ……。おかしくなる……ひぁああっ!」


 弱音を吐いた私をたしなめる様に、ミントは反対の手で鎖骨をなぞった。ただそれだけで、電流が流れたかのように、身体が痙攣する。

 ミントの指が這うと、そこには少し粘り気のある粘液が貼りついていた。


「もしかして……んんっ……私のこと、舐めてる……?」


 ふと思いついたことを問うと、ミントは嬉しそうに目を細めた。

 そして、正解とでもいうように、水音を響かせながら耳の中をかき混ぜていく。


 身体に乗ったミントの脚が、ゆっくりと形を失い、私の脚を包み込むように蠢く。

 脚だけじゃない。ミントの体からは粘液が溢れ、服の隙間から私の全身を這うように包んでいく。


 人の姿をしているが、ミントはスライムだ。その身体に器官という概念は本来存在しない。

 その彼女が、私を“舐める”意図を持って全身を包んでいくのだ。


「あああっ! ミント……ミント……! ひうぅっ!」


 ミントの妖艶な笑みに見守られながら、私は全身をミントの身体によって舐められていく。身体を覆うミントの粘液が蠢く度、無数の舌による愛撫を感じて嬌声が漏れる。


 腕、脚、腹、胸。

 体のありとあらゆる部分をミントの身体が舐めていく。


「ミント…………ミント…………!」


 目の前で微笑む少女の名前をうわ言のように繰り返しながら、私の意識は快楽に溺れていくのだった。





 少女達が愛し合う姿を、じっと見つめる目があった。

 警戒と好奇心をにじませたその視線は、少女達から片時も離れることはない。


 二人に挟まれた少女が嬌声を上げる度、耳がピクピクと動く。

 彼女たちが動く度、小さな尻尾がブンブンと振られる。


 杏が見れば「犬の顔をした小人」と形容したであろうその生物は、夢中になって少女達の行為を見つめていた。


 やがて三人の少女達が動かなくなると、視線の主は意を決したようにゆっくりと彼女達に近づいていくのだった。
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