白雪姫

浅野浩二

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白雪姫「世界中で一番美しいのは誰?」

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昔々、ある国に、ものすごく可愛い少女がいました。
少女の名前は、坂上とし恵、と言いました。
その美しさ、といったら、世界に肩を並べる者がいないほどでした。
エリザベス・テイラーも、イングリッド・バークマンも、マリリン・モンローも、彼女と比べると、見劣りしてしまう程でした。
彼女は、1964年、生まれで、ある日、原宿を歩いている時、芸能プロダクション(渡辺プロダクション)、に、スカウトされて、世界一美しい、アイドルとして、歌手と、女優で、高校3年生で、デビューしました。
そして、一躍、日本中が熱狂する、アイドルタレントになりました。

彼女の活躍には、以下のようなものがあります。

テレビ
クイズ・ドレミファドン!(フジテレビ)
三波伸介の凸凹大学校(テレビ東京)レギュラー
欽ドン!良い子・悪い子・普通の子 (1984年)(フジテレビ)普通の子・ふつえ
鉄拳チンミ(1988年)アニメ声優 ライチの声
シンデレラ・エクスプレス(ちま)(1989年) <OVA>  Anime 声優
はなまるマーケット(TBSテレビ)
新提案!宮島・広島 春の夫婦旅(テレビ東京)

ドラマ
胸キュン探偵団 (1983年8月4日から同年9月29日・TBS) 主演
うっかり婦人ちゃっかり婦人

ラジオ
歌謡曲こんにちは (1982年 - 1984年)
とし恵の今夜もカクテルシャワー
お昼のハッピースタジオ (1984年RFラジオ日本)

映画
胸さわぎの放課後 主演
校内写生 OVA

CM
グンゼ こどもグンゼ CMソング(1985年)
三井生命
ライオン ソフト&ドライ
ソフトバンクモバイル 白戸家シリーズ
野村証券

ディスコグラフィー
シングル
き・い・てMY LOVE(1982年7月21日発売、B面:ひとりで街をゆくときも) SV-7235
黒い瞳(1982年11月5日発売、B面:ト・シ・エ) SV-7262
ラスト・キッス(1983年3月21日発売、B面:恋のディクショナリー) SV-7296
電話はスバヤク(1983年9月21日発売、B面:キッスのお時間) SV-7333 ※ TBS系テレビ「胸キュン探偵団」挿入歌 
校内写生 KONAI SHASEI by U-JIN(A面:センセーに言ってやろう/B面:放課後のロマンス)ULS-01

などがあります。

彼女は、デビューした年に、日本レコード大賞、最優秀新人賞をはじめ、ありとあらゆる賞を総なめにしました。
シングルは、すべてミリオンセラーとなり、世界、194カ国、で、発売され、売り上げは、1000億ドルを越しました。
日本の、高度経済成長をもたらしたのは、実は、日本企業の実力ではなく、彼女の、レコードと、写真集と、コンサートツアーの、売り上げのおかげでした。
ハリウッドの映画に、主役で、出演してもらえないかとの、オファーもありましたが、彼女は、「アメリカの女優が、かわいそう」、と言って、断りました。
徳仁親王、(現皇太子)、も、彼女に、プロポーズしましたが、「皇室は堅苦しいからイヤ」、と言って、断りました。

彼女は、明るく、素直で、とても、いい性格でした。
しかし、彼女には、一つ、欠点がありました。
それは、極度のナルシスト、です。
もちろん女は、みんな、ナルシストですが、彼女の、ナルシストの度合いは、非常に強く、彼女は、毎日、魔法の鏡に向かって、「鏡よ。鏡よ。鏡さん。世界中で一番美しいのは誰?」と聞くのが習慣でした。
すると鏡は、「一番美しいのは、坂上とし恵様です」と答えました。
彼女は、それを聞いて、ほっと、胸を撫でおろしていました。
彼女は、自分が、世界一美しい女でなければ、我慢できなかった、のです。

彼女と、平行するように、一人の、イケメン男が、タレントとして、活動していました。
男は、野々村真といって、1964年、生まれで、18歳の時、お昼の人気番組、「笑っていいとも」の、いいとも青年隊の、オーディションに合格して、既にタレントとして活動していた羽賀研二・久保田篤と、共に、初代いいとも青年隊として、デビューしました。
その後は、バラエティー番組、や、テレビドラマ、や、映画、に、とんとん拍子で、出演するようになり、日本中の全ての女が、憧れる、人気タレントになりました。

そして、1995年、彼は、坂上とし恵、と、結婚しました。
坂上とし恵、と、野々村真は、同じ、1964年、生まれで、結婚した時は、31歳でした。
披露宴は、それは、それは、豪勢なものでした。
一億二千万人の日本人全員が、二人の結婚を祝福しました。
二人は、男優、女優、活動をしながら、幸せな、家庭生活を送りました。

そして、2001年4月20日、二人に、可愛い、女の子が、生まれました。
彼女は、ヨハン・パッヘルベルの、「カノン」、にあやかって、香音(かのん)、と、名づけられました。
彼女は、優しい父親と、美しい母親に、愛されて、すくすくと、元気に育っていきました。
彼女は、名前の由来とおり、音楽が好きで、小学校2年の時から、ドラム、や、ベースを演奏するように、なりました。
小学校でも、学校の人気者で、「香音ちゃん、って、物凄くかわいいね」、と、男子生徒からも女子生徒から、も、言われて、みんな、彼女に、好意を持ち、そして、憧れました。
父親も、母親も、美しい娘を、誇りに思い、ますます、可愛がりました。
彼女は、2013年2月8日に、music.jpで配信された、「花粉デビルをやっつけろ!」、を歌って本格的に、芸能人として、デビューしました。
(同年2月8日付けmusic.jpのデイリーチャートで1位を獲得)

その後は、両親と同様、テレビドラマ、や、CM、雑誌、スチール、などで、活躍していきました。
テレビドラマでは。
コドモ警視 第1話(2013年、TBS) - 宮部サチ 役
大河ドラマ 花燃ゆ(2015年、NHK) - 杉寿(幼少期) 役
保育探偵25時~花咲慎一郎は眠れない!!~ 第8話(2015年、テレビ東京) - 飯田ノリコ 役
マザー・ゲーム~彼女たちの階級~(2015年、TBS) - 矢野怜奈 役
などかあり、

CMでは、
任天堂「ぷよぷよ」(2011年7月 - )
ソフトバンク「白戸家『野々村家』篇」(2014年2月 - )
エリエール「除菌できるアルコールタオル」青じょきんちゃん(2014年4月 - )
日本水産「イマークS」(2014年 - )
タカラトミー「Decora Palette」(2014年 - )
NHK「受信料 住所変更のお知らせ Netでカンタンお手続き」ドラム演奏篇(2016年4月 - )
などがあります。

香音の人気は、どんどん高まっていきました。
そして、ついに。
一億二千万人の日本人が、全員、香音の熱狂的なアイドルになりました。

始めの頃は、喜んでいた、母親の、野々村とし恵、ですが、だんだん、娘の、活躍を素直に喜べない、何とも言えない、もどかしい気持ちが、心の中に起こってきました。
そして、その気持ちは、娘の活躍が上がるのにつれて、高まっていきましした。
ある時、母親は、魔法の鏡に聞きました。
母親は、娘が、デビューした頃から、何となく、魔法の鏡に、「世界中で一番美しいのは誰?」、と、聞く習慣が、なくなっていたのです。
得体の知れない不吉な不安が、彼女の心を始終おさえつけていたからです。
しかし、母親は、勇気を出して、久しぶりに、魔法の鏡に向かって、「世界中で一番美しいのは誰?」と、おそるおそる聞いてみました。
すると鏡は、「一番美しいのは、野々村香音ちゃん、です」と答えました。
母親は、金槌で頭を打たれたような、天地の避けるような、ショックを受けました。
そのショックの度合い、は、筆舌に尽くせぬものでした。
無理もありません。
母親には、世界一美しいのは、自分である、という、絶対の、自信と誇りを持っていたからです。
母親は、魔法の鏡が、間違えているのではないかと、思い、魔法の鏡に向かって、何度も、「世界中で一番美しいのは誰?」と、聞いてみました。だが、答えは、変わることなく、「世界中で、一番美しいのは、野々村香音ちゃん、です」、との、返答で、変わることはありませんでした。
母親は、激しいショックに、打ちのめされて、しばしの間、ガックリと、項垂れていました。

日が暮れ始めました。
ピンポーン。
チャイムが鳴りました。
野々村とし恵、は、二階の自室から、階下に降りて、玄関の戸を開けました。
「ただいまー」
そこには、娘の香音と、父親の、野々村真、が、手をつないで、ニコニコしていました。
「今日は、二人で、CMの撮影だったんだ。遅くなって、すまん」
野々村真が言いました。
「あなた。おかえりなさい」
と、母親は、娘の香音から、目をそらすようにして、答えました。
「夕ご飯は?」
母親が聞きました。
「まだ、食べてないんだ」
夫が言いました。
「じゃあ、夕食にしましょう」
娘の香音と、父親の、野々村真、は、食卓につきました。
母親は、作っておいた、ビーフシチューと、ご飯を、温めて、食卓に並べました。
「うわー。美味しそうー。いただきまーす」
香音は、そう言って、ビーフシチューを食べ出しました。
父親も、食べ始めましたが、食事中、父親は、娘と、今日の、CMの、話、を嬉しそうに、語りあう、ばかりで、母親の存在は、眼中に無いように、見えました。
ニコニコ、愛くるしい笑顔で、ビーフシチューを食べている娘を、見ているうちに、だんだん、母親の心に、憎悪の気持ちが、灯ってきて、それは、どんどん、メラメラと、激しく燃え盛る炎に、変わっていきました。
その夜、母親は、確かに、メフィストフェレスの囁き、を、聞きとりました。
母親は、どうしたら、自分の、憤り、の気持ち、が、はれるかを、考えました。
そして、ある結論に達しました。

その週の日曜日のことです。
「香音ちゃん」
「なあに?お母さん」
「香音ちゃんは、神様って、いると思う?」
「・・・・」
娘は答えられず、困っています。
「私は、いると、思うわ。香音ちゃんは?」
「わ、わからないわ」
娘は、困惑した顔つきで言いました。
「香音ちゃんが、可愛い、人気アイドルになれたのはね。・・・実は、お母さんが、毎日、神様に、香音ちゃんが、可愛い、人気アイドルになれますように、と祈っていたからかも、しれないわ」
「ええー。ホントー。そんなこと、してくれてたの。有難う」
「ええ。そうよ」
「有難う。お母さん」
「じゃあ、今日は、神様のいる所に、お礼を言いに、行かない?」
「はい。行きます」
「よかったわ。じゃあ、行きましょう。おかあさんが、神様のいる所に連れていってあげるわ」
「はい」
こうして、野々村とし恵、は、娘の香音を、車に乗せました。
そして、カーナビの目的地を、「埼玉県越谷市北越谷1-20-6」、にセットしました。
とし恵、は、国道4号線を、北へ飛ばして、埼玉県の越谷市に行きました。
「さあ。着いたわよ」
そう言って、母親は、車を止め、娘と、車から出ました。
目の前には、4階建ての、ビルがあります。
「お母さん。ここに、神様がいるの?」
「ええ。そうよ」
そう言って、母親は、娘の手を握って、ビルのエスカレーターに、入りました。
そして、4階で、降りました。
そこには、表札の無い、戸がありました。
母親は、チャイムを鳴らしました。
ピンポーン。
「もしもしー。野々村とし恵、ですが・・・」
「はい。わかりました」
そして、ドアが開かれました。
「やあ。いらっしゃい。坂上とし恵、さん、・・・・じゃなかった。野々村とし恵、さん。どうぞ、お入り下さい」
メガネをかけた、やさ男が出ました。
「香音ちゃん。この人は、私の高校時代の友人なの。荒木浩というの。とっても、真面目な方よ」
母親は、娘に、やさ男を紹介した。
「やあ。香音さん、ですね。初めまして。私は、荒木浩、と申します。とし恵さんの、高校時代の、同級生です」
そう言って、やさ男、は、香音に、手を差し出しました。
「はじめまして。荒木さん。私は野々村香音と申します」
娘は、メガネをかけた、やさ男、と握手しました。
母親と娘は、ビルの一室の中に入りました。
「香音ちゃん。お母さんは、ちょっと、この人と、お話するから、本でも、読んでいて」
「はい」
そう言って、娘は、大きな部屋の、隅っこにある、本棚に向かいました。
いくつか、本があったが、どれにしようかな、と、ちょっと迷ってから、一冊の薄い本を、本棚から、取り出して、正座して、読み出しました。
本の表紙には、「白雪姫」、と、書いてありました。
母親は、荒木氏と、事務室に入りました。
「ご用は何でしょうか。坂上とし恵さん、・・・じゃなかった。野々村とし恵、さん」
荒木浩が聞きました。
「率直に申し上げます。娘の香音を、あずかって欲しいんです」
「これは、また、どうして、ですか?」
荒木氏が聞きました。
荒木氏や、アレフの信者たちは、麻原彰晃が、絶対神と、信じて、疑わないが、世間の人間は、アレフ、や、麻原彰晃、は、危険な人物と思われている、ということは、世間の常識人たちの、麻原バッシングによって、感覚として、わかっていました。
「実は。娘の香音なんですが・・・。これは、娘には、知らせていないんですが、この前、学校の健康診断で、かなしい結果が出たんです。娘は、悪性の白血病で、余命、一カ月、ということが、わかったんです。病院に、入院させて、抗がん剤、や、放射線治療をしても、余命を、二カ月に、伸ばすのが、関の山、だとも、言われました。抗がん治療は、激しい苦痛をともないますし、治療の副作用で、髪の毛が、抜けてしまいます。娘は、艶のある、美しい黒髪を、命、以上に大切にしています。そこで、私は、娘に、積極的な、アグレッシブな治療は、行わず、美しい、可愛い、アイドルの姿のまま、死なせてやりたいと、判断しました」
「そうだったんですか」
「そこで。高校の同級生である、あなたを、思い出して、ここに、住まわせて、欲しいと思ったのです」
「そうですか。でも、それなら、お宅で、親子と一緒に、過ごした方が、いいのでは、ないでしょうか?」
「それが・・・。夫は、病院に入院させる、方を、主張して、どうしても、譲ってくれないのです。なので、ここに、かくまって、欲しいんです」
「そうですか」
「私は、娘に、さりげなく、聞きました。香音ちゃん。もし、髪が、全部、抜けてしまったら、どうする、って」
荒木氏は、黙って聞いていました。
とし恵、は、話し続けました。
「そしたら、娘は、そんなことになるくらいなら、死んだ方がマシー、と、叫びました。なので、私は、娘の希望を叶えてやりたいんです。なので、どうか、ここで、かくまって、いただけないでしょうか?」
「そうですか。そういう事情が、あったんですか」
荒木氏は、腕組みをして、ため息をつきました。
「そして。治療をしませんから、娘は、このままでは、だんだん、体力が無くなって、苦しんで、死ぬことになります」
荒木氏は、黙って聞いていました。
「そこで、お願いなんですが・・・」
と言って、母親は、一息、入れて、
「娘が、苦しんで死なないよう、元気な時に、ボアして、楽に、死なせてあげて欲しいんです」
母親が、キッパリ言いました。
「し、しかし。我々、アレフは、タントラヴァジラヤーナの、(ポア)、教えは、世間の非難によって、封印しています」
荒木氏は、鼻息を荒くして、言いました。
「日本では、積極的安楽死は、法的に認められていません」
母親が言いました。
「それは、そうですが、しかし・・・」
荒木氏は、ためらった。
「オウム真理教、の、ポア、の、教え、が、悪いのは、オウム真理教に、都合の悪い、人間を、殺す、ためでしたね。しかし、この場合は、どうでしょうか。私は、娘を、元気なまま、死なせてやりたいんです。死ぬ運命にあるんですから。宗教って、この世の中の、法律では、どうにもならないことを、救ってくれるものじゃないでしょうか?」
荒木氏は、黙って聞いていました。
しばしの間、黙っていたが、荒木氏は、重い口を開いた。
「わかりました。世間からは、非難されるでしょうが、罪は、私、一人が、背負います。僕も、これが、悪い行為なのか、どうか、世間に問いたいと思います」
荒木氏は、キッパリと言いました。
「それで、いつ、ポアさせれば、いいのでしょうか?」
「そうね。元気なうちがいいから、出来るだけ早くお願いします。香音は、家でも、日に日に、体調が、悪くなってきていますから」
「具体的には、いつ、が、よろしいのでしょうか?」
「今夜、寝ている間に、してもらえないかしら」
「わかりました。今夜、ポアします。ポアしたら、連絡します」
「よろしく、お願い致します」
母親は、深々と頭を下げました。
そして、事務室を出ました。
娘の香音は、腹ばいになって、「白雪姫」、を、読んでいます。
母親は、娘の所に、行きました。
「香音ちゃん」
「はい」
「今日、一日だけ、ここに、泊まってくれない?」
「えっ。どうして。お母さん」
「ここに、おかあさんが、香音ちゃん、が、人気タレントに、なれますように、と、祈った、神様が、いるのよ。香音ちゃん、が、人気タレントに、なれたのは、ここの神様のおかげ、なのよ。だから、その、お礼として、ここで、一日だけ、夢を叶えてくれた、神様に、毎日、お礼の、お祈り、を、ぜひ、して欲しいの」
「わかったわ。お母さん」
「一日、だけよ。明日、おかあさんが、迎えに来るからね」
「わかったわ」
そう言って、母親は、アレフの埼玉支部道場を出ました。
もう、午後7時になっていました。
そして、とし恵、は、国道4号線を、飛ばして、家に向かいました。
そして、近くの、スーパーで、夕食の食材を買って、家に帰って、急いで、夕ご飯を作りました。
夕ご飯は、サーロインステーキでした。
とし恵、の心には、今までにない、歓喜が、起こっていて、ワクワクした気持ちでした。
ピンポーン。
チャイムが鳴りました。
彼女は、
「はーい」
と、元気よく返事して、玄関にパタパタと走って、玄関の戸を開けました。
「とし恵。ただいまー」
夫の、野々村真が、立っていました。
「おかえりなさい。あなた。今、食事が出来たところよ。今日は、サーロインステーキよ」
妻は、ニコッと、微笑んで、言いました。
「おっ。何か、嬉しそうだな。何か、いいこと、あったのか?」
夫が聞きました。
「別に、何もないわ。それより、早く、ご飯を食べましょう」
野々村真は、靴を脱いで、家に入りました。
そして、妻と一緒に、食卓につきました。
妻は、サーロインステーキを、食卓に並べました。
夫の、野々村真、は、まわりを、キョロキョロ、見まわしました。
「あれ。香音は?」
「今日は、友達の家に、泊まるって、言ってたわ」
「友達って。どこの子?」
「えーと。誰だったかしら。ちょっと、忘れちゃったわ」
「大丈夫だろうか?」
「あの子は、しっかりしているから、大丈夫よ」
一人息子の、野々村侑隼(ゆうと)、は、東京の、ある、全寮制の、学校に、入っていて、いません。
「さあ。食べましょう」
二人は、食事を始めました。
夫は、娘のことが、気になっているのか、何か、ソワソワした様子です。
「ねえ。あなた。こうして、二人で、食事するのって、久しぶりね」
妻は、嬉しそうに言いました。
「ああ。そうだね」
夫は、素っ気ない口調で、言いました。
妻は、夫の、無味乾燥な言い方に、むっ、となりましたが、こらえて、心の中で、
(ふふふ。もうすぐ。もうすぐ)
と、呟きました。
そして、食事が終わり、夫は風呂に入り、その後、妻が風呂に入りました。
そして、NHKのニュースウォッチ9を見て、ついで、テレビ朝日、の、報道ステーション、を見ました。
そして、二人は、寝室に入って、パジャマに着替え、寝ました。
といっても、二人の寝室は、別室です。
母親は、娘が生まれてから、娘の夜泣き、や、授乳、など、子育てに専念するために、夫と別室で、寝ていました。
それが、何となく、惰性で、続いていて、娘が、一人で、行動できるようになっても、二人は、別室で、寝る習慣になっていました。
すぐに、隣の夫の部屋から、グー、ガー、と、夫の、いびき、の音が聞こえてきました。
妻は、しめしめ、と思いました。
妻は、スマートフォンを、枕元に、大事そうに、置いて、着信音が鳴るのを待ちました。
12時を過ぎ、1時になりました。
スマートフォンの着信音が、ピピピッ、っと、鳴りました。
妻は、急いで、スマートフォンを、手に取って、耳にしました。
発信者は、「荒木浩」、と表示されていました。
「もしもし・・・野々村さんですか?」
「はい。野々村とし恵、です」
「今日、お目にかかった、荒木浩です。今、香音ちゃんを、ポアしました」
「そうですか。それは、それは、ありがとうございました」
「これから、警察に連絡します」
「警察には、連絡しなくていいです」
「えっ。どうしてですか?」
「だって、警察に、連絡したら、アレフが、世間から、激しく非難されるでしょ」
「え。ええ。そうでしょうね。しかし、それは、覚悟しています」
「本当に、連絡しなくていいです。いえ。むしろ、して欲しくないんです」
「えっ。それは、どうしてですか?」
「娘が、アレフに、ポアされた、と、世間に知られたら、メディアで、さんざんに、騒がれるでしょ。私。娘の死は、そっと、しておいて欲しいの。天国の娘も、それを、望んでいると思うわ」
「・・・・」
荒木氏が、答えないので、とし恵、は、まくしたてるように言いました。
「それに、宗教である、アレフは、現実社会の常識を超えた、現実社会とは別の、崇高な、価値観を持っている、という自負を持っているのでしょう。私も、キリスト教を信仰していますから、よく、わかります。私も、宗教を否定する、社会の方が、間違っていると思います」
「そうですか。しかし、行方不明になったら、警察が、大掛かりな、を捜査しますよ。どうしますか?」
「こういうことにしませんか。つまり。私が、娘に、病気を告げて、娘は、ショックのあまり、富士の樹海に行った、ということに。私が、香音の、ブログに、遺言を書いておきますわ。私は、娘のブログのパスワードは、知っていますから」
「わかりました。では、遺体は、どうすれば、いいのでしょうか?」
「遺体は、焼いて、どこかに、人気のない所に、埋めて下さい」
「わかりました」
そう言って、荒木氏は、電話を切りました。
夫人は、荒木氏を説得すると、今までにない、嬉しさが、胸から、込み上げてきました。それと、同時に、今まで、肩にかかっていた重荷がとれました。
そして、疲れが、どっと、出て、すぐに、深い眠りにつきました。

翌日は日曜でした。
夫人は、10時に起きました。
夫は、もう、とっくに、テレビドラマの収録のため、家を出ていました。
夫人は、清々しい気持ちで、カーテンを開きました。
爽やかな青空でした。
夫人は、階下に降りて、トースト、と、コーンスープ、と、コーヒー、の、昼食を食べました。
その時。
ピンポーン。
チャイムが鳴りました。
「速達でーす」
と、宅急便の小包が、届きました。
夫人は、それを、受け取りました。
差出人は、荒木氏でした。
夫人は、すぐに、中を開けてみました。
小包の、中には、壺と、手紙、が、入っていました。
手紙には、こう、書かれてありました。
「坂上とし恵様。昨日、お嬢様を、ポアしました。香音ちゃん、の、美しい黒髪を、遺髪として、お送り致します。どうぞ、お受け取り下さい。荒木浩」
そして、壺を開けると、娘の黒髪が、ありました。
夫人は、満足して、喜びましだ。
(これで、香音は死んだ)
(これで、私が、世界一、美しい女、に、返り咲いた)
夫人は、しばし、喜びに浸って、我を忘れていたが、ぼんやりと、虚空を眺めているうちに、あること、に、気づきました。
それは、魔法の鏡です。
(本当に香音は死んだんだろうか?)
長いこと、魔法の鏡を、見ることが、なかったので、とし恵、は、魔法の鏡、の存在を忘れていたのです。
それで、とし恵、は、自分の部屋に行き、箪笥の奥に、しまっていた、魔法の鏡、を、取り出しました。
そして、昔のように。
魔法の鏡に向かって、「世界中で一番美しいのは誰?」と聞きました。
すると鏡は、「一番美しいのは、野々村香音ちゃん、です」と答えました。
とし恵、は、びっくり、しました。
(香音は生きている)
とし恵、は、急いで、スマートフォンを、取り出しました。
そして、荒木氏に、電話しました。
発信者番号通知で。
トゥルルルル。
「はい。もしもし。こちらは、アレフ、埼玉支部です」
と、荒木氏、の、声が聞こえました。
「もしもし。荒木さん。私です。坂上とし恵、です」
「ああ。とし恵、さん、ですね。香音ちゃんは、約束通り、昨日、ポアしました。心が痛みましたが・・・・。遺髪と、手紙、を、お送りしましたが、届きましたでしょうか?」
「荒木さん」
とし恵、は、激しい語調で、怒鳴るように、言いました。
「はい。何でしょうか?」
「香音は、ポアしてないでしょう」
「いえ。ちゃんと、ポアしましたよ」
「ウソ、おっしゃい。隠しても、わかるわよ」
とし恵、は、激しい語調で、怒鳴るように、言いました。
「どうして、そんなことが、離れているのに、わかるのですか?」
荒木氏が聞きました。
「それは、魔法の・・・」
と、言いためらって、
「ともかく、わかるものは、わかるのです」
と、とし恵、は、強引に言いました。
荒木氏は、とし恵、の、強気な口調に、たじろいでいるのか、返事をしませんでした。
「娘さんの、遺髪を送ったではありませんか?」
荒木氏が言いました。
「ウソおっしゃい。あれは、娘の髪の毛では、ありませんわ。親子ですもの。わかりますわ。幼い頃から、毎日、頭を撫でてやっていましたし。髪を梳かして、やっていましたもの。それに、髪の毛の、一本を、DNA鑑定してもらえば、すぐに、わかることですよ」
とし恵、は、責めたてるように言いました。
荒木氏は、とし恵、の、強気な口調に、たじろいでいるのか、返事をしませんでした。
「これから、そちらに、うかがいます」
そう言って、とし恵、は、電話を切りました。
そして、車を飛ばして、アレフの埼玉本部に、向かいました。
ピンポーン。
チャイムを、押すと、荒木氏、が、おずおずと、出ました。
「あ。とし恵、さん。いらっしゃい」
「入らせてもらいます」
そう言って、とし恵、は、ズカズカと、部屋に入りました。
そして、荒木氏、と、向き合って、座りました。
「荒木さん。娘は、ポアしていないでしょう?」
夫人は、荒木氏、を、にらみつけて、激しい語調で、問い詰めました。
「どうして、それが、わかるのですか?」
「それは、言えませんが・・・・。とにかく、わかるものは、わかるのです」
「・・・・」
荒木氏、は、夫人の、鼻息を荒くした、ド迫力に、押されて、黙っていました。
「宗教者は、ウソをついて、人をだますのですか?それが、本当の、宗教ですか?」
この一言が、荒木氏、の、心を、動かしました。
「申し訳ありません。とし恵、さま、の、言う通り、香音ちゃんは、ポアしていません」
そう言って、荒木氏、は、土下座して、謝りました。
「どうして、ポアしてくれなかったのですか?」
「そ、それは・・・。香音ちゃん、の、元気な、かわいい顔を、見ているうちに、どうしても、殺すことが、出来なくなってしまったのです」
「では。今、香音は、どうしているのですか?」
「アレフの、別の支部、に、車で、移動させました」
「どこの支部ですか?」
「それは、ちょっと、言えません」
「送ってきた、髪の毛は、香音の、髪の毛、では、ないでしょう?」
「どうして、それが、わかるのですか?」
「親子ですもの。わかりますわ。幼い頃から、毎日、頭を撫でてやっていましたし。髪を梳かして、やっていましたもの」
「そ、その通りです。あれは、娘さんの、髪の毛、では、ありません」
「では、誰の、髪の毛ですか?」
「ヘアドネーションに、車を飛ばして、ウィッグを、もらってきたのです。だから、どこかの、女の子、の髪の毛、です」
「そうだと思いましたよ」
「申し訳ありません」
「アレフ、って、平気で、ウソをつくんですね。オウム真理教の、時と、全く変わっていないじゃないですか?」
「申し訳ありません」
「では。もう一度、お願い致します。娘を、ポアしてあげて下さい。それが、娘の幸せの、ためなのです」
「・・・・」
荒木氏、は、腕組み、をして、しばし、黙考熟思していました。
とし恵、は、鋭い目つき、で、荒木氏、を、にらんでいます。
しばしして、荒木氏、は、顔を上げました。
「わかりました。今度は、ちゃんと、ポアします」
「では、宜しくお願い致します」
そう言って、とし恵、が、去ろうとした時です。
荒木氏、は、
「待って下さい」
と、とし恵、を引き留めました。
言われて、とし恵、は、立ち止まりました。
「実は、香音さんは、別の支部に、移動させては、いません」
「では、どこに、いるのですか?」
「この部屋にいます。こちらへ来て下さい」
荒木氏、は、別の部屋の戸を開きました。
そこに、香音が、昨日の服のまま、絵本を読んでいました。
香音は、母親に、気づくと、
「あっ。お母さん」
と言って、母親に抱きついてきました。
「さびしくなかった?」
「うん」
母親は、心とは、裏腹に、娘を抱きしめました。
こうなっては、娘を連れて、家に帰るしかありません。
「よく、一日、我慢してくれたわね。ありがとう」
「ううん。だって、私を、アイドルにしてくれた、神様への、お礼だもの」
「香音ちゃん。じゃあ、お家へ、かえりましょうね」
そう言って、母親は、娘の手をとりました。
「では、私たちは、帰ります。荒木さん。どうもありがとうございました」
母親は、荒木氏、に、一礼しました。
「さよなら。お兄さん」
香音も、ペコリと別れの挨拶をしました。
そうして玄関を出ようとした時です。
母親は、
「ちょっと、待って」
と、娘に言って、娘の手を放し、荒木氏、に、近づきました。そして、荒木氏に、
「今日は、帰ります。娘の、ポアは、また、別の日に、お願いします。よろしいでしょうか?」
と、耳打ちしました。
「はい。わかりました」
荒木氏は、素直に答えました。
こうして、母は、娘を、車に、乗せて、国道4号線を、飛ばして、家に向かいました。
娘と二人きりに、なると、とし恵、の心に、かわいい、我が子、への、愛情が、少し、もどってきました。
「ねえ。香音ちゃん」
母親は、アクセルを踏みながら、隣の座席に座っている、娘に、話しかけました。
「なあに?お母さん」
「あのね。パパには。昨日は、友達の家に、泊まった、ということに、しておいて、くれない?」
「どうして?」
「パパは、神様のいる所に、アイドルになれた、お礼に、泊まった、なんて、言ったら、私と香音ちゃん、を、笑うからよ。パパは、神様なんて、信じていないもの」
「わかったわ」
そうして、家につきました。
途中で、夕食の食材を買いました。
その日の、夕食は、ビーフシチューでした。
ちょうど、夕食の支度が、出来た時です。
ピンポーン。
チャイムが鳴りました。
「はーい」
とし恵、は、玄関に行って、戸を開けました。
父親が立っていました。
「あなた。お帰りなさい」
「ああ。香音は?」
夫は、真っ先に、娘の安否を聞きました。
「二階の、自分の部屋にいるわよ」
「はー。良かった」
父親は、心の底から、安心したような、顔でした。
(私より、娘の方が、大事なのね)
母親の心に、そんな、言葉が流れました。
複雑な思いが、また、母親の心に、もどってきました。
「香音ちゃん。ご飯よー」
母親は、二階に向かって、娘を呼びました。
「はーい」
と、返事が、帰ってきました。
親子三人の、夕ご飯、が、始まりました。
「いただきます」
そう言って、三人は、夕ご飯、を、食べ出しました。
父親は、ニコニコ笑って、娘を見ながら食べました。
「香音。昨日は、誰の家に、泊まったんだ?」
父親が、嬉しそうに、聞きました。
娘は、チラッと、母親の方を、一瞥してから、
「ふふふ。それは、秘密」
と、思わせ振りな口調で言いました。
「心配したんだぞ。もしかしたら、人さらい、に、捕まってしまったのか、と、思って、今日の、ドラマの撮影は、ミスばっかり、してしまったんだぞ」
「ごめんね。パパ」
「いや。いいんだよ。でも、もう、二度と、パパに、黙って、友達の家に、泊まったりは、しないでおくれ」
「うん」
「ともかく、今日は、娘の、無事な帰還を祝って、カンパーイ」
と、妻は、酒は飲めるのに、夫は、娘のグラスに、オレンジジュースを注いで、乾杯しました。
食事が終わると、父親は、
「香音。トランプして遊ぼう」
と言いました。娘の香音は、
「うん。やろう。やろう」
と、ニッコリ笑って、言いました。
父親と娘は、楽しそうに、まるで、あたかも、おしどり夫婦であるかのように、トランプで、遊んでいます。
トランプは、いつも、ババ抜き、でした。
「あー。いやー。ババが来ちゃったー」
香音が無邪気に、はしゃぎました。
とし恵、には、何とも、二人が、ババぬき、の、トランプをするのが、自分に対する、当てつけ、のような、気がして不愉快でした。
妻は、風呂をわかしました。
「あなたー。お風呂が、沸いたわよー」
と、妻は、言いました。
夫は、「ああ」、と、返事をして、娘を見ました。
「香音。昨日は、慣れない、友達の家に泊まって、疲れただろう。香音が先に入りな」
「いや。パパから、先でいいわ」
父親は、ちょっと、考えて、
「久しぶりに、お風呂に、一緒に、入らないか?」
「うん」
こうして、二人は、一緒に、風呂に入りました。
母親の心に、何とも、言えぬ、怒りの炎が、メラメラと燃え出しました。
(結婚した三年間は、毎日、私と一緒に入っていたのに・・・)
こうして、父と娘の二人は、一緒に、風呂に入りました。
娘は、10歳まで、父親と一緒に、風呂に入っていたのです。
父親と、娘が、キャッ、キャッ、はしゃぐ、声が、聞こえてきました。
「香音。背中を洗ってやるよ」
「キュッ、キュッ」
「今度は、私が、パパの背中を洗うわ」
「ゴシゴシ」
「あっ。いやっ。パパのエッチ」
という、父親と娘が、はしゃぐ声が聞こえてきました。
母親の心に灯った炎は、メラメラと、その、激しさを増していきました。

野々村香音は、アイドルとして、デビューして、とんとん拍子に、人気者になっていきました。
テレビドラマ、映画、バラエティ、CM、舞台、雑誌、スチール、その他、あらゆる所から、出演のオファーが来ました。
その例を挙げると。

テレビドラマでは。
コドモ警視 第1話(2013年、TBS) - 宮部サチ 役
大河ドラマ 花燃ゆ(2015年、NHK) - 杉寿(幼少期) 役
保育探偵25時~花咲慎一郎は眠れない!!~ 第8話(2015年、テレビ東京) - 飯田ノリコ 役
マザー・ゲーム~彼女たちの階級~(2015年、TBS) - 矢野怜奈 役

映画では。
オズ めざせ! エメラルドの国へ(2015年、ファインフィルムズ) - キャンディーの速記者 役(声の出演・日本語吹替)

バラエティでは。
クイズAHA!(2013年3月16日、日本テレビ) - 回答者(野々村真、野々村俊恵と共演)
こども鉄道博士(2014年3月16日、中京テレビ) - ゲスト

CMでは。
任天堂「ぷよぷよ」(2011年7月 - )
ソフトバンク「白戸家『野々村家』篇」(2014年2月 - )
エリエール「除菌できるアルコールタオル」青じょきんちゃん(2014年4月 - )
日本水産「イマークS」(2014年 - )
タカラトミー「Decora Palette」(2014年 - )
NHK「受信料 住所変更のお知らせ Netでカンタンお手続き」ドラム演奏篇(2016年4月 - )

舞台では。
キセキの人(2010年)
笑えて泣ける朗読劇 パートI(2010年)
レッドカードファミリー(2011年)
笑えて泣ける朗読劇 パートII(2011年)
レッドカードファミリー リターンズ(2012年)

雑誌では。
ニコ☆プチ(2013年4月号 - 2015年6月号)
ニコラ(2015年7月号 - 2018年5月号)

スチールでは。
モリリン「HEAD KIDS」2013 SPRING SUMMER(2013年2月 - )
東京都水道局(2013年5月 - )
W早稲田ゼミ(2013年6月 - )
セシール「Kids' CECILE 2013年冬号」カタログ(2013年9月 - )
千趣会「チャイルド 2013年秋冬号」カタログ(2013年9月 - 2014年2月)
株式会社ジェニィ「JENNI Love」イメージモデル(2013年9月 - )
ニッセン「なかよし共和国 2014年春号」カタログ(2014年1月 - 6月)
株式会社ワールド「PINK-latte」で、「ノンラテ」としてイメージモデル(2017年6月 - )

その他では。
モデルプレス Web - インタビュー掲載
読売新聞 Web「yorimo」 - インタビュー掲載

などがあります。
それらは、すべて、野々村香音、1人の、出演か、あるいは、野々村香音、と、父親の、野々村真との、共演、の依頼ばかりでした。
野々村とし恵、への出演の依頼は、全く来ませんでした。

しかし、ある時、とし恵、にも、写真集の撮影の、オファーが来ました。
とし恵、は、有頂天になって喜びました。
「野々村とし恵、さん。あの。ぜひ、写真集を出版したいんですが」
依頼者が言いました。
「え、ええ。構いませんわよ」
とし恵、は、有頂天になりました。
「グアムで。ビキニで、よろしいでしょうか?」
依頼者が聞きました。
「え、ええ。構いませんわよ」
「セミヌードで、少し、脱いでもらっても、いいでしょうか?」
依頼者が聞きました。
「え、ええ。構いませんわ。でも、私も、もうすぐ50歳ですが、それでも構わないでしょうか?」
「えっ。何を勘違いしているんですか。あなたじゃなく、娘さんの、香音ちゃん、の、写真集ですよ」
とし恵、の顔が、瞬時に、般若に変わりました。
「娘は、まだ、早すぎます」
そう言って、とし恵、は、ガチャリ、と、電話を切りました。

ある時には、とし恵、に、CMの出演の依頼が来ました。
「野々村とし恵、さん。あのCMに出演してもらえないでしょうか?」
と、依頼者が言いました。
「いいわよ。で、どんな役?」
とし恵、が、聞き返しました。
「白雪姫ふうのCMで、香音ちゃん、が、白雪姫で、とし恵さんは、白雪姫を殺そうとする、継母の役、というのですが・・・」
依頼者が言いました。
とし恵、の顔が、瞬時に、金剛力士に変わりました。
「結構です」
とし恵、は、その一言で、断りました。

また、別のある時には、警察から、ポスターの依頼が、来ました。
とし恵、は、有頂天になって喜びました。
「野々村とし恵、さん。ポスターを作りたいので、お願い出来ないでしょうか。娘の香音さん、と一緒に」
と、依頼者が言いました。
「いいわよ。で、どんなポスター?」
とし恵、が、聞き返しました。
「児童虐待のポスターです。最近、児童虐待をする母親が増えていますから。とし恵、さんが、かわいい娘の香音ちゃんを虐待している、ポスターです」
とし恵、の顔が、瞬時に、不動明王に変わりました。
「結構です」
とし恵、は、その一言で、断りました。
こうして、とし恵、の怒りの炎、が、メラメラと、燃え盛って、いきました。
4月20日のことです。
その日は、香音の誕生日でした。
その日、夫は、映画のロケのため、家にいませんでした。
昼近くに、NHKから、大河ドラマ 花燃ゆ(2015年、NHK) - 杉寿(幼少期) 役に、娘さんの香音ちゃんに、ぜひともお願いします、というオファーが来ました。
とし恵、の怒りの炎、が、メラメラと、燃え盛って、頂点に達しました。
(なんで香音だけが・・・)
とし恵、は、急いで、荒木氏に、電話しました。
「荒木さん。前、お約束しましたよね。娘の病状が、悪くなってきました。どうか、娘をポアして下さい」
「はい。わかりました」
「では、これから、娘を、連れて、伺います」
そう言って、とし恵、は、電話を切りました。
そして、娘を見ました。
「香音ちゃん。大河ドラマ 花燃ゆ(NHK) - 杉寿(幼少期)、役、の、オファーが、来て、よかったわね」
「うん。ありがとう」
「実を言うとね。お母さん。毎日、NHKに交渉していたの。娘を、どうか、大河ドラマ、 花燃ゆ、の子役に使って下さいって」
「本当?ありがとう。お母さん」
「でも、NHKでは、なかなか、了解してくれなくて・・・。それで、以前、連れて行った神様に、毎日、お祈りに行くことに、したの。そうしたら、NHKの方から、娘さんを、子役に使わせて下さい、って、オファーが来たの。だから、香音ちゃん、が、子役になれたのは、間違いなく、あの神様の、おかげに違いないわ」
「本当?ありがとう。お母さん」
「じゃあ、今日、神様に、お礼を言いに、行かない?」
「はい。行きます」
「よかったわ。じゃあ、行きましょう。おかあさんが、連れていってあげるわ」
「はい」
こうして、野々村とし恵、は、娘の香音を、車に乗せて、アレフの埼玉支部がある、埼玉県の越谷市に、国道4号線を、飛ばして、行きました。
「さあ。着いたわよ」
そう言って、母親は、車を止め、娘と、車から出ました。
目の前には、4階建ての、ビルがあります。
母親は、娘の手を握って、ビルのエスカレーターに、入りました。
そして、4階で、降りました。
母親は、チャイムを鳴らしました。
ピンポーン。
「もしもしー。野々村とし恵、ですが・・・」
「はい。わかりました」
そして、ドアが開かれました。
「やあ。いらっしゃい。坂上とし恵さん、・・・・じゃなかった。野々村とし恵さん。どうぞ、お入り下さい」
「やあ。香音さん。お久しぶり」
「お久しぶりです」
と言って、娘は、荒木氏、と握手しました。
母親と娘は、部屋の中に入りました。
「香音ちゃん。お母さんは、ちょっと、この人と、お話するから、本でも、読んでいて」
「はい」
そう言って、娘は、大きな部屋の、隅っこにある、本棚に向かいました。
いくつか、本があったが、どれにしようかな、と、ちょっと迷ってから、一冊の薄い本を、本棚から、取り出して、正座して、読み出しました。
本の表紙には、「白雪姫」、と、書いてありました。
母親は、荒木氏と、事務室に入りました。
「荒木さん。以前、言ったように、どうか、娘をポアしてあげて下さい」
「わ、わかりました」
「それで、いつ、ポアさせれば、いいのでしょうか?」
「そうね。元気なうちがいいから、出来るだけ早くお願いします。香音は、家でも、日に日に、体調が、悪くなってきていますから」
「具体的には、いつ、が、よろしいのでしょうか?」
「今夜、寝ている間に、してもらえないかしら」
「わかりました。今夜、ポアします。ポアしたら、連絡します」
「よろしく、お願い致します。娘が、本当に、死んだか、どうかは、離れていても、わかりますから」
「どうして、わかるのですか?」
「それは、ちょっと秘密です。ともかく、わかるものは、わかるのです」
「わかりました」
「では、よろしくお願い致します」
母親は、深々と頭を下げました。
そして、事務室を出ました。
娘の香音は、腹ばいになって、「白雪姫」、を、読んでいます。
母親は、娘の所に、行きました。
「香音ちゃん」
「はい」
「今日も、一日だけ、ここに、泊まってくれない?そして、神様に、感謝の、お祈りをして欲しいの」
「わかったわ。お母さん」
「明日、おかあさんが、迎えに来るからね」
「わかったわ」
そう言って、母親は、アレフの埼玉支部道場を出ました。
もう、午後7時になっていました。
そして、国道4号線を、飛ばして、家に向かいました。
そして、家に着きました。
夫は、映画のロケで、出かけていて、いません。
とし恵、は、一人で、さびしい夕食をしました。
そして、寝ました。
しかし、母親は、勇気を出して、魔法の鏡に向かって、「世界中で一番美しいのは誰?」と、おそるおそる聞いてみました。
すると鏡は、「一番美しいのは、野々村香音ちゃん、です」と答えました。
(まだ、ポアしていないのね)
夫人は、呟きました。
(はやく、ポアしてくれないかしら)
とし恵、は、心から、そう願いました。
12時を過ぎ、1時になりました。
スマートフォンの着信音が、ピピピッ、っと、鳴りました。
妻は、急いで、スマートフォンを、手に取って、耳にしました。
発信者は、「荒木浩」、と表示されていました。
「もしもし・・・野々村さんですか?」
「はい。野々村とし恵、です」
「荒木です。今、香音ちゃんを、ポアしました」
「そうですか。それは、それは、ありがとうございました」
「では、これで・・・」
そう言って、荒木氏が、電話を切ろうとした時です。
「あっ。荒木さん。ちょっと、待ってて下さいね」
そう言って、とし恵、は、スマートフォンを、置きました。
とし恵、は、急いで、魔法の鏡を、取り出しました。
彼女は、魔法の鏡に向かって、「世界中で一番美しいのは誰?」と聞いてみました。
すると鏡は、「一番美しいのは、坂上とし恵様です」と答えました。
とし恵、は、それを聞いて、小躍りして喜びました。
とし恵、は、スマートフォンを、取って、
「荒木さん。娘をポアしてくれて有難うございます」
と、お礼を言いました。
「遺体は、どうすれば、いいでしようか?」
「焼却して、富士の樹海の地中に埋めて下さい」
「はい。わかりました」
そして、とし恵、は、久しぶりに、満足して、ぐっすり熟眠しました。

翌日は日曜でした。
夫人は、10時に起きました。
夫は、映画のロケのため、いません。
夫人は、清々しい気持ちで、カーテンを開きました。
爽やかな青空でした。
夫人は、階下に降りて、トースト、と、コーンスープ、と、コーヒー、の、昼食を食べました。
彼女は、何度も、魔法の鏡に、向かって、
「世界中で一番美しいのは誰?」、と聞いてみました。
すると鏡は、「一番美しいのは、坂上とし恵様です」、と答えました。
これで、娘の香音は、確実に、ポアされた、ことを、とし恵、は、確信しました。
すると、不思議なことに、高齢出産のため、劣化した顔が、若返ってきました。
(私は、娘に美しさを吸いとられたんだわ。だから、娘が、死んだため、私に、美しさが、もどってきたんだわ)
夫人は、そう思いました。

一週間して、夫が、ロケ先から、帰ってきました。
ピンポーン。
チャイムが鳴りました。
「はーい」
とし恵、は、元気に返事して、玄関を開けました。
夫の、野々村真、が、立っていました。
「ただいま」
そう言って、夫は、立っていました。
「お帰りなさい。あなた」
そう言って、夫を入れようとした時です。
「ただいま。お母さん」
と、夫の後ろから、死んだはずの、娘の香音が、顔を出しました。
とし恵、は、びっくりしました。
しかし、動転する気持ちを、抑えながら、とりあえず、とし恵、は、
「お帰りなさい。香音ちゃん」
と、言って、夫と娘を、家に入れました。
夫と香音は、居間の、ソファーに、座りました。
「ちょっと。待っていてね」
そう言って、とし恵、は、急いで、二階の自室に入り、スマートフォンを、取り出して、荒木氏に、電話しました。
トゥルルルル。
「はい。アレフ埼玉支部の荒木です」
「荒木さん。娘が、帰ってきましたよ。ポアしてくれたんじゃないでしょうか?これは、どういうことですか?」
とし恵、は、鼻息を荒くして、聞きました。
「そのことですが・・・」
と、前置きをして、荒木氏は、話し始めました。
「娘さんの、香音さん、を、見ていると、とても元気で、あなたが、言うように、白血病とは、思えなかったのです。そこで、お父さん、の、野々村真、さんに、娘さんが、本当に、白血病なのか、聞いてみたんです。すると、そんなことはない、と、言いました。学校の定期健診でも、そんなことは、言われていない、と、言ったのです。昨日、あなたが帰った後、すぐ、医師に来てもらって、診断してもらいましたが、元気で、どこも悪くなく、白血病ではない、との、返事です。健康な人を、ポアすることは、出来ません。だから、ポアしなかったのです」
荒木氏は、言いました。
「でも、娘は死んだはずです。どうして、生きているのですか?」
「とし恵さん。あなたが、なぜ、離れていても、娘さんの、生死が、わかるのか、それは、わかりません。しかし、あなたが、離れていても、娘さんの、生死が、わかる、ということは、確信しました。それで、娘さん、を、急いで、北里大学医学部の研究所に、連れて行ったのです。あそこの、A先生は、コールドスリープ(冷凍睡眠)、の研究の、世界的な、第一人者です。最近、新しい、コールドスリープの方法が、完成して、動物実験でも、成功して、動物を仮死状態にする、ことに成功しています。動物での成功の確率は、10%だそうです。先生は、近く、学会に報告しようとしています。人間では、まだ、実験したことが、ないけれど、きっと、成功する、と、先生は強い確信をもってしまったらしく、世間には、秘密で、コールドスリープを受けたいと言ってきた、現代医学では治せない、不治の病をもっている、希望者1000人に、新式コールドスリープの実験をしたらしいんです。結果は、10人だけ、成功しました。つまり、成功率は、1%です。そこで、私は、それに、賭けてみたのです。香音さん、を、先生の元に、連れて行って、新式コールドスリープ法、を受けさせたのです。一週間ほどして、解凍しましたが、実験は、成功でした。近く、博士は、ノーベル賞を受賞するでしょう」
「そうだったのですか。どおりで・・・」
と、咄嗟に、魔法の鏡が、・・・と、言おうとしましたが、とし恵、は、制止しました。
「あとのことは、ご主人に聞いて下さい。私は、ご主人から、色々な事情を聞きました。そして、私も、ご主人や、香音さん、に、全てのことを、話しました。では・・・」
そう言って、荒木氏は、電話を切りました。
とし恵、は、階下に降りました。
夫と、娘の、香音が、真面目な顔つきで座っています。
「荒木さん、に、電話していたんだね」
夫が言いました。
機先を制されて、とし恵、は、素直に、
「ええ」
と、答えました。
「今まで、君に対して、冷たくして、本当にすまなかった」
夫は、深々と頭を下げて謝りました。
「私も、パパと、ばっかり、仲良くしてしまって、ゴメンね。お母さん」
香音も、ペコリと、母親に、謝りました。
「今だから、本当のことを、言おう」
そう言って、夫は、語り出しました。
「4月20日にね。荒木君から、電話があってね。急いで、北海道のロケ地から、飛行機で、東京に、もどって来たんだ。そして、アレフの埼玉支部に、タクシーで、行ったんだ。そしたら、荒木君と、香音がいてね。事情を、すべて、荒木君から、聞いたんだ。君が、香音を、ポアさせようと、していることを・・・」
夫人は、気が動転した顔つき、でした。
なので、何も言えませんでした。
「君は、高齢出産のため、劣化が、早く起こってしまっただろう。それで、君が、ふさぎ込んでしまったのが、僕には、とても、つらかったんだ。僕は、君に、何とか、劣化が、元通りに、ならないか、と、世界中の医学者に、相談したんだ。そうしたら、アメリカで、アンチエイジングの権威の、B博士、と、会ったんだ。そうしたら、博士は、長年の研究から、ある発見をしたんだ。それは、ある遺伝子、(それは、一万人に一人の割合い、だが)、をもった、女は、嫉妬の、感情を与え続けると、オキシトキンシン、という、ホルモンが、分泌されて、そして嫉妬の欲望が、満たされた時、ある、DNAをもった女は、確実に若返る、という、結果が、出た、ということを、教えてくれたんだ。それで、僕は、君の髪の毛から、DNA検査を、してもらったんだ。そしたら、君には、その遺伝子が、あったんだ。それで僕は、それに、かけてみることに、したんだ。僕にとっては、とても、つらかったよ。これは、香音にも、話していたんだ」
夫人は、黙って聞いていました。
夫は、話し続けました。
「お母さん。とっても、きれいになったね」
娘の香音が言いました。
「で、でも。コールドスリープの、成功確率は、1%なんでしょう?」
「ああ。もしかすると、香音は、死ぬかもしれない。それは、本当に、凄く、こわかったよ。しかし、香音に、そのことを、話したら、香音は、(お母さんが、奇麗になってくれるのなら、私は死んでも構わないわ)、と、言ったんだ。それで、僕は、その1%に、賭けてみることに、したんだ」
母親は、驚きの目で、娘を見ました。
「香音ちゃん。どうして、死んでもいい、なんて、思ったの?」
母親が聞いた。
「だって、私を産んでくれたのは、お母さん、だもの。私は、もう、十分、幸せ、な、人生を、送ったわ。それは、お母さん、が、私を産んでくれた、おかげ、だもの。私は日本一の、アイドルにまでなれたわ。私は、その、時点で、もう、十分、幸せを、つかんだわ。世の中には、何もしないまま、いじめられて、自殺して、死んでしまう子もいるでしょう。それに、豪雨災害とか、地震とかで、何もしないまま、死んでしまう子も、いるでしょ。そういう子に、くらべたら、私は、十分、幸せな、人生を送ったもの。私は、もう死んでも構わないわ。だって、私は日本一のアイドルになれたんだもの。あとは。世界一、好きな、お母さん、が、奇麗になって、パパと、仲良くなってくれる、ことの方が、私には、嬉しいもの」
娘は、きわめて、当たり前のことのように、言いました。
母親の目から、涙が溢れ出しました。
そして、娘を抱きしめました。
「ああ。香音。ごめんね。つらい思いをさせてしまって。あなたを、殺そうとした、お母さん、を、許して」
そう言って、母親は、娘を、ヒシっ、と抱きしめました。
娘は、ニコッと、笑って、
「お母さん。気にしないで」
と、言いました。
娘は、パタパタと、二階に、上がって行きました。
そして、母親の、魔法の鏡、を、持ってきました。
香音は、鏡に向かって、聞きました。
「鏡よ。鏡よ。鏡さん。鏡さん。世界一、きれいな人は、誰?」
すると、鏡は、こう答えました。
「世界一、美しい人。それは、野々村とし恵、さんと、野々村香音ちゃん、です」
こうして、野々村とし恵、は、美しすぎる美魔女として、夫と、娘の香音と、一緒に、テレビ出演するようになりました。



平成30年10月10日(水)擱筆

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矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

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