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アーヴェン(2-1)
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「アーヴェンだ。チアーレ商会長と話がしたい。取り次いで貰えるか」
チアーレ商会本店の受付にて、アーヴェンが手短に職員へと言葉を告げる。街に戻ったアーヴェンはその足で直接この場に訪れていた。
手に入れた情報から得た真実を外部に漏らさず報告するため、そしてこれからアーヴェンが行おうとすることの助力を頼むためにも直接商会長と話す必要があったのだ。
「貴方はお抱えの……。約束がないならば商会長も応じないとは思いますが」
「声をかけてもらうだけでいい」
「わかりました」
隠してはいるものの、訝しむような視線を向けて職員は渋々頷くと奥の部屋まで向かう。そしてしばらくした頃、少し不思議そうな顔をして職員が戻ってきた。
「連れて来いとのことでした。ご案内します」
「あぁ、頼む」
首を傾げながら納得できていない様子の職員はアーヴェンを連れて執務室の前へ辿り着く。コンコンと軽く扉を叩けば、中から「入るといい」とチアーレの声が響いた。
「失礼します」
アーヴェンが軽く頭を下げながら部屋へと入る。部屋の中にはチアーレ以外には誰もいなかった。
「それで、突然どうしたんだ。お前が私に用とは珍しい」
「まずは報告を。大移動の原因を探った結果、怪しい集団と出会いました。そこでこの資料を手に入れたんです」
アーヴェンは手に入れた資料をチアーレに手渡す。
ぺらぺらと資料を捲る音がしばらく部屋に響き、そしてチアーレがふぅと息を吐き出した。
「なるほどな。ルーチェ姫様がお前の仲間のルーということだな。それに奴隷商人が活発化したのもその集団のせいだと。怪しい集団についてはシロ殿の報告にもあった者達だろうな」
「それだけではありません。お気づきだとは思いますが……」
「あぁ、この資料のことだな?」
チアーレが焼け焦げた跡の残る紙を一枚ひらひらと振り、軽く頭を抱える。そこには儀式に必要な物品が、奴隷を始めとした違法物から商店で買える雑貨まで記されていた。
その雑貨の品名と必要な個数をアーヴェンは別の紙面で見た記憶があるのだ。
「確かに、これに似た注文を私は見たことがある。ジェーニオ宰相殿の注文書でな」
「捜索されているのがルーならば、彼女は街から逃げようともしていました。王城で何か問題が起きてるのではないでしょうか」
「だろうな」
チアーレが重々しく頷き、そして小さく唸る。トントンと指で机を叩きながらしばらく目を閉じて考えに耽ったチアーレは、それからアーヴェンに鋭い視線を向けた。
「話は理解した。報告が終わったなら出ていっても構わないのだが、そうではないのだろう?」
「はい。俺は、仲間としてルーの力になりたいのです。だから、この集団を潰さなければいけない。そのために、奴らの本拠地に行く手助けをして欲しいのです」
「資料が真実ならば、奴らの本拠地である儀式場は王城内にある。そこにお前を連れて行けと?」
チアーレがにこにことした微笑みを浮かべながらも強い圧を滲ませてアーヴェンに問いかける。そこでアーヴェンは深く息を吐き出すとチアーレに深く頭を下げた。
チアーレ商会本店の受付にて、アーヴェンが手短に職員へと言葉を告げる。街に戻ったアーヴェンはその足で直接この場に訪れていた。
手に入れた情報から得た真実を外部に漏らさず報告するため、そしてこれからアーヴェンが行おうとすることの助力を頼むためにも直接商会長と話す必要があったのだ。
「貴方はお抱えの……。約束がないならば商会長も応じないとは思いますが」
「声をかけてもらうだけでいい」
「わかりました」
隠してはいるものの、訝しむような視線を向けて職員は渋々頷くと奥の部屋まで向かう。そしてしばらくした頃、少し不思議そうな顔をして職員が戻ってきた。
「連れて来いとのことでした。ご案内します」
「あぁ、頼む」
首を傾げながら納得できていない様子の職員はアーヴェンを連れて執務室の前へ辿り着く。コンコンと軽く扉を叩けば、中から「入るといい」とチアーレの声が響いた。
「失礼します」
アーヴェンが軽く頭を下げながら部屋へと入る。部屋の中にはチアーレ以外には誰もいなかった。
「それで、突然どうしたんだ。お前が私に用とは珍しい」
「まずは報告を。大移動の原因を探った結果、怪しい集団と出会いました。そこでこの資料を手に入れたんです」
アーヴェンは手に入れた資料をチアーレに手渡す。
ぺらぺらと資料を捲る音がしばらく部屋に響き、そしてチアーレがふぅと息を吐き出した。
「なるほどな。ルーチェ姫様がお前の仲間のルーということだな。それに奴隷商人が活発化したのもその集団のせいだと。怪しい集団についてはシロ殿の報告にもあった者達だろうな」
「それだけではありません。お気づきだとは思いますが……」
「あぁ、この資料のことだな?」
チアーレが焼け焦げた跡の残る紙を一枚ひらひらと振り、軽く頭を抱える。そこには儀式に必要な物品が、奴隷を始めとした違法物から商店で買える雑貨まで記されていた。
その雑貨の品名と必要な個数をアーヴェンは別の紙面で見た記憶があるのだ。
「確かに、これに似た注文を私は見たことがある。ジェーニオ宰相殿の注文書でな」
「捜索されているのがルーならば、彼女は街から逃げようともしていました。王城で何か問題が起きてるのではないでしょうか」
「だろうな」
チアーレが重々しく頷き、そして小さく唸る。トントンと指で机を叩きながらしばらく目を閉じて考えに耽ったチアーレは、それからアーヴェンに鋭い視線を向けた。
「話は理解した。報告が終わったなら出ていっても構わないのだが、そうではないのだろう?」
「はい。俺は、仲間としてルーの力になりたいのです。だから、この集団を潰さなければいけない。そのために、奴らの本拠地に行く手助けをして欲しいのです」
「資料が真実ならば、奴らの本拠地である儀式場は王城内にある。そこにお前を連れて行けと?」
チアーレがにこにことした微笑みを浮かべながらも強い圧を滲ませてアーヴェンに問いかける。そこでアーヴェンは深く息を吐き出すとチアーレに深く頭を下げた。
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