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シェルブールの雨傘
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山尾志桜里と、山下貴司、は、共に、東大法学部で、同期だった。
二人は、法学部で、法律を学びながら、ゼミで、親しくなった。
そして、二人は、よく、デートを、した。
「君がきれいなのは、無理ないな。アニーの子役に選ばれたほどだから」
と、山下貴司は、言った。
「あなただって、素敵だわ」
と、山尾志桜里は、顔を赤らめて言った。
山下貴司は、イケメンで、東大で、女生徒の憧れだった。
二人は、ともに、一緒に、法学の勉強に打ち込んだ。
「僕は、将来、検察官になろうと思う」
と、山下貴司は、言った。
「じゃあ、私も、検察官になるわ」
と、山尾志桜里も言った。
二人は、無事、東大法学部を、卒業して、ともに、司法試験に合格して、司法修習を経て、検察官になった。
〇
二人は、ある日、渋谷で、映画、シェルブールの雨傘、の映画を見て、その後、近くの喫茶店ルノアールに入った。
「山尾志桜里さん。僕は、心から、あなたを愛しています。僕と結婚して下さい」
山下貴司が言った。
「嬉しいわ。女にとって、一番、嬉しい言葉だわ。私もあなたを愛しているわ。山下貴司さん」
山尾志桜里は、目に涙を浮かべた。
「ねえ。山下さん。子供が生まれたら、名前は、何としましょうか?」
山尾志桜里が聞いた。
「うーん。そうだなー」
と、山下貴司は、考え込んだ。
「私に提案があるの」
山尾志桜里が言った。
「何だい?」
山下貴司が聞いた。
「女の子だったらフランソワーズ、男の子だったら、フランソワ、というのはどう?」
山尾志桜里が言った。
「うん。いいね。君が望むんだったら、そうするよ」
山下貴司が言った。
「嬉しい」
山尾志桜里が喜んで言った。
〇
二人は、司法修習を終えて、検事になった。
山尾志桜里は、東京地方検察庁、千葉地方検察庁を経て、名古屋地方検察庁岡崎支部に着任した。
一方、山下貴司は、東京地検特捜部、法務省での勤務の他、在ワシントン日本大使館一等書記官・法律顧問、と、同じ検察官でも、司法修習を終えた後は、二人は、別々の道を歩んだ。
職場が異なって、フレッシュな気持ちで、二人は、それぞれ、仕事に夢中になった。
月日の経つのは、速いもので、会わないでいる間に、山尾志桜里と、山下貴司は、それぞれ、日本の政治を立て直す使命を感じ出した。
しかし、運命は残酷だった。
山尾志桜里は、権力の座に長くいて、腐敗した、自民党を嫌い、民主党で、政権をとって、日本を立て直そうという志に燃えていた。
一方の、山下貴司は、保守的な自民党を、改革しようと、燃えている、石破茂の水月会に入って、自民党を改革して、日本を立て直そうと、考えた。
山尾志桜里は、菅直人、鳩山由紀夫、小沢一郎、など、民主党の幹部に、勧められ、民主党から、愛知7区、から立候補し、182,028票、獲得して当選した。
一方の、山下貴司は、石破茂に、勧められて、岡山二区から、自民党推薦で、立候補して、当選した。
政党が全く異なり、政治的イデオロギーが、異なる間柄なのに、結婚する、というのは、国民の非難も、受けるだろうし、国民に、「やっぱり、政治家なんて、八百長だ」、と言われるのを、恐れ、二人は、付き合いにくく、なって、付き合いも、疎遠になってしまった。
そうこうしている内に、二人は、それぞれ、親しい人が、出来て、結婚した。
しかし、それは、本心ではなく、政治上の不本意な結婚であった。
第4次、安倍政権で、安倍晋三は、石破派の、水月会の、山下貴司を法務大臣に任命した。
ちょうど、外国人労働者受け入れ、の入管法改正案の法案で、国会は、もめていた。
山尾志桜里は、立憲民主党から、政府に、厳しい質疑をした。
そして、山下貴司法務大臣と、論戦を交わした。
しかし、山尾志桜里は、政府の方針を批判しながらも、山下貴司に対する、愛は、変わっていなかった。
山尾志桜里は、(山下貴司さん。ごめんなさい)、心の中で、謝りつつも、山下貴司法務大臣に、厳しい質問を投げかけた。
政府を批判するのは、野党の宿命である。
ある日のことである。
山尾志桜里は、買い物も兼ねて、まだ幼い娘と、渋谷に行き、喫茶店ルノワールに入った。
そこは、司法修習の時、山尾志桜里と、山下貴司が、最後に立ち寄った、喫茶店だった。
山尾志桜里は、(ああ。あの頃が懐かしいわ)、と、思いながら、娘と、サンドイッチと、紅茶を食べ、飲んでいた。
すると、ギイと、音がして、喫茶店の戸が開いた。
幼い男の子を、連れた男が入ってきた。
それは、山下貴司だった。
山尾志桜里は、びっくりした。
山下貴司は、幼い息子と一緒だった。
そして、山下貴司は、山尾志桜里の、隣のテーブルに着いた。
そして、ボーイに、サンドイッチと、紅茶を注文した。
「やあ。元気?」
山下貴司は、隣の、山尾志桜里に、話しかけた。
「ええ」
山尾志桜里は、頬を赤くして答えた。
「あなたは?」
今度は、逆に、山尾志桜里が、山下貴司に聞いた。
「ああ。元気だよ」
と、答えた。
「君と、最後に会ったのは、この喫茶店だったよね。覚えているよ。映画、シェルブールの雨傘、を見て、その後、ここで、サンドイッチを食べたよね」
「そうね」
「君は、シェルブールの雨傘、の、ヒロインの、ガソリーヌ・ドヌーヴ・・・じゃなかった・・・・カトリーヌ・ドヌーヴより、美しかった。今でも美しいよ」
「あなただって。今でも、イケメンだわ」
山尾志桜里は、顔を赤くして言った。
「あ、あの。山下貴司さん。国会で、意地悪な質疑をしてしまってごめんなさい。それに、あなたに対して、不信任決議案まで出してしまって・・・」
山尾志桜里が言った。
「いや。野党である以上、当然のことさ」
山下貴司が言った。
「いえ。わかっているわ。あなたは、誠実な人だわ。でも安倍政権に入閣した以上、強行採決は、悪いとわかっていても、安倍首相の意向には逆らえないのでしょう。あなたも、法案通過は拙速だと思っているのでしょう?」
「・・・・い、いや。そ、それは・・・そんなことはないよ」
山下貴司の言葉は苦しげな口調だった。
山尾志桜里は、ニッコリと微笑んだ。
「でも、立憲民主党は、しっかりした政党だね。与党と野党という立ち場は、違っても、僕は、一目、置いているよ」
山下貴司が言った。
「自民党でも、石破茂さん、と、水月会は、立派だと私は思うわ」
山尾志桜里が言った。
「ねえ。ママ。この人、だれ?」
山尾志桜里の娘が言った。
「この人はね、山下貴司さん、といって、私の昔の友達なの。さあ、挨拶しなさい」
山尾志桜里が言った。
「こんにちは。山下さん。私は、山尾フランソワーズと言います。よろしく」
と、山尾志桜里の娘が、山下貴司に挨拶した。
「ねえ。お父さん。この人は誰?」
山下貴司の幼い息子が、父親に聞いた。
「この人はね。僕の昔の友達なんだ。挨拶しなさい」
そう言われて、山下貴司の幼い息子は、山尾志桜里に、向かって、
「はじめまして。山下フランソワ、と言います」
と、ペコリと、頭を下げた。
「こんにちは。山下フランソワ君」
と、山尾志桜里は、フランソワの頭を撫でた。
山尾志桜里は、感激して涙を流した。
(ああ。この人は、私との約束を忘れないでいたのね)
山尾志桜里の娘と、山下貴司の息子は、すぐに、仲良くなって、キャッ、キャッ、と、はしゃいでいた。
外では、小雨が降り出した。
山下貴司は、時計を見た。
「君とは、もう少し話したいが、マスコミに知られると、週刊文春、や、フライデーなんかに、色々と、悪い記事を書かれるからね。そろそろ、別れよう」
「そうね。それが、私たちの宿命ね」
と、山尾志桜里が言った。
山下貴司は、立ち上がって、息子のフランソワを呼んだ。
「おーい。フランソワ」
山尾志桜里の娘のフランソワーズと、友達になったばかりの、フランソワは、父親に呼ばれて、父親の所に行った。
「山尾志桜里さん。では、さようなら。お互い、頑張ろう。また国会で論戦を正々堂々としよう」
と、山下貴司は、山尾志桜里に言った。
「山下さん。あなたも、頑張って」
山尾志桜里が言った。
「山尾志桜里さん。フランソワーズちゃん。さようなら」
山下貴司の幼い息子、フランソワは、そう言って、ペコリと頭を下げた。
そして、山下貴司は、幼い息子を連れて、喫茶店ルノワールを出ていった。
平成30年11月28日(火)擱筆
二人は、法学部で、法律を学びながら、ゼミで、親しくなった。
そして、二人は、よく、デートを、した。
「君がきれいなのは、無理ないな。アニーの子役に選ばれたほどだから」
と、山下貴司は、言った。
「あなただって、素敵だわ」
と、山尾志桜里は、顔を赤らめて言った。
山下貴司は、イケメンで、東大で、女生徒の憧れだった。
二人は、ともに、一緒に、法学の勉強に打ち込んだ。
「僕は、将来、検察官になろうと思う」
と、山下貴司は、言った。
「じゃあ、私も、検察官になるわ」
と、山尾志桜里も言った。
二人は、無事、東大法学部を、卒業して、ともに、司法試験に合格して、司法修習を経て、検察官になった。
〇
二人は、ある日、渋谷で、映画、シェルブールの雨傘、の映画を見て、その後、近くの喫茶店ルノアールに入った。
「山尾志桜里さん。僕は、心から、あなたを愛しています。僕と結婚して下さい」
山下貴司が言った。
「嬉しいわ。女にとって、一番、嬉しい言葉だわ。私もあなたを愛しているわ。山下貴司さん」
山尾志桜里は、目に涙を浮かべた。
「ねえ。山下さん。子供が生まれたら、名前は、何としましょうか?」
山尾志桜里が聞いた。
「うーん。そうだなー」
と、山下貴司は、考え込んだ。
「私に提案があるの」
山尾志桜里が言った。
「何だい?」
山下貴司が聞いた。
「女の子だったらフランソワーズ、男の子だったら、フランソワ、というのはどう?」
山尾志桜里が言った。
「うん。いいね。君が望むんだったら、そうするよ」
山下貴司が言った。
「嬉しい」
山尾志桜里が喜んで言った。
〇
二人は、司法修習を終えて、検事になった。
山尾志桜里は、東京地方検察庁、千葉地方検察庁を経て、名古屋地方検察庁岡崎支部に着任した。
一方、山下貴司は、東京地検特捜部、法務省での勤務の他、在ワシントン日本大使館一等書記官・法律顧問、と、同じ検察官でも、司法修習を終えた後は、二人は、別々の道を歩んだ。
職場が異なって、フレッシュな気持ちで、二人は、それぞれ、仕事に夢中になった。
月日の経つのは、速いもので、会わないでいる間に、山尾志桜里と、山下貴司は、それぞれ、日本の政治を立て直す使命を感じ出した。
しかし、運命は残酷だった。
山尾志桜里は、権力の座に長くいて、腐敗した、自民党を嫌い、民主党で、政権をとって、日本を立て直そうという志に燃えていた。
一方の、山下貴司は、保守的な自民党を、改革しようと、燃えている、石破茂の水月会に入って、自民党を改革して、日本を立て直そうと、考えた。
山尾志桜里は、菅直人、鳩山由紀夫、小沢一郎、など、民主党の幹部に、勧められ、民主党から、愛知7区、から立候補し、182,028票、獲得して当選した。
一方の、山下貴司は、石破茂に、勧められて、岡山二区から、自民党推薦で、立候補して、当選した。
政党が全く異なり、政治的イデオロギーが、異なる間柄なのに、結婚する、というのは、国民の非難も、受けるだろうし、国民に、「やっぱり、政治家なんて、八百長だ」、と言われるのを、恐れ、二人は、付き合いにくく、なって、付き合いも、疎遠になってしまった。
そうこうしている内に、二人は、それぞれ、親しい人が、出来て、結婚した。
しかし、それは、本心ではなく、政治上の不本意な結婚であった。
第4次、安倍政権で、安倍晋三は、石破派の、水月会の、山下貴司を法務大臣に任命した。
ちょうど、外国人労働者受け入れ、の入管法改正案の法案で、国会は、もめていた。
山尾志桜里は、立憲民主党から、政府に、厳しい質疑をした。
そして、山下貴司法務大臣と、論戦を交わした。
しかし、山尾志桜里は、政府の方針を批判しながらも、山下貴司に対する、愛は、変わっていなかった。
山尾志桜里は、(山下貴司さん。ごめんなさい)、心の中で、謝りつつも、山下貴司法務大臣に、厳しい質問を投げかけた。
政府を批判するのは、野党の宿命である。
ある日のことである。
山尾志桜里は、買い物も兼ねて、まだ幼い娘と、渋谷に行き、喫茶店ルノワールに入った。
そこは、司法修習の時、山尾志桜里と、山下貴司が、最後に立ち寄った、喫茶店だった。
山尾志桜里は、(ああ。あの頃が懐かしいわ)、と、思いながら、娘と、サンドイッチと、紅茶を食べ、飲んでいた。
すると、ギイと、音がして、喫茶店の戸が開いた。
幼い男の子を、連れた男が入ってきた。
それは、山下貴司だった。
山尾志桜里は、びっくりした。
山下貴司は、幼い息子と一緒だった。
そして、山下貴司は、山尾志桜里の、隣のテーブルに着いた。
そして、ボーイに、サンドイッチと、紅茶を注文した。
「やあ。元気?」
山下貴司は、隣の、山尾志桜里に、話しかけた。
「ええ」
山尾志桜里は、頬を赤くして答えた。
「あなたは?」
今度は、逆に、山尾志桜里が、山下貴司に聞いた。
「ああ。元気だよ」
と、答えた。
「君と、最後に会ったのは、この喫茶店だったよね。覚えているよ。映画、シェルブールの雨傘、を見て、その後、ここで、サンドイッチを食べたよね」
「そうね」
「君は、シェルブールの雨傘、の、ヒロインの、ガソリーヌ・ドヌーヴ・・・じゃなかった・・・・カトリーヌ・ドヌーヴより、美しかった。今でも美しいよ」
「あなただって。今でも、イケメンだわ」
山尾志桜里は、顔を赤くして言った。
「あ、あの。山下貴司さん。国会で、意地悪な質疑をしてしまってごめんなさい。それに、あなたに対して、不信任決議案まで出してしまって・・・」
山尾志桜里が言った。
「いや。野党である以上、当然のことさ」
山下貴司が言った。
「いえ。わかっているわ。あなたは、誠実な人だわ。でも安倍政権に入閣した以上、強行採決は、悪いとわかっていても、安倍首相の意向には逆らえないのでしょう。あなたも、法案通過は拙速だと思っているのでしょう?」
「・・・・い、いや。そ、それは・・・そんなことはないよ」
山下貴司の言葉は苦しげな口調だった。
山尾志桜里は、ニッコリと微笑んだ。
「でも、立憲民主党は、しっかりした政党だね。与党と野党という立ち場は、違っても、僕は、一目、置いているよ」
山下貴司が言った。
「自民党でも、石破茂さん、と、水月会は、立派だと私は思うわ」
山尾志桜里が言った。
「ねえ。ママ。この人、だれ?」
山尾志桜里の娘が言った。
「この人はね、山下貴司さん、といって、私の昔の友達なの。さあ、挨拶しなさい」
山尾志桜里が言った。
「こんにちは。山下さん。私は、山尾フランソワーズと言います。よろしく」
と、山尾志桜里の娘が、山下貴司に挨拶した。
「ねえ。お父さん。この人は誰?」
山下貴司の幼い息子が、父親に聞いた。
「この人はね。僕の昔の友達なんだ。挨拶しなさい」
そう言われて、山下貴司の幼い息子は、山尾志桜里に、向かって、
「はじめまして。山下フランソワ、と言います」
と、ペコリと、頭を下げた。
「こんにちは。山下フランソワ君」
と、山尾志桜里は、フランソワの頭を撫でた。
山尾志桜里は、感激して涙を流した。
(ああ。この人は、私との約束を忘れないでいたのね)
山尾志桜里の娘と、山下貴司の息子は、すぐに、仲良くなって、キャッ、キャッ、と、はしゃいでいた。
外では、小雨が降り出した。
山下貴司は、時計を見た。
「君とは、もう少し話したいが、マスコミに知られると、週刊文春、や、フライデーなんかに、色々と、悪い記事を書かれるからね。そろそろ、別れよう」
「そうね。それが、私たちの宿命ね」
と、山尾志桜里が言った。
山下貴司は、立ち上がって、息子のフランソワを呼んだ。
「おーい。フランソワ」
山尾志桜里の娘のフランソワーズと、友達になったばかりの、フランソワは、父親に呼ばれて、父親の所に行った。
「山尾志桜里さん。では、さようなら。お互い、頑張ろう。また国会で論戦を正々堂々としよう」
と、山下貴司は、山尾志桜里に言った。
「山下さん。あなたも、頑張って」
山尾志桜里が言った。
「山尾志桜里さん。フランソワーズちゃん。さようなら」
山下貴司の幼い息子、フランソワは、そう言って、ペコリと頭を下げた。
そして、山下貴司は、幼い息子を連れて、喫茶店ルノワールを出ていった。
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