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第1章 旅立ちの日 編
第 26 話 あの日の気持ち
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数日後の土曜日―――部活の見学帰りの篤樹は、珍しく高山遥と 同伴下校のタイミングになった。足の痛みがまだ完全に引いていない篤樹の歩調に合わせ、遥もゆっくり歩く。
「ところで賀川ぁ? おぬし最近一部女子からの評価が急降下中だぞ? 知っとるかぁ?」
「はぁ? 何だよ、それ。知らねぇよ!」
篤樹はピンと来る。「 鈴からの突然の告白」の翌日、あの3人組から「私たちあなたに怒ってます!」のオーラをバンバンに感じながら、教室内での時間を過ごしたのだ。次の日には3人組に近い女子たちからも変な視線を感じるようになり、 昨日は班活動の時間なのに、同じ班の女子たちからまで「あからさまな 無視」を受けてしまった。
好きでもなんでもない子から 告られて、それを断ったらこんな 仕打ちを受けるなんて、一体何なんだよ!
「りょっ子らが『鈴が 可哀想だ!』と、他のクラスの女子にまで話を広めておったぞ?」
りょっ子…… 妹尾涼香か……。何だよクソッ! 腹立つなぁ!
「賀川は気付いておらんかったみたいだけど、おぬし、 秋季大会の後、女子人気が急上昇だったんだぞ? もったいないのぉ……もうすぐクリスマス、その後はバレンタインとモテキャライベント目白押しのこの時期に」
「知らねぇよ!」
あー、そうだったんだ。俺、知らない内に女子人気上がってたんだ……
「ちょっとそこ座って話そっか?」
遥は急に思い立ったように、ちょうど横切ろうとしていた公園の入口へ進路を変えた。 晩秋とはいえ、まだ昼を過ぎたばかりで天気も良い。このまま家に帰っても、この足じゃ遊びにも出たくない。ま、息抜きにはちょうど良いか……篤樹は特に抵抗も感じず、遥の後に続いて公園に入る。
公園に入ると、篤樹は手頃なベンチに 腰掛けた。松葉杖は 要らなくなったが、怪我をかばう変な歩き方のせいですぐに足が 疲れてしまう。公園では小学校低学年くらいの子たちが元気に走り回っていた。
「……そりゃ 姉さまの言う通りじゃないかぁ?」
篤樹は何となく鈴の告白から姉との 姉弟喧嘩まで「あの日」の出来事を遥に話していた。その感想が「姉の言うとおり」ってのは納得がいかない。
「でもさ、たかが2学年違いの 癖に、何か『私は全てを知ってますぅ』みたいな上から目線でもの言うんだぜ?」
「いやいや、別に『上から目線』って賀川が感じるのは別に悪ぅないよ。そう思ったんじゃろ? それはそれ。ウチが姉さまに同意してんのは『好きレベルの違い』じゃって」
ベンチの前に何本か埋め込んであるタイヤの一つに立ち、遥は語る。
「りょっ子達も同じ『レベル』なんやと思うよ。賀川が秋季大会で準優勝した後から、急に 盛り上がり始めとったからなぁ」
「って、何? お前、なんか知ってたのかよ?」
遥は埋め込みタイヤを渡り歩きながら応えた。
「1年にも3年にも『にわか賀川ファン』が発生しとるぞ。……ま、この数日の間にだいぶ 減ったみたいじゃがのぉ。そういうもんじゃ」
知らないところで「ファン」が出来てて、知らない間に「減ってる」ってのは、知らないまんまのほうが良かったなぁ……
「あの子らにとって賀川は『好きな食べ物』と同じってこと。『ダブルかずきたち』みたいに、小学校の頃からサッカーやってる『スター選手』には手が届かんくても、2年の秋季大会でポッと出の『新スター』なら手が届きそうじゃろ? 一応色んなとこで話題にも上がったし、校内でも『有名』になったからのぉ。で、そういう『有名人』を『好き』になるファンというのも、ポッと出て来て当然てこと」
そっか。別に誰かに「好かれたい」とか「有名になりたい」とか考えてなかったけど、良い成績を残すとそんなオマケもあるのかぁ……
「このレベルの『好き』は、まあ、姉さまが言う高校生の『好き』とは違うかのぉ。目立ってるから、有名だから……ま、言うなれば『 美味しそうなお菓子』を目の前に出された小さな子どもが、それを食べたことも無いのに『好き』って言って 独占したがるのと同じレベルってことよ」
小さな子どもの目の前に出されたお菓子……? なんじゃそりゃ!
「どういうことだよ、結局」
「分からんかのぉ……。つまり、よう知りもしないのに 上辺っ面だけで『好き』って言うのは、お子ちゃまってことじゃ!」
「ん? じゃあ何?『よく知り合うために』とりあえず付き合ってみれば良かったのか? 俺は?」
「そうじゃない……よっと!」
遥は埋め込みタイヤからジャンプし、篤樹の前にトン! と着地した。
「断ったのは正解。問題無し! 悪いことは何もしとりゃあせん。今回のは鈴たちの『好きだから告白ゲーム』の 巻き込まれ事故ってこと。あの子らは『篤樹を好きな鈴ゲーム』をしてただけ。おぬしを好きなんじゃなくって、おぬしを好きな自分が好きなだけ。そんな鈴を『応援して盛り上げる』自分たちを好きなだけや。自己中心な、お遊び 恋愛感情ってやつじゃな」
「巻き込まれ事故って……じゃあ、俺はどうすりゃ良いの?」
「いつも通りにやってれば良し! じゃないのかい?」
「そっかぁ? じゃあさ、姉ちゃんが言ってる『好き』ってのはどうなん? どう違うん?」
「どうなんだろうねぇ。わたしゃまだ中学生ですから分からんなぁ? その内に分かるんじゃないかのぉ。見た目で食べ物に飛びつくような『好き』とか、自己中心な恋愛感情の『好き』とは違う……なんとも言えない『好き』って気持ち。……世の人々はそれを『愛』と呼ぶ!」
遥はそう言うと後ろ向きに跳び、再び埋め込みタイヤの上に立った。 身軽なヤツめ……
「いつか……分かるもんなんじゃろ……きっと」
もう一度そう言うと「ニマッ!」と笑い、並んで埋め込んであるタイヤの列を渡り始めた。
あーあ、好きとか愛とか恋とか……なんか面倒な話だなぁ。一緒に楽しく過ごせりゃなんだって良いじゃん。
遥と話している間に、 段々とモヤモヤした気分も晴れてきた。一体どんなネタがあの3人組から学校でばら 撒かれてるかは分からないが、「もう、どうでもいいや!」って気分になって来る。月曜からは一部女子達のシカト 攻撃があっても気にしないでおこう、そんな気分になってきた。それよりこの機会に……
「ところでさ、遥ぁ」
「ん? なんじゃ?」
「お前ってば、いつからそんな……しゃべり方になったの? 前に、なんか好きなキャラのしゃべり方がどうとか言ってたみたいだけど……」
篤樹はついつい「変な」という一言をつけようとしたが、その一言を引っ込めて聞いてみる。
「んんん? いつからなのか、何ていうアニメだったのかは正確には覚えとらんのぉ。気になるか? やはり、おぬしも」
「いや、そりゃ気になるでしょ? 授業中は普通にしゃべってるくせにさ」
「先生方ん中には心無いモンもおるでなぁ。心許せる友に対してのみじゃ。喜べ、友よ!」
「なんだよそれ……」
篤樹は質問をはぐらかされた気がして、ちょっとムッとする。
「 従兄妹の兄さまがなぁ……」
遥は別に篤樹が気を悪くしたからというワケでもなく、何となくモノのついでのように語り始めた。
「小さな時から大好きだった従兄妹の兄さまが……好きなアニメだったんじゃ。ウチはまだ年長さんくらいじゃったかなぁ……初めてそのアニメ 観たんは……。その中に、兄さまが好きな女の子キャラがおってなぁ。そのしゃべり方をウチが 真似すると、えろう喜んでくれたんよ。親からは『普通にしゃべりなさい!』って怒られることもあったけど、やまらんでなぁ。そのまま 癖になってしもたんじゃな、これが」
「ふぅん。従兄妹の兄ちゃんの 影響かぁ……」
「そ。陸上部に入ったのもその兄さまの影響。速かったんだぞぉ、兄さまは。中学の2年で県の大会で優勝もしたんじゃ! すごかろぉ?」
最後の一言はいつものしゃべりというよりも「福岡言葉」っぽい 響きだった。
「へぇ……そういやお前ってば九州だったっけ? こっち越して来る前」
「ああ、4年生の時までなぁ。生まれ育ちは福岡じゃ! 親戚もほとんど九州じゃから、 兄さまが障害走で九州大会まで出るって決まった時は、みんな大盛り上がりじゃったなぁ」
「お前、ホントにその従兄妹の 兄ちゃん大好きなんだなぁ」
「そりゃもう、自慢の兄さまよ! 結婚相手は兄さまだと本気で考えとったくらいじゃ」
「んな、従兄妹で結婚なんて出来るかよ!」
「おや? 無知な 賀川殿に教えてしんぜよう! 日本の法律ではな、従兄妹は結婚出来るのだよ」
「え? マジで?」
「マジマジ! 小学2年生の時に、その 筋の情報をしっかりキャッチしたのじゃ。それだけでもう、兄さまとの結婚が決まった気になってのぉ……ウチも 初い乙女じゃった」
「ふぅん……で、『大人』になった遥はまだその夢を 抱き続けてるってか?」
遥の「恋ばな」なんて聞いたの、クラスで俺が初めてじゃね? なんて思いながら、篤樹は茶化すように問いかけた。
「結婚は……もう、無理じゃのう……」
埋め込みタイヤを飛び移る足を止め、遥は両手を開いてバランスを取り答える。なんだか……急に辺りの音が「消えた」気がした。いつの間にか、公園で遊んでいた子どもたちもいなくなっている。
「兄さまなぁ……家族で九州大会に向かう途中……高速道路で交通事故に巻き込まれてなぁ……。帰って来んかった……」
え? 交通……事故?
「熊本の病院に運ばれてな……でも3人とも……家族仲良ぉ 逝ってしまって……熊本の 伯母さんらが手配して、 葬儀と火葬は全部熊本で終わらせてな……ウチはまだ3年生やったし、兄さまの最後の顔も見せてもらえんでなぁ。結局一回だけ……お骨の入った箱を 触らせてもらったのが最後のお別れじゃった……。おかげで……なんかお別れの実感も無くてなぁ……」
遥はそのままストン! と滑るように埋め込みタイヤの上に座った。
「このしゃべり方しとるとなぁ、なんか兄さまが元気に生きとる気ィになれるんじゃ。『似てる! 似てる!』って喜んでくれとった笑顔が……まぶたに浮かんできてのぉ……大好きな兄さまに 抱きかかえられとる気持ちになれるんじゃなぁ……」
顔を上げて話す遥の目から涙が 溢れ流れ落ちる。その涙を 拭おうともせずに、遥は笑顔で話を続けた。
「ウチの『好き』はあの頃のままじゃ! 兄さまが『好き』じゃ。そういう『好き』ってのと、 鈴の『好き』は、何か違う気がするんじゃ……失礼かも知れんけどのぉ」
篤樹は、流れる涙を気にも 留めず笑顔で話し続ける遥に……見入ってしまった。胸が苦しくなる。ドキドキする。なんだろう、この気持ちは……
「いかん、いかん。思い出したら、なんや涙が止まらんよぉなってしもうたぞ……賀川ぁ、ハンカチあるかい?」
篤樹は部活バックの中からハンドタオルを取り出す。
「……ほら、これ」
投げ渡そうかと思ったが、落とすとマズイと思い直し、ベンチから立ち上がり遥に近づく。遥も埋め込みタイヤから立ち上がると、手を差し出し篤樹からハンドタオルを受け取った。
「ありがとぅ……な……う、うわーん!」
遥は、ハンドタオルを握りしめた手を顔に押し当てると、声を上げて泣き始めた。篤樹はどうすれば良いか分からず、そのまま立ち尽くす。その篤樹の 胸板に遥が倒れ込むように顔を押し付けて来た。
「会いたいよー! 兄さまに会いたいよー! あーん!」
篤樹はどうすることも出来ず、遥が泣き止むまで 仁王立ちのままで過ごすしか出来なかった。
―――・―――・―――・―――
「グズッ……グズッ……すまん……かった、のぉ。賀川……」
遥は5分ほど篤樹の胸を 借りて泣き通した。その間、篤樹は段々と周りが気になっていた。幸いにも、公園から立ち去った子どもたちの後、訪れる人影は無かった。木々の間から見える通りにも誰もいない。遥と二人っきりの時間だった。すごく 緊張した。今まで遥に「女子」を感じたことは無かったのに、今はものすごく「女子」として遥を意識している自分がいる。ドキドキが止まらない。その音を遥に聞かれてるだろうと思うだけで 恥ずかしくなる。
「これ……月曜で……よいか? 返すのは……」
ようやく遥は篤樹の胸元から離れると、ハンドタオルでしっかりと顔を拭いて 尋ねた。
「あ……ああ! もちろん、いいよ月曜でも火曜でも」
「いや、ホントに、すまんかったのぉ。ウチとした事が…… 歳か?」
篤樹のハンドタオルを、遥は自分の部活バックに入れながら、 照れくさそうにいつもの口調でそう言うと……
「誰かに見られてまいな? 妙な噂が立つと 一蓮托生でまずい事になるぞ」
コミカルな動きで辺りをキョロキョロと見回す。この子、なんか強いや……
「何やってんだよ。お前は忍者か!」
篤樹も笑いながら遥のボケにツッコミを入れる。
いつも通りだ。そうさ、あのドキドキは突然のことで驚いただけ。だって遥は友だちだ。卓也と同じ、一緒にいるだけで楽しい友だちなんだ。だから……
篤樹は、自分が遥の「涙」をみて変な感情になってしまったことを恥じた。それこそ、いつもと違う遥の姿に対し「珍しい食べ物に手を出したいだけ」の自己中心的な感情が起こってしまったのだと恥ずかしく思った。
傾きかけた陽に照らされる、遥の 屈託無い笑顔を見ながら「コイツといると楽しいなぁ……」と篤樹は改めて感じていた……
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
タグアの町の裁判所―――その一室に、篤樹はエシャーと2人っきりで、エルグレドが戻ってくるのを待っている。
村を サーガの群れに襲撃され、家を壊され……母親を殺され、父親と別々に捕らえられ、そして……今から、その父親が死刑も有り得る裁判にかけられようとしている……
自分と同じ歳の少女の身に起こっている 悲劇的な状況……篤樹はその状況をしっかり認識していながら、エシャーが流す「涙」に対し、自分が変なドキドキを感じてしまった事が恥ずかしく、情けなくて仕方が無かった。
だから「2人っきり」の状況なのに何も話し出せないまま過ごす。その 沈黙を 破ったのはエシャーのほうだった。
「ゴメンね、アッキー……お父さんの裁判に巻き込んでしまって……」
「いや……そんな……エシャーが 謝るような事じゃないよ」
篤樹は心の 動揺を気付かれないよう、注意しながら語る。
「ビデルさんが、どんなつもりで僕らを証人に選んだのか分からないけど、とにかく、ルロエさんに不当な判決が出されないように……僕も頑張るよ」
「アッキー?『僕』って言うんだ、私にも……」
エシャーは 妙な所に気がついた。
「あ、え?『 僕』? 俺、今『僕』ってしゃべってた?」
エシャーの表情が明るい笑みに変わる。
「私にはずっと『俺』って言って、他の人には『僕』って言ってたくせに。急にどうしたんですかぁ『僕』ぅ?」
「はぁ? 何だよ!『俺』が『僕』って言ったくらいで、そんなに変かよ!」
篤樹は耳まで赤くなるくらい恥ずかしい気持ちになった。同年代に対して「僕」なんて使ったのは……確かに久し振りな気がする。
「……ありがとう」
「は?」
エシャーは微笑んでいる。
「ん……ありがとう、アッキー。なんか、一緒にお父さんを助けるために頑張ってくれる、って気持ちが伝わって来て嬉しいな……ありがと!」
「俺」じゃなくって「僕」って言っただけで? 何だかよく分からない感受性だなぁ……まあ、でも……
「ああ、うん。一緒に頑張ろうな。その……ルロエさんのために」
「うん。お父さんのために!」
自分に何が出来るのか……いや、何も出来ないかも知れない。でも「大好きな友だち」と楽しく一緒に生きるため……一緒に笑顔で過ごせるためにも、自分が今出来る精一杯の力をかけよう。篤樹はそう心に 誓った。
「ところで賀川ぁ? おぬし最近一部女子からの評価が急降下中だぞ? 知っとるかぁ?」
「はぁ? 何だよ、それ。知らねぇよ!」
篤樹はピンと来る。「 鈴からの突然の告白」の翌日、あの3人組から「私たちあなたに怒ってます!」のオーラをバンバンに感じながら、教室内での時間を過ごしたのだ。次の日には3人組に近い女子たちからも変な視線を感じるようになり、 昨日は班活動の時間なのに、同じ班の女子たちからまで「あからさまな 無視」を受けてしまった。
好きでもなんでもない子から 告られて、それを断ったらこんな 仕打ちを受けるなんて、一体何なんだよ!
「りょっ子らが『鈴が 可哀想だ!』と、他のクラスの女子にまで話を広めておったぞ?」
りょっ子…… 妹尾涼香か……。何だよクソッ! 腹立つなぁ!
「賀川は気付いておらんかったみたいだけど、おぬし、 秋季大会の後、女子人気が急上昇だったんだぞ? もったいないのぉ……もうすぐクリスマス、その後はバレンタインとモテキャライベント目白押しのこの時期に」
「知らねぇよ!」
あー、そうだったんだ。俺、知らない内に女子人気上がってたんだ……
「ちょっとそこ座って話そっか?」
遥は急に思い立ったように、ちょうど横切ろうとしていた公園の入口へ進路を変えた。 晩秋とはいえ、まだ昼を過ぎたばかりで天気も良い。このまま家に帰っても、この足じゃ遊びにも出たくない。ま、息抜きにはちょうど良いか……篤樹は特に抵抗も感じず、遥の後に続いて公園に入る。
公園に入ると、篤樹は手頃なベンチに 腰掛けた。松葉杖は 要らなくなったが、怪我をかばう変な歩き方のせいですぐに足が 疲れてしまう。公園では小学校低学年くらいの子たちが元気に走り回っていた。
「……そりゃ 姉さまの言う通りじゃないかぁ?」
篤樹は何となく鈴の告白から姉との 姉弟喧嘩まで「あの日」の出来事を遥に話していた。その感想が「姉の言うとおり」ってのは納得がいかない。
「でもさ、たかが2学年違いの 癖に、何か『私は全てを知ってますぅ』みたいな上から目線でもの言うんだぜ?」
「いやいや、別に『上から目線』って賀川が感じるのは別に悪ぅないよ。そう思ったんじゃろ? それはそれ。ウチが姉さまに同意してんのは『好きレベルの違い』じゃって」
ベンチの前に何本か埋め込んであるタイヤの一つに立ち、遥は語る。
「りょっ子達も同じ『レベル』なんやと思うよ。賀川が秋季大会で準優勝した後から、急に 盛り上がり始めとったからなぁ」
「って、何? お前、なんか知ってたのかよ?」
遥は埋め込みタイヤを渡り歩きながら応えた。
「1年にも3年にも『にわか賀川ファン』が発生しとるぞ。……ま、この数日の間にだいぶ 減ったみたいじゃがのぉ。そういうもんじゃ」
知らないところで「ファン」が出来てて、知らない間に「減ってる」ってのは、知らないまんまのほうが良かったなぁ……
「あの子らにとって賀川は『好きな食べ物』と同じってこと。『ダブルかずきたち』みたいに、小学校の頃からサッカーやってる『スター選手』には手が届かんくても、2年の秋季大会でポッと出の『新スター』なら手が届きそうじゃろ? 一応色んなとこで話題にも上がったし、校内でも『有名』になったからのぉ。で、そういう『有名人』を『好き』になるファンというのも、ポッと出て来て当然てこと」
そっか。別に誰かに「好かれたい」とか「有名になりたい」とか考えてなかったけど、良い成績を残すとそんなオマケもあるのかぁ……
「このレベルの『好き』は、まあ、姉さまが言う高校生の『好き』とは違うかのぉ。目立ってるから、有名だから……ま、言うなれば『 美味しそうなお菓子』を目の前に出された小さな子どもが、それを食べたことも無いのに『好き』って言って 独占したがるのと同じレベルってことよ」
小さな子どもの目の前に出されたお菓子……? なんじゃそりゃ!
「どういうことだよ、結局」
「分からんかのぉ……。つまり、よう知りもしないのに 上辺っ面だけで『好き』って言うのは、お子ちゃまってことじゃ!」
「ん? じゃあ何?『よく知り合うために』とりあえず付き合ってみれば良かったのか? 俺は?」
「そうじゃない……よっと!」
遥は埋め込みタイヤからジャンプし、篤樹の前にトン! と着地した。
「断ったのは正解。問題無し! 悪いことは何もしとりゃあせん。今回のは鈴たちの『好きだから告白ゲーム』の 巻き込まれ事故ってこと。あの子らは『篤樹を好きな鈴ゲーム』をしてただけ。おぬしを好きなんじゃなくって、おぬしを好きな自分が好きなだけ。そんな鈴を『応援して盛り上げる』自分たちを好きなだけや。自己中心な、お遊び 恋愛感情ってやつじゃな」
「巻き込まれ事故って……じゃあ、俺はどうすりゃ良いの?」
「いつも通りにやってれば良し! じゃないのかい?」
「そっかぁ? じゃあさ、姉ちゃんが言ってる『好き』ってのはどうなん? どう違うん?」
「どうなんだろうねぇ。わたしゃまだ中学生ですから分からんなぁ? その内に分かるんじゃないかのぉ。見た目で食べ物に飛びつくような『好き』とか、自己中心な恋愛感情の『好き』とは違う……なんとも言えない『好き』って気持ち。……世の人々はそれを『愛』と呼ぶ!」
遥はそう言うと後ろ向きに跳び、再び埋め込みタイヤの上に立った。 身軽なヤツめ……
「いつか……分かるもんなんじゃろ……きっと」
もう一度そう言うと「ニマッ!」と笑い、並んで埋め込んであるタイヤの列を渡り始めた。
あーあ、好きとか愛とか恋とか……なんか面倒な話だなぁ。一緒に楽しく過ごせりゃなんだって良いじゃん。
遥と話している間に、 段々とモヤモヤした気分も晴れてきた。一体どんなネタがあの3人組から学校でばら 撒かれてるかは分からないが、「もう、どうでもいいや!」って気分になって来る。月曜からは一部女子達のシカト 攻撃があっても気にしないでおこう、そんな気分になってきた。それよりこの機会に……
「ところでさ、遥ぁ」
「ん? なんじゃ?」
「お前ってば、いつからそんな……しゃべり方になったの? 前に、なんか好きなキャラのしゃべり方がどうとか言ってたみたいだけど……」
篤樹はついつい「変な」という一言をつけようとしたが、その一言を引っ込めて聞いてみる。
「んんん? いつからなのか、何ていうアニメだったのかは正確には覚えとらんのぉ。気になるか? やはり、おぬしも」
「いや、そりゃ気になるでしょ? 授業中は普通にしゃべってるくせにさ」
「先生方ん中には心無いモンもおるでなぁ。心許せる友に対してのみじゃ。喜べ、友よ!」
「なんだよそれ……」
篤樹は質問をはぐらかされた気がして、ちょっとムッとする。
「 従兄妹の兄さまがなぁ……」
遥は別に篤樹が気を悪くしたからというワケでもなく、何となくモノのついでのように語り始めた。
「小さな時から大好きだった従兄妹の兄さまが……好きなアニメだったんじゃ。ウチはまだ年長さんくらいじゃったかなぁ……初めてそのアニメ 観たんは……。その中に、兄さまが好きな女の子キャラがおってなぁ。そのしゃべり方をウチが 真似すると、えろう喜んでくれたんよ。親からは『普通にしゃべりなさい!』って怒られることもあったけど、やまらんでなぁ。そのまま 癖になってしもたんじゃな、これが」
「ふぅん。従兄妹の兄ちゃんの 影響かぁ……」
「そ。陸上部に入ったのもその兄さまの影響。速かったんだぞぉ、兄さまは。中学の2年で県の大会で優勝もしたんじゃ! すごかろぉ?」
最後の一言はいつものしゃべりというよりも「福岡言葉」っぽい 響きだった。
「へぇ……そういやお前ってば九州だったっけ? こっち越して来る前」
「ああ、4年生の時までなぁ。生まれ育ちは福岡じゃ! 親戚もほとんど九州じゃから、 兄さまが障害走で九州大会まで出るって決まった時は、みんな大盛り上がりじゃったなぁ」
「お前、ホントにその従兄妹の 兄ちゃん大好きなんだなぁ」
「そりゃもう、自慢の兄さまよ! 結婚相手は兄さまだと本気で考えとったくらいじゃ」
「んな、従兄妹で結婚なんて出来るかよ!」
「おや? 無知な 賀川殿に教えてしんぜよう! 日本の法律ではな、従兄妹は結婚出来るのだよ」
「え? マジで?」
「マジマジ! 小学2年生の時に、その 筋の情報をしっかりキャッチしたのじゃ。それだけでもう、兄さまとの結婚が決まった気になってのぉ……ウチも 初い乙女じゃった」
「ふぅん……で、『大人』になった遥はまだその夢を 抱き続けてるってか?」
遥の「恋ばな」なんて聞いたの、クラスで俺が初めてじゃね? なんて思いながら、篤樹は茶化すように問いかけた。
「結婚は……もう、無理じゃのう……」
埋め込みタイヤを飛び移る足を止め、遥は両手を開いてバランスを取り答える。なんだか……急に辺りの音が「消えた」気がした。いつの間にか、公園で遊んでいた子どもたちもいなくなっている。
「兄さまなぁ……家族で九州大会に向かう途中……高速道路で交通事故に巻き込まれてなぁ……。帰って来んかった……」
え? 交通……事故?
「熊本の病院に運ばれてな……でも3人とも……家族仲良ぉ 逝ってしまって……熊本の 伯母さんらが手配して、 葬儀と火葬は全部熊本で終わらせてな……ウチはまだ3年生やったし、兄さまの最後の顔も見せてもらえんでなぁ。結局一回だけ……お骨の入った箱を 触らせてもらったのが最後のお別れじゃった……。おかげで……なんかお別れの実感も無くてなぁ……」
遥はそのままストン! と滑るように埋め込みタイヤの上に座った。
「このしゃべり方しとるとなぁ、なんか兄さまが元気に生きとる気ィになれるんじゃ。『似てる! 似てる!』って喜んでくれとった笑顔が……まぶたに浮かんできてのぉ……大好きな兄さまに 抱きかかえられとる気持ちになれるんじゃなぁ……」
顔を上げて話す遥の目から涙が 溢れ流れ落ちる。その涙を 拭おうともせずに、遥は笑顔で話を続けた。
「ウチの『好き』はあの頃のままじゃ! 兄さまが『好き』じゃ。そういう『好き』ってのと、 鈴の『好き』は、何か違う気がするんじゃ……失礼かも知れんけどのぉ」
篤樹は、流れる涙を気にも 留めず笑顔で話し続ける遥に……見入ってしまった。胸が苦しくなる。ドキドキする。なんだろう、この気持ちは……
「いかん、いかん。思い出したら、なんや涙が止まらんよぉなってしもうたぞ……賀川ぁ、ハンカチあるかい?」
篤樹は部活バックの中からハンドタオルを取り出す。
「……ほら、これ」
投げ渡そうかと思ったが、落とすとマズイと思い直し、ベンチから立ち上がり遥に近づく。遥も埋め込みタイヤから立ち上がると、手を差し出し篤樹からハンドタオルを受け取った。
「ありがとぅ……な……う、うわーん!」
遥は、ハンドタオルを握りしめた手を顔に押し当てると、声を上げて泣き始めた。篤樹はどうすれば良いか分からず、そのまま立ち尽くす。その篤樹の 胸板に遥が倒れ込むように顔を押し付けて来た。
「会いたいよー! 兄さまに会いたいよー! あーん!」
篤樹はどうすることも出来ず、遥が泣き止むまで 仁王立ちのままで過ごすしか出来なかった。
―――・―――・―――・―――
「グズッ……グズッ……すまん……かった、のぉ。賀川……」
遥は5分ほど篤樹の胸を 借りて泣き通した。その間、篤樹は段々と周りが気になっていた。幸いにも、公園から立ち去った子どもたちの後、訪れる人影は無かった。木々の間から見える通りにも誰もいない。遥と二人っきりの時間だった。すごく 緊張した。今まで遥に「女子」を感じたことは無かったのに、今はものすごく「女子」として遥を意識している自分がいる。ドキドキが止まらない。その音を遥に聞かれてるだろうと思うだけで 恥ずかしくなる。
「これ……月曜で……よいか? 返すのは……」
ようやく遥は篤樹の胸元から離れると、ハンドタオルでしっかりと顔を拭いて 尋ねた。
「あ……ああ! もちろん、いいよ月曜でも火曜でも」
「いや、ホントに、すまんかったのぉ。ウチとした事が…… 歳か?」
篤樹のハンドタオルを、遥は自分の部活バックに入れながら、 照れくさそうにいつもの口調でそう言うと……
「誰かに見られてまいな? 妙な噂が立つと 一蓮托生でまずい事になるぞ」
コミカルな動きで辺りをキョロキョロと見回す。この子、なんか強いや……
「何やってんだよ。お前は忍者か!」
篤樹も笑いながら遥のボケにツッコミを入れる。
いつも通りだ。そうさ、あのドキドキは突然のことで驚いただけ。だって遥は友だちだ。卓也と同じ、一緒にいるだけで楽しい友だちなんだ。だから……
篤樹は、自分が遥の「涙」をみて変な感情になってしまったことを恥じた。それこそ、いつもと違う遥の姿に対し「珍しい食べ物に手を出したいだけ」の自己中心的な感情が起こってしまったのだと恥ずかしく思った。
傾きかけた陽に照らされる、遥の 屈託無い笑顔を見ながら「コイツといると楽しいなぁ……」と篤樹は改めて感じていた……
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
タグアの町の裁判所―――その一室に、篤樹はエシャーと2人っきりで、エルグレドが戻ってくるのを待っている。
村を サーガの群れに襲撃され、家を壊され……母親を殺され、父親と別々に捕らえられ、そして……今から、その父親が死刑も有り得る裁判にかけられようとしている……
自分と同じ歳の少女の身に起こっている 悲劇的な状況……篤樹はその状況をしっかり認識していながら、エシャーが流す「涙」に対し、自分が変なドキドキを感じてしまった事が恥ずかしく、情けなくて仕方が無かった。
だから「2人っきり」の状況なのに何も話し出せないまま過ごす。その 沈黙を 破ったのはエシャーのほうだった。
「ゴメンね、アッキー……お父さんの裁判に巻き込んでしまって……」
「いや……そんな……エシャーが 謝るような事じゃないよ」
篤樹は心の 動揺を気付かれないよう、注意しながら語る。
「ビデルさんが、どんなつもりで僕らを証人に選んだのか分からないけど、とにかく、ルロエさんに不当な判決が出されないように……僕も頑張るよ」
「アッキー?『僕』って言うんだ、私にも……」
エシャーは 妙な所に気がついた。
「あ、え?『 僕』? 俺、今『僕』ってしゃべってた?」
エシャーの表情が明るい笑みに変わる。
「私にはずっと『俺』って言って、他の人には『僕』って言ってたくせに。急にどうしたんですかぁ『僕』ぅ?」
「はぁ? 何だよ!『俺』が『僕』って言ったくらいで、そんなに変かよ!」
篤樹は耳まで赤くなるくらい恥ずかしい気持ちになった。同年代に対して「僕」なんて使ったのは……確かに久し振りな気がする。
「……ありがとう」
「は?」
エシャーは微笑んでいる。
「ん……ありがとう、アッキー。なんか、一緒にお父さんを助けるために頑張ってくれる、って気持ちが伝わって来て嬉しいな……ありがと!」
「俺」じゃなくって「僕」って言っただけで? 何だかよく分からない感受性だなぁ……まあ、でも……
「ああ、うん。一緒に頑張ろうな。その……ルロエさんのために」
「うん。お父さんのために!」
自分に何が出来るのか……いや、何も出来ないかも知れない。でも「大好きな友だち」と楽しく一緒に生きるため……一緒に笑顔で過ごせるためにも、自分が今出来る精一杯の力をかけよう。篤樹はそう心に 誓った。
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2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!
nineyu
ファンタジー
男は絶望していた。
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しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!
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そんな不幸な男の転機はそこから20年。
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天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
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時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
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だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
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※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
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アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
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いらないスキル買い取ります!スキル「買取」で異世界最強!
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ひょんな事から異世界に召喚された木村哲郎は、救世主として期待されたが、手に入れたスキルはまさかの「買取」。
ハズレと看做され、城を追い出された哲郎だったが、スキル「買取」は他人のスキルを買い取れるという優れ物であった。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
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HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
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最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
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https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
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