10 / 19
第一章:暗中逍遥編
4話 少女と新たな絆
しおりを挟む「ん……はむっ……んんっ……!」
「んんんっ! ……ぷはっ、激し……んぐっ……んんっ」
閉ざされたアリアの唇を啄む様に、また時折激しく貪る。
そして息継ぎのタイミングを見計らい、隙を見て舌をねじ込んだ。
アリアが驚愕で目を見開く。
耐えるように膝に乗せられた手は、強く握りしめられている。
私は彼女の固く結ばれた手に自分の手を重ねた。もう片方の手は彼女の肩に回して抱き寄せる。
舌を動かすことなく、アリアの緊張が解れるのを待つ。
浅く早い彼女の息遣いが耳元で聞こえる。
――チロリ。
おずおずとアリアが私の舌先を撫でた。驚かせてしまわないようにゆっくりと、そしてだんだんと大きく舌を動かして絡め合う。
唾液が零れ落ち、私達の口元を伝って流れていくが、そんなことさえ気にならない。
「ん……んん……ちゅぷっ……ん」
「はむっ……ちゅるるっ……ん……ぷはっ。アリア、どう?」
「なんだか、甘くて、嬉しくて……ぽわってします……」
問いに答えるアリアは夢見心地な表情を浮かべている。人によってはだらしないと表現するだろう緩みきった笑みだが、私にはこの上ない程可愛らしく感じられる。
「もっと……あなたを感じたい……です。もっと……あなたに触れて欲しい……」
「アリア、杏よ。名前で……呼んで……」
「杏……杏……! もっと……一緒に……」
「ええ。わかってるわ……」
私はアリアに一瞬触れ合うキスをすると、間髪入れずアリアの首もとに吸い付いた。
「ひゃうぅ――っ!」
「ん……ここは、どうかしら? んんっ……!」
「とろけちゃいます……。杏の優しさを……愛情を……感じるの……」
「なら、もっと……愛してあげる……」
アリアを強く抱きしめてキスの雨を降らせる。
頬を吸い、耳を食み、瞼にくちづける。
唇が触れる度、ぎゅっとしがみついてくるアリアが愛しくてたまらない。歓喜のためか、それとも興奮のためか、彼女の白い顔が上気している。
大きく可愛らしい目は熱を帯びたように潤み、熱い吐息を頬に感じる。
私の心臓は全力疾走後のように早く打ち、アリアの鼓動も張り裂けそうなほど脈打っている。
感情の高ぶりに呼応して、私の右脚も高熱を発し始める。あまりの熱さと痛さに本当に燃えているんじゃないかと錯覚するほどだ。
「杏……キス、して……! 熱いのが……とまらない……!」
「アリア――はむぅっ…………んんんんっ――!」
求めてくるアリアに応え、本能のままにその口を塞ぐ。
足元からこみあげてくる高熱が体の中を暴れまわり、雷に打たれたかのように体が痙攣する。
次の瞬間、思考が爆発した。
視界が真っ白になり、抱きしめたアリアの感触だけが意識を繋ぎ留める。
私の右脚に潜む“何か”が吐き出した強力なエネルギーが、私の体を通ってアリアに流れていく。
人の身では到底耐えきれない力にガクガクと全身が震え、世界がゆっくりと傾いていく。
――だめ……。落ちる……。
同じように震えるアリアを強く抱きしめながら、苦しい程の快感の中で私は意識を手放した。
気を失っていたのはそれほど長い間じゃ無いと思う。
全身を包む倦怠感から、私はそう推測する。
アリアも同じタイミングで目を覚ましたようで、焦点の定まっていない目でぼんやりと私を見つめている。
「おはよう、アリア」
「……おはよう、ございます」
夢見心地で返事するアリアの髪を指で梳く。絹糸のような銀髪が、指の間を流れていく。
「ふあ……」
アリアが気持ち良さそうに息を漏らす。目を細めて流れに身を任せるアリアが可愛らしく、思わず額にキスをした。
「あ……え? あれ、わたし……」
それが引き金となったのか、アリアの意識が覚醒していく。
今までの行為を少しずつ思い出したのか、顔がみるみる湯で上がっていく。
「ごめんなさい、は禁止よ」
「ごめんなさ――はうぅ……」
「私がアリアを求めたのよ。そこに罪悪感を感じないで」
「で、でも! でも――!」
アリアは首が取れそうなくらい激しく頭を振った。
長い髪が頬を打つが、絹のように滑らかなそれに痛みは感じず、むしろ心地よさすら与えてくれる。なんだか変な趣味に目覚めそう……。
ただ、いつまでも新たな境地を開拓しているわけにはいかず、私はアリアに語りかけた。
「アリアは私と触れあったの、嫌だった?」
「そんなことないです! 本当に夢のようで、愛されているって感じて……とても嬉しかったです。」
「じゃあ、私がアリアに悪いことをしたに違いないって謝ったらどう思う?」
「それは……とても悲しいです……。わたしはとても嬉しかったのに、その事について申し訳なく思われるのは……辛いです……」
「そうよね。私も同じよ」
その言葉にアリアはハッと顔を上げた。
ずるい言い方になると思ったが、私は言葉を続ける。
「アリアは私に、そんな悲しい思いをさせたいのかしら?」
「違います! でもわたしは……わたしは……」
きっと頭の中では罪悪感が色々な形で渦巻いているのだろう。
私はそっとアリアを抱きしめて囁いた。
「私はアリアのことが好きなの。出会いは確かに特殊だったかもしれないけれど、私は確かにアリアを愛しているわ」
「杏……わたしも……大好き、です……」
「好きな人に嬉しく思ってほしい、好きな人を愛したいって思うのはおかしい?」
「おかしくないです。わたしも、杏に嬉しく感じてほしい……」
「とても嬉しいわよ。とても温かい……。ね、罪悪感なんて感じる必要ないでしょ?」
「うん……!」
アリアの目尻から、涙が伝う。
温かい涙を指で拭うと、自然と笑みが零れた。釣られるようにアリアも笑顔になっていく。
心が通じ合ったことを理解した私達は、もう一度想いを確かめるように唇を重ね――――。
「あんず! たすけにきたよ!」
飛び込んできた言葉に体が固まった。
唇を離し、声が聞こえた方向にぎこちなく顔を向ける。
「あんず……そのこ……だれ?」
その言葉には、一緒に過ごした頃の楽し気な響きは感じられない。
表情の消えたあどけない顔に浮かぶのは、驚愕か怒りか悲しみか。
最愛の人を救う為に駆け付けたミントが、冷ややかに二人を見下ろしていたのだった。
0
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。


百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

さくらと遥香
youmery
恋愛
国民的な人気を誇る女性アイドルグループの4期生として活動する、さくらと遥香(=かっきー)。
さくら視点で描かれる、かっきーとの百合恋愛ストーリーです。
◆あらすじ
さくらと遥香は、同じアイドルグループで活動する同期の2人。
さくらは"さくちゃん"、
遥香は名字にちなんで"かっきー"の愛称でメンバーやファンから愛されている。
同期の中で、加入当時から選抜メンバーに選ばれ続けているのはさくらと遥香だけ。
ときに"4期生のダブルエース"とも呼ばれる2人は、お互いに支え合いながら数々の試練を乗り越えてきた。
同期、仲間、戦友、コンビ。
2人の関係を表すにはどんな言葉がふさわしいか。それは2人にしか分からない。
そんな2人の関係に大きな変化が訪れたのは2022年2月、46時間の生配信番組の最中。
イラストを描くのが得意な遥香は、生配信中にメンバー全員の似顔絵を描き上げる企画に挑戦していた。
配信スタジオの一角を使って、休む間も惜しんで似顔絵を描き続ける遥香。
さくらは、眠そうな顔で頑張る遥香の姿を心配そうに見つめていた。
2日目の配信が終わった夜、さくらが遥香の様子を見に行くと誰もいないスタジオで2人きりに。
遥香の力になりたいさくらは、
「私に出来ることがあればなんでも言ってほしい」
と申し出る。
そこで、遥香から目をつむるように言われて待っていると、さくらは唇に柔らかい感触を感じて…
◆章構成と主な展開
・46時間TV編[完結]
(初キス、告白、両想い)
・付き合い始めた2人編[完結]
(交際スタート、グループ内での距離感の変化)
・かっきー1st写真集編[完結]
(少し大人なキス、肌と肌の触れ合い)
・お泊まり温泉旅行編[完結]
(お風呂、もう少し大人な関係へ)
・かっきー2回目のセンター編[完結]
(かっきーの誕生日お祝い)
・飛鳥さん卒コン編[完結]
(大好きな先輩に2人の関係を伝える)
・さくら1st写真集編[完結]
(お風呂で♡♡)
・Wセンター編[完結]
(支え合う2人)
※女の子同士のキスやハグといった百合要素があります。抵抗のない方だけお楽しみください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる