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ゆりちゃん

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 ゆりちゃんは、おじいちゃんと二人暮らし。
 田舎の大きな家で暮らしています。
 結構ボロボロ。
 縁側があったり、お仏壇の部屋があったり広さだけはあります。

 お父さんはお仕事が忙しくて、ゆりちゃんをこの家に預けました。
 でもお金はあまり送ってくれないようです。
 おじいちゃんは、たまに夜勤のお仕事に行くようになりました。

 ゆりちゃんはおじいちゃんが大好きなので、一人だととても寂しいです。

 夕飯を一緒に食べて、おじいちゃんはお仕事に行きました。
 宿題も終わったのでテレビを見ます。

「……つまんない」

 すぐ消しました。
 お父さんが買ってくれたスマホを見ます。
 学校のお友達はスマホに夢中です。

 でも、ゆりちゃんはあまり楽しくありません。
 いつも一緒の狐のぬいぐるみを抱きしめました。

 明日も学校です。
 都会から来たゆりちゃんを学校のお友達は珍しそうに取り囲んで歓迎してくれました。
 いじめられているわけではありません。

 でも、なんだかみんなが自分とは違うような気がして
 お父さんもお母さんも傍にいない自分がおかしい気がして
 寂しくなってしまうから、あまり学校が好きではありません。

 スマホの待ち受け画面は、お父さんと一緒にいった水族館の写真。
 ゆりちゃんの誕生日。
 パネルの前で二人で撮った写真です。
 水族館なのに、何故か狐のぬいぐるみも売っていて買ってもらったのでした。
 尻尾がふわふわでお気に入りです。

 お父さんはずっと会いに来ていません。

 今はこの写真も、好きなのかわからなくなってしまいました。
 ゆりちゃんは、裏の山で撮った桜の写真を壁紙にしました。

 なんだかもうお布団でだらだらしようと、歯磨きをして顔を洗っている時に
 そういえば、炊飯器のご飯を冷凍しなければいけない事を思い出しました。

「よっこいしょ」

 一食分の冷凍ご飯が六個できました。
 おじいちゃんは朝に帰ってくるので、二人分のご飯は炊飯器に残してあります。
 ご飯と味噌汁。
 それがいつもの朝ご飯です。

 それだけ? と言われても、これだけです。

 たまにギュッとよくわからない気持ちが心臓を痛くさせます。

「トイレ……」

 沢山電気を点けて、トイレに行きます。
 田舎の広い家のトイレだけは、ゆりちゃんは苦手でした。

 おじいちゃんが一人でも怖くないように
 縁側や廊下にピカピカ光るイルミネーションやシールや色々可愛くしてくれたけど、それでもやっぱり苦手です。

 走ってトイレに行って、走って戻って、布団に飛び込みました。

「ふう~~」

 狐のぬいぐるみはコンコンと言います。
 咳みたいと友達に言われたけど、コンコンはコンコンです。

 まだ眠くないので、本に手を伸ばしました。
 でもすぐにまた電気を消します。
 何もしたくないような、変な気持ちです。

「寒い……」

 涙が滲んだその時、雷のような閃光が部屋を染めました。

「きゃ!」

 次には轟音が鳴り響くに違いない!
 布団をかぶり、コンコンを抱きしめました。

 でも、音は鳴りません。
 怖い! とゆりちゃんはスマホの灯りを点けました。

 すると外から

「おなかが空いたのじゃあ……」

 と女の子の声が聞こえてきたのです。

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